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ラム圧狙いでタービンはまさかのボンネット上置き!
今回紹介するプリメーラ(P10)は、かつて九州地区で名を馳せたチューニングショップ“カッパツ”の名物デモカーだ。SR20の限界に挑んだ驚異のT88-32Dシングルターボ仕様、その衝撃的メイキングに迫っていく。(OPTION誌1998年7月号)
SR20でT88を回し切る驚異のゼロヨン仕様
このP10プリメーラは、これまでにFRドリフト仕様、耐久レース仕様、タイムアタック仕様と、様々なスタイルに姿形を変えてきたカッパツ(※)のテストカーだ。そして今回、“走る実験室”に新たな使命が課せられた。それが「2.0LでT88-32Dタービンをビンビンに回せ!」である。
実験的な取り組みとはいえ、これにはタービン製造元のトラストも仰天。常識的に考えて、SR20の排圧で回し切ることなど無理だからだ。しかし、不可能を可能にするのがチューニングの世界。メイク&トライを繰り返し、2.0Lでキッチリとビッグシングルの性能を発揮させてしまったのだ!
まずカッパツが製作したのはEXマニ。圧力損失の低減を狙い、極力曲がりを減らして太いパイプで製作。曲がり角度は通常の1/3に抑え、径も一般的なものより6φ大きな47φを採用。その結果、タービンはエンジンルームに収まらなくなってしまった。
しかし、これは結果的に良い方向へと働く。タービンコンプレッサーをムキ出しにすれば、直接空気を取り込める。ゼロヨン専用マシンである限り前方に他車が走ることはまず無いので、異物を吸い込む可能性も低い。
ならばラム圧も稼ごうということで、コンプレッサー前にはファンネルも装備。これにより150km/h走行時の吸入空気量は、ファンネル無しの400km/h時と同等のものになるという。
エンジン本体はパルサーGTI-R純正のクーリングチャンネル付きピストンを組み込んだくらいで、基本的にはノーマル。4連スロットルもパルサーの純正だ。ブースト1.6キロ時で660ps、1.8キロまでテストを進めているが、燃焼室サイドで異常燃焼や過早点火などが起きてしまうため、対策法を考えている最中だ。
ウエストゲートをエンジンルーム内に設置すると、排気開放時には当然エンジンルーム内の温度が上昇する。それを避けるために、ボンネットから突き出たタービンの横にパイプを設けて直接外に排気。大気開放時は、写真の様に排気圧力でフタが開く仕組みだ。
エアフロはZ32純正。480psが空気量の測定限界だが、エアフロのパイプ径を拡大して流速を遅くし、電圧を下げることによって660psまでの計測を可能にした。
また、エアフロは通常タービンの前に装着されるが、インタークーラーとエンジンの間のサクションパイプに移動させることによって、バックタービンによる電圧上昇を解消済みだ。
インタークーラーは幅広で薄型のコアを前置きで配備。冷却効率よりも圧力損失の低減を重視したスペックだ。
「1速9000rpmで1.6キロのブーストをかけて、以降は1.8キロで張り付かせる。2.0キロまで上げられるようになったらタイムを測ってみたいですね」とは、カッパツメカニックの小笠さん(現ドライバーズカフェフォレスト代表)。
冗談のようなフォルムだが、メカニカルパートは真剣そのもの。クォーターマイルを走り切る姿を、早く見てみたいものだ。(※カッパツは現在閉店しています。)