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GRヤリス&GRカローラ乗りは必見
最新の設計思想を反映したトリプルタンブルピストンがポイント!
HKSが開発を進めていた、G16E-GTSチューニングの最終兵器がついに誕生した。開発者をもってして『純正ブロックの限界』と言ってはばからない、ノーマル比6mmのロングストローククランクにボア径88mmの鍛造ピストンをセット。これにより、1750ccへの排気量アップを可能にしたキット(127万6000円)がリリースされたのである。

このキットを開発するにあたって想定したのは、600psや700psをゆうに超える狂気の世界。
そんな超絶ハイパワーを実現するために、ピストンは大注目のハイコンプ仕様と純正とほぼ同じ圧縮比になるローコンプ仕様の2種類が用意され、どちらもHKSが最新の解析技術を駆使して編み出した独自のBCD(ブリッヂコンセプトデザイン)を採用。ピストン裏面に橋がかかったようなBCD構造は、剛性確保を軽量化を両立に成功しているのだ。

そして、このキットで最もセンセーショナルと言えるのが、ハイコンプ仕様のピストンに盛り込まれたトリプルタンブル冠面形状だろう。複雑かつ有機的な形状は、シリンダー内の空気流れと火炎伝搬を緻密にコントロールするために生まれたもので、このピストンを使用した場合の圧縮比は、ノーマルの10.4に対してなんと11.6にもなるというから驚かされる。
一般的に、ハイブースト&ハイパワーのターボチューンでは、ノッキングを避けるために圧縮比を下げる方向にいくのが定石だが、このトリプルタンブルピストンは一般的な冠面形状のピストンに対して圧縮比が上がっているにも関わらず、逆にノッキング限界も高くなることが社内テストで確認できている。
排気量アップと圧縮アップは、エンジンチューニングの理想。その両方を可能にする1750cc、通称“イナゴキット”は、まさにG16Eチューンの最終兵器と呼ぶに相応しい内容となっているわけだ。

キット付属のコンロッドは、ニッケルクロム鋼から削り出されたI断面タイプとなる。ノーマル比25%もの強度アップを実現している頼もしい逸品だ。

ノーマル比9mmのロングストローク化が可能となる、オリジナルのフルカウンタークランク。効率の良いカウンターウェイト配置とピン部の軽量化で慣性重量の低減も狙っている。純正のバランスシャフトの使用は考えられていないが、スポーツ走行時には気になることはないだろう。


こちらは、イナゴキットを組み込んだショートブロックキット(217万8000円)。ブロックはシリンダー変形を抑制しつつ高燃焼圧に対応するため、クローズドデッキ加工を実施しているのも見逃せないポイントだ。クローズドデッキ化による冷却水の流れの変化は、水穴追加によって最適化されている。

「組み合わせるタービンやブースト圧によって出力は変わりますが、少なくともGRヤリス/GRカローラのチューニングでトップを狙えるだけのポテンシャルはあると思います。とくにハイコンプ仕様は高圧縮でレスポンスも良く、排気量アップとの相乗効果でビッグタービンを下から回すことができます。また、今回はシリンダーボーリングに加えて、高燃焼圧に耐えることができるクローズドデッキ化や水穴の最適化を行ったエンジンブロックとのセットも設定しており、こちらを使っていただくのもお勧めですね」とは、開発を担当したHKS高橋さん。


この他、すでにハイブーストに対応できるガスケットやヘッドボルトもリリースされており、現在はカムやバルブスプリングも開発中。最終的には加工したヘッドまでセットになったコンプリートエンジンの発売も目指しているというから、HKS恐るべしである。
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