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「ジャンクボディ×エアサス×ロータリー」複雑に絡み合うオリジナリティ
ここまでブッ飛んだ510ブルなど見た事ない!
カリフォルニア州の州都であるサクラメントで、「Twisted Images(ツイステッド・イメージズ)」というショップを営むフィル・ブロッティ。車種を問わないエアサスのカスタムインストールが本業だが、プライベートでは過去20年間に15台のダットサン510(510型日産ブルーバード)を所有してきた生粋のファイブテン・ガイだ。
人生初のクルマはマツダのB2000ピックアップ(プロシード)。運転免許を取得するよりも先に、それでクルマを車高短にする楽しみを身体で覚えてしまったそうだ。もちろん510のカスタムも数多く手がけてきたが、彼にとって最新作となる一台は、自身のキャリアを映し出した集大成でもある。
ベース車両は20年近く野ざらしにされていた錆だらけのジャンクで、2007年にわずか200ドル(!?)で購入。フィルは「当時もこれといったプランがあったわけじゃないんだけど、スクラップにされるのはもったいないからキープしたかったんだ」と振り返る。
左前のフェンダーを除く外板には、70年代にサンフランシスコのディーラーがレーシングカーに使用したスポンサーカラーが施されており、くすんだ状態でそのまま残されている。実際のレーシングカーは1971年のSCCAトランザム2.5チャレンジに出場しており、フィルが所有する510は、そのプロモーション用に販売されたディーラー仕様車ということらしい。オリジナルが消失していた左前のフェンダーは、わざと退色した感じのペイントを施して当時の雰囲気を再現した。
ボロボロだったバルクヘッド、フロア、リヤパネルはシートメタルで新調し、ロールケージも組んでボディを再構築。サスペンションはもちろんエアサス一択だが、せっかくならエアサスならではの極限ロワードを実現させようと、アーム類の加工に培ってきたノウハウを総動員した。
フロントサブフレームは1994年式トヨタ・ハイラックスから流用し、4インチのナロー化とオイルパンとの干渉を避けるためのセンターリンク加工を実施。リヤのクロスメンバーは車高を下げたときのバンザイ状態を最小化するため、4インチ上方にマウントする嵩上げ加工を施してある。
ホイールは15インチのBBS RSで、フロントのみ往年のレーシングカーを彷彿させるエアロカバーを装着。見事にタックインされたリアはカスタムペイントのクロームカッパーを覗かせるが、その色をチョイスしたのは愛妻のビクトリアさんだ。
フロントサスはエアバッグとQA1ダンパーをマウントする上下アームをカスタムメイド。テンションロッドはデリートされている。リヤアームにもエアバッグをマウントするための加工が施されている。
エンジンはというと、「YouTubeでマッド・マイクのドリフトを見過ぎて影響された(笑)」ということで、1991年式のFD3S型RX-7から13Bロータリーを5速MTとセットで移植。
もちろん、ただ載せるのではなくウェーバーの48φキャブとレーシングビートのインマニを備え、オールドスクールな雰囲気も演出。純正デスビにデジタル制御のMSD 6AL2イグニッションとコイルを接続し、RX-7の純正ECUで制御する。
また、クランク、ウォーターポンプ、オルターネーターのプーリーはGilmer Drive製で、15インチ幅のベルトで駆動する。もちろんオイルクーラーとオイルキャッチタンクの取り回しもオリジナルで、少しだけラインをたるませているのが“ツイステッド流”だ。
駆動系は、カスタムメイドのプロペラシャフトを介してダットサン280ZX(S130型フェアレディZ)のR200デフと連結。搭載位置が嵩上げされたR200デフにはワンオフのドライブシャフトを装着する。もちろん走行可能で、地元のカーショーには自走でエントリーすることもある。
一方のインテリアは、当時の雰囲気を再現するナルディのウッドステアリングや、リヤキャリパー用の油圧ハンドブレーキを装備。ペダルはウィルウッドのマスターシリンダーを使ったカスタムメイド。シフトノブ横の赤いスイッチを押すとラインロックが発動してバーンナウトを決めることもできる。
センターコンソールのAirLift製コントローラーの他、iPhoneのアプリでも車高調整が可能だ。トランクルームにはエアタンク、燃料タンク、バッテリーが備わり、英語でロータリーサウンドを表現した“BRAP BRAP”、“NO BRAP”と表記したユニークなキルスイッチも装備する。
ルーフキャリアにはビンテージのBMXを載せるなど、一見してハチャメチャなコンセプトは見る人によって好みが分かれそうだが、そこはフィル自身も承知の上。彼独自のイマジネーションを具現化した510は、2016年のSEMAショーに出展された他、2017年のWekfestサンノゼや2018年のスタンスネイションNoCalではアワードを獲得した。
座右の銘である“Get Twisted”は「ねじ曲がれ!」といった感じの意味だが、まさに既存の価値観に縛られることを嫌うフィルらしいメッセージと言えるだろう。
Photo:Akio HIRANO Text:Hideo KOBAYASHI
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