「グリップとドリフトの二刀流！」フルカーボンGRカローラが切り開くチューニング新世界

公開日 2025/03/01
TUNING
著者 weboption

フルカーボンチューンド第二章！

異なるステージに対応できる理想のジオメトリーを追求

昨年は東京オートサロン2024で『GR86 CARBON SPEC DRIFT』を発表。ドリフト競技用車両としても一線級のスペックを持ち合わせた世界初のGR86フルカーボンモデルによってドレスアップ・スポーツカー部門最優秀賞、さらにオートサロン展示車両893台のグランプリに輝くこととなった“カザマオートサービス”。

「GR86で初めてのグランプリを獲れたのは、何十年もチューニング業界にいた中で一番と言えるくらいに嬉しかった。でも、3月くらいからはもう『この次のクルマはどうしたら良いんだろう…』って考えるようになってプレッシャーがとんでもなかったです」と風間さん。エクステリア、インテリア、パワートレイン、サスペンション…全てにおいて妥協せずに作り込んだGR86はグランプリに相応しいマシンだったが、これ以上のない全力を投じたからこその悩みがそこにあったという。

そして、カザマオートは新たなフィールドへのチャレンジを決意した。これまでのフォーミュラドリフトジャパンを始めとする自らが得意としてきたドリフトというジャンルを飛び出し、タイムアタックへもチャレンジする。1台でグリップとドリフトの両方をこなせる、“二刀流”のスペックを持ち合わせたチューニングカーを製作することを決めたのだった。

ベースに選んだのは、GRブランドでGR86に続く車体として最も旬だと考えたGRカローラ。そして、タイムアタックシーンへの投入を考えたからこそ、軽量化のために昨年同様のインフュージョン成形（VaRTM工法）によるフルカーボンボディの採用が必然となった。

当初、GR86での造形を活かす方向でのボディメイクを想定していたが、GRカローラの4ドアボディへの転用が難航したことで、ワイド感を前面に打ち出すブリスター形状を中心とした意匠へ構想を転換した。艶やかな曲線の中にあって、大胆な直線が用いられる印象的なスタイルは、トヨタガズーレーシングが参戦するWRC車両の意匠がヒントになっている。

ボンネット、トランク、ルーフやドアパネルまでもカーボンで製作する軽量化への徹底ぶりは相変わらずで、1200kg台まで軽量化したマシンの心臓部には、東名パワードのストローカーキットで3.6Lに排気量アップした2JZ-GTEが収まる。HKSのGT75100_BBタービンとNOSの組み合わせによって1000psを軽く出力し、パワーウエイトレシオは1.0に限りなく近い。

超高回転化を達成するためにはウエットサンプのオイル供給では油圧の安定化が難しいと判断し、ドライサンプに変更。そのため、ドライサンプ用のスカベンジポンプとオイルタンクなどメカニカルな装備が搭載されている。

ドリフトを大前提とし、駆動方式は純正の4WDからFRへと大改造。縦置きエンジンから軽量で耐久性もあるサムソナスのシーケンシャルドグミッション、現場でも数分のファイナル交換が可能なブルドッグ製クイックチェンジデフ（スプール）、カザマオートにて開発中というJZX100純正と同型のドライブシャフトでリヤへ駆動を伝達する仕組みだ。

レース向けの市販サスキットが存在しないGRカローラだけに、フロント＆リヤのサスペンションを自社で新規開発。競技ドリフトに通用する切れ角と、ジオメトリー変化が素直でトラクションのかかるリヤアームのレイアウトを手に入れた。また、リヤはセパレート式のスプリングからコイルオーバー式へ変更し、セッティングしやすさも向上。車高調はDG-5総帥の北澤源吾氏が手掛ける特注スペック。

ワンオフロールケージや純正ダッシュボードを採用し、フォーミュラドリフトジャパンのレギュレーションに準拠した安全装備を備える室内。切れ角アップのためにステアリングラックはBMW・E46用に変更し、ペダルはチルトンの吊り下げ式をチョイス。リヤラジエター化など補機類を車内に配置するのは重量配分だけでなく、エンジンルームの見た目をスッキリさせる目的も。