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気負わず楽しめるVTECターボ!
ビッグタービン装着でパワフルな走りを引き出す
量産市販車をベースに、エンジンやサスペンションにチューニングを施したメーカーチューンド“TYPE R”。1992年のNSXタイプR(NA1)、1995年のインテグラタイプR(DC2)に続くシリーズ第3弾として、1997年に登場したのが初代シビックタイプR(EK9)だ。
その後は3ナンバーボディへの拡大(EP3)や4ドア化(FD2)など、時代に応じてスタイルが変化していったが、搭載されるエンジン形式で大別すると3代目のFD2/FN2までがNAエンジン、4代目のFK2以降がターボエンジン搭載モデルとなる。
FK8はシビックタイプRとしては5代目となるモデルで、FK2からエンジンパワーは10ps向上。車体もタイプR専用設計となり、リヤマルチリンクサスや各種電子デバイスの採用で走行性能のさらなるレベルアップが図られているのだ。
そんなFK8の後期モデルをベースに、ホンダスペシャリストのスプーンがセットアップを加えたのが今回の取材車両だ。コンセプトは「ワインディングを気持ちよく走れる快速FFストリートバージョン」で、ベース車の特性をしっかりと見極め、バランスに優れたトータルチュ-ンを施しているのがスプーンの拘りだ。
パワーチューンの核となるのは、MHI製のボルトオンビッグタービンだ。ハウジング容量やブレード形状の最適化によって、低速トルクと高回転でのパワーを両立させているのが特徴と言える。そこにカーボンエアダクトやビッグスロットル、完全ストレート構造で排気効率を追求したN1マフラーなどをインストールし、365.3ps&48.3kgmというスペックを発揮する。
マネージメントにはスプーンが展開するHONDATAフラッシュプロを採用。燃料系も同社のアップグレードキット(インジェクター、燃料ポンプ、高圧ポンプ)を投入して容量アップ済みだ。
サスペンションには、ドイツKW社のネジ式車高調ベースのオリジナル仕様(F10kg/mm R8kg/mm)をセット。サーキット走行まで睨んだややハードなセッティングが施されている。しっかり4輪を接地させながら、メカニカルLSDでガンガン引っ張っていくFFチューンドならでは味付けだ。
ホイールはスプーンオリジナルのSW388(FR9.5Jプラス40)、タイヤにはポテンザRE-71RS(FR265/35R18)を組み合わせる。
室内にはオリジナルのカーボンバケットシートを投入。重量はわずか5.9kgという超軽量な逸品だ。ステアリングとシフトノブに関しても、オリジナルの製品へと置き換え済み。
フロントエアロバンパーは、ホンダセンシング付きの後期モデルに対応のミリ波レーダーカバーも付属。極限まで拡大した開口部は、アルミラジエターと合わせてネックの水温対策に絶大な効果を発揮する。
このチューンドに試乗した佐々木雅弘選手は「やや重量感があるものの車体の安定感は抜群で、路面状況が悪くても挙動を乱されることなく安心して踏んでいける。エンジンはパワー、トルクとも十分でピックアップも良好。ただ、どうしても気になったのはトラコンオフの状態でも介入してしまう電子デバイスで、左足ブレーキでタイヤ1本分ラインをズラすような操作を許してもらえないのが残念。とはいえ、スピードレンジの高いステージでの速さは間違いないだろうね」と評価。
製作者であるスプーン城本さんが語る。「FK8の魅力は、これぞシビックタイプRという丸みを帯びたテールスタイル。徐々に中古車価格も落ち着いてきたようで、手の届く新世代タイプRだと思います。このマシンはF1ドライバーの角田裕毅が帰国の際に足として貸し出し“運転していてとても楽しい!”と高い評価をもらいました」。
シンプルでありながら、全てが研ぎ澄まされているオリジナルパーツをフルに搭載したスプーンのFK8型シビックタイプR。その切れ味は、まさにホンダの“R”が目指した真の姿と言っても決して過言ではないだろう。
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スプーン
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