目次
世界最小の1.0L直3ディーゼルエンジン車!
スペックを超える力強い走りに脱帽
ダイハツ初のFFコンパクトカーとして1977年11月に登場し、リッターカーというジャンルを生み出したG10系シャレード。排気量1.0Lで、それまで市販車での採用例がなかった直3エンジン、CB型の搭載がトピックだった。
1983年1月に2代目G11系が発売され、翌1984年9月にクラス初となるディーゼルターボモデルを追加。エンジンはCB型をベースに開発されたCL型で当時、乗用車用ディーゼルエンジンとしては世界最小とされていた。
続く3代目G100系が登場したのは1987年1月。当初はガソリンもディーゼルもシャレード伝統の1.0L直3のみで展開していたが、翌1988年2月に1.3L直4ガソリンを新たに投入。さらに、フルタイム4WDモデルも加わり、1989年2月のマイナーチェンジではグレードが18まで拡大することになった。
そんなG100系の1グレードが、今回紹介するウィルディーゼルターボだ。50ps/9.2kgmを発揮する1.0L直3SOHCのCL-70型エンジンを搭載し、パワーステアリングやカラードバンパー、フルファブリックシート、フルホイールキャップなどを装備した実用モデルとなる。
カムカバーやサージタンクは今時の樹脂製でなく金属製とされ、“1.0 DIESEL”や“TURBO”のロゴが刻まれる。また、ディーゼル特有の騒音を緩和させるため、バルクヘッドからストラットタワー、タイヤハウスにかけて遮音材が貼り付けられる。
ごく低回転域から過給し、その存在をまるで感じさせない小径ターボチャージャー。何となくIHI製だと思っていたのだが、コンプレッサーハウジングの刻印からアイシン精機製であることが判明。
それにしても、80年代のコンパクトカーは総じてボディが小さい。G100系は全長3.7m弱、全幅1.6mで、当時ライバルと目されたEP71スターレットやK10マーチも似たような寸法だ。そして、G100系はスタイリングが絶妙だ。後ろ下がりのルーフラインやブリスター状に膨らんだフロントフェンダー、切れ上がったリヤホールアーチなど、今見ても「凝ってるなぁ」と思えるほど。
樹脂色そのままのドアミラーは角度調整も格納も手動式。ただ、全幅が1615mmしかないため、わざわざドアミラーを畳まなければならない状況はほとんどないだろう。
標準装着されるディッシュタイプのフルホイールキャップ。タイヤは145/80R13サイズのネクストリーが組み合わされる。ちなみに、PCDは先代まで110だったがG100系で100に変更。ホイールの選択肢が広がった。
一方の内装はベーシックグレードだけあって割と質素な感じ。高さ調整可能な別体式ヘッドレストはビニールレザー製で、ファブリックを使った上級CXディーゼルターボとの差別化が図られる。
開放感をもたらす低く手前にスラント下ダッシュボードは、両端がドアトリムと連続するようにデザインされる。メーターナセル左右に設けられるダイヤル式スイッチはリヤデフォッガー用(右)とリヤワイパー用(左)。ちなみに、エアコンはオプション設定すら存在しない。
右側にスピードメーター、上級グレードではタコメーターが収まる左側には上段に各種警告灯、下段に燃料計と水温計が並べて配置される。
エンジン始動はひとつの儀式だ。イグニッションオンで点灯したグローランプが消えたら、キーをもう一段ひねる。ブルン…と大きく身震いして火が入った。ガラガラと笑えるくらいに音が大きく、振動もクルマ全体を揺するほどだが、数分して暖気を終えるとそれらも多少は収まった。
走りは1速のゼロ発進からして力強い。タコメーターレスだから正確には分からないが、感覚的に2500rpmくらいでシフトアップしていけば加速感に不満はない。そこからさらにアクセルペダルを踏み込めば、ディーゼルとは思えないほどスムーズにエンジン回転が高まっていく。
50ps/9.2kgmというスペックを先に知っていたから正直、走りには期待していなかった。しかし、ウィルディーゼルターボに試乗して改めて思った。「やっぱりクルマは数字だけじゃ分からない」と。
■SPECIFICATIONS
車両型式:G101S
全長×全幅×全高:3680×1600×1385mm
ホイールベース:2340mm
トレッド(F/R):1385/1365mm
車両重量:780kg
エンジン型式:CL-70
エンジン形式:直3SOHC
ボア×ストローク:φ76×73mm
排気量:993cc 圧縮比:21.5:1
最高出力:50ps/5000rpm
最大トルク:9.2kgm/3000rpm
トランスミッション:5速MT
サスペンション形式(F/R):ストラット
ブレーキ(F/R):ディスク/ドラム
タイヤサイズ(F/R):145SR13
●TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)