「これが最先端のチューンドBCNR33だ!」アメリカの大地を駆ける珠玉のGReddyコンプリートに迫る

GPPコンプリートRB26にパドルシフトをドッキング!

アメリカのGT-Rファンたちを熱狂させた最新スペック

1995年デビューのR33型スカイラインGT-R。車齢25年を超える個体が出始め、R32の後を追うようにアメリカへ輸入される中古車が徐々に増えてきた。

今回紹介するR33も、太平洋を超えてカリフォルニアの大地を踏んだ1台。アメリカでGReddyブランドを展開するGPP(グレッディ・パフォーマンス・プロダクツ)が製作したプロジェクトカーだ。

日本人ドライバーの吉原大二郎選手もプロジェクトに参加し、サーキットでのテストドライブなどでハンドルを握る。そんな吉原選手にちなんで『DAI33』と名付けられたプロジェクトの最重要パーツが、何を隠そうRB26DETTエンジン本体だ。

アメリカでは載せ換えを前提とした補修用エンジンのことを「クレートモーター」と表現するが、そもそもアメリカではRBエンジンの設定がなかったので、クレートモーターも存在しようがない。そこでGPPが、部品だけでなくRB26エンジン本体の流通も担うことを宣言。独自にストックしたヘッドとブロックに各種加工と部品類を加え、GPPオリジナルのクレートモーターをプロデュースしたのである。

DAI33に搭載されるRB26DETTは、GReddyの2.8Lストローカーで排気量をアップ。クランクのバランシングには、ジャーナルにかかる負荷も計測できる最新鋭マシンを使用し、1000rpmずつ回転バランスを緻密に計測した。実際に回すことはないにしても、最高1万rpmまで回す計測も可能と、高い精度を追求している。

個体差が存在するシリンダーブロックも、一機ごとに超音波ゲージでボア間の肉厚を精密に計測。敢えて最低限のボアアップで済ませるボーリング処理を行なっているが、そちらもクロスハッチのアングルを指定できるモータースポーツスペックのCNCマシンを使用した。

そうしたアメリカ国内のニッチな内燃機関サービスにアクセスできるのも、GPPが長年フォーミュラDなどのモータースポーツで実績を積み重ねてきた賜物だ。日本人の感覚からするとオーバースペックな印象もあるが、経済力に富むアメリカのカスタマーが要求する安心快適に応えるべく、徹底して耐久性を追求している。

タービンは64mmビレットコンプレッサーホイールと66mmインコネル製タービンホイールを採用したGP64R。インテーク、インタークーラー、マフラーなども、もちろんGReddy製だ。燃料にE85を使用し、最高出力は709psを実現している。

ホイールは日本にも上陸している鍛造ブランド、Titan7のT-07S3というワンオフモデルを装着。『400R』が装着したLM-GT1のイメージに近いスプリット5スポークを採用した。

車高調はオーリンズのロード&トラックコイルオーバー、ブレーキはストップテックのビッグブレーキを装着。イケヤフォーミュラ製やワンオフで製作したアーム類も投入し、単に車高を下げるだけでなく、吉原選手が納得するロードホールディング性を実現するため、緻密なセッティングも施されている。

もうひとつ注目すべきパーツが、パワーチューン・オーストラリア製のパドルシフトシステムだ。OS技研のRB26用6速シーケンシャルミッションOS-88に、空気圧で作動するアクチュエーターを装着。ステアリングに備わるカーボン製のパドルを使った変速操作を実現している。トランク内にアンプと一緒に収まるのが、アクチュエーター用のエアタンクとコンプレッサーだ。

吉原選手から使い慣れた通常のシフトレバーも欲しいとリクエストがあったため、敢えてレバーも装備。だが、それもあくまでアクチュエーターに電気信号を送るスイッチであるため、中身はドライビングシミュレーターに付属されるシフターを流用した。

GReddyとMOMOのコラボステアリングに、カーボン製のパドルを装備。トランク内にアンプと一緒に収まるのが、そのアクチュエーター用のエアタンクとコンプレッサーだ。メータークラスターにはハルテックのIC-7デジタルダッシュを装備。シートはレカロのSpeed Vで、後席スペースを犠牲にしない程度のロールバーも備わる。

外観のモチーフとしたのはニスモの限定コンプリートモデルだった『400R』。ニスモの前後バンパー、リップスポイラー、サイドスカート、カーボンリヤウイングを装着し、ベース車両の元色でペイント。Evasiveのカーボン製GT LMサイドミラーも備わる。実はベース車両が、イジるのをためらうレベルの極上車だったそうで、モール類も綺麗に保たれている。

ここ数年、アメリカのメディアがトレンドワードとして盛んに使っている「OEMプラス」という考え方がある。もはや新品で手に入らないOEMパーツ(=純正パーツ)を、高性能なアフターパーツに代替えした「純正プラスα」というニュアンスだが、DAI33はある意味、究極のOEMプラスと言えるだろう。

自動車メーカーがやらないなら、アフター業界が頑張る! そんな気概すらも伝わってくるDAI33は、長年憧れたスカイラインGT-Rをオトナ買いするアメリカン・ドリーマーのための最適解だ。

Photo:Akio HIRANO TEXT:Hideo KOBAYASHI

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