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独学でFRP技術を学んで創出した美しすぎるフェアレディZ
オーナーの想像力が産み出した唯一無二のシルエット
プロの造形師でなければ、エアロファクトリーに勤務しているわけでもない。エアロパーツ製作の知識もほぼゼロという状態から、独学でFRP成型技術を学び、オーナー自らが5年という途方も無い年月を費やして完成させた、世界に一台だけのZ32。
ロングノーズ&ショートデッキという生まれながらのスタイルを踏襲しつつ、各部に面のえぐりを多用したエモーショナルデザインを採用することで、国産ベースとはまるで思えない、どこぞのメーカーが提案するコンセプトモデルのような非現実性が全身を覆う。
さらに、フロント片側50mm/リヤ片側140mmものワイド化を敢行していながら、そのボリュームを感じさせない繊細な各部の造作は、見事としか言いようがない。クオリティはもはやショーカーレベル。ただただ、造り手の洗練されたセンスと技術力の高さに驚くばかりだ。
リヤバンパーは短縮加工しつつ、片側140mmほどワイド化されたリヤフェンダーとのバランスも最適化。マフラーは市販品ではなく、エクステリアに合わせてオーナーが製作したスペシャルモデルで、個性的なテールはエリート製の4灯キットを奢る。
コンセプトは『Z32の正常進化』。オーナーの言葉を借りるなら『Z32改Z32』だ。それは、Z33やZ34とは異なる進化の道程。完全なスポーツカーとして誕生した第4世代の優雅なシルエットを生かした、現在進行形のZ32をオーナーは求めたのである。
「ワインディングでの走りを考えて2シーターを選んだのですが、想像以上にピーキーで…。それを解消したくてワイド化を考えたわけですけど、どうせだったら全部やろうと思いましてね。発泡ウレタンでボディを覆って、仕事の合間にコツコツ造形してました。何度もやり直しましたね。で、気がつけば5年が過ぎていた…という感じです」。オーナーが笑顔で語る。
続けて「自分なりに空力も考えました。バンパー左右を立体的にしてカナード効果を持たせたり、リヤゲートも2重構造にしてBピラー後部からエアを引き込んでゲート後端から排出できるようにしています」。
見所は尽きない。一見では分かりづらいが、ヘッドライトはボディのワイド化に合わせて内部形状を改良した上で外側方向に延長し、ライトカバーもアクリルパネルから創出。複雑なフロントバンパーを含めて、全てオーナーの自作というから恐れ入る。ボンネットはセントラル20のカーボンタイプを装備する。
また、特徴的なガルウイングドアに関しても、市販キットをポン付けするのではなく、強度を出すためにドアサイドビーム直付け溶接を施し、さらにドアオープナーをスイッチ式に変更するなど、全方位に渡って妥協の無いカスタムが敢行されているのだ。
なお、コンケイブの効いたホイールはハイパーフォージドのHF-C7(F11J R13J)。タイヤはフロントがネオバ(265/30-19)でリヤがパイロットスーパースポーツ(345/30-19)を組み合わせる。その隙間からチラリと覗くブレーキはF40ブレンボキャリパーキットだ。
インテリアメイクにも妥協はない。アルカンターラ風の素材でパネル類を覆い尽くし、古さを払拭。ステアリングは昔から使い続けているという超小径240φのディープコーンをインストールする。
「ディフューザーの新設やリヤブレーキの強化など、やる事はまだまだ残ってますね」。
試行錯誤を繰り返しながら洗練度を増し続けていくZ32。魅力的にも、ほどがある。