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エスコート&安藤佳樹選手のCT9Aが新時代を切り開く
950馬力の4G63改2.2L仕様で勝負!
各地のサーキットでコースレコードを塗り替え、日本が誇るタイムアタックマシンの1台として注目される存在にまでなったエスコート&安藤佳樹選手のランエボ9(CT9A)。このスーパーチューンドが、2021年12月23日の“どら走”で『筑波の歴史』を動かした。
チューニングカー最速となる50秒233という大記録をマークし、長きにわたって続いたアンダー鈴木(2017年:50秒366)の時代を終わらせたのである。
「実は先週はじめに谷口信輝選手にお会いして、タイヤ(アドバンA050)の“味付け”に関して秘伝のアドバイスをもらったんです。それにプラスして、エンジンの回転数アップなどの各モディファイが良い方向に作用したんだと思います」とは、ドライバー兼オーナーである“ファイヤー安藤(安藤佳樹選手)”。
最強ランエボのアウトラインを改めて説明しよう。セミパイプフレーム化されたエンジンルームに収まるのは、4G63ベースで腰下にビレットブロックを使用した2.2L+GCG1050タービン仕様だ。
ピストン、コンロッド、クランクなどのムービングパーツは全てワンオフ品で、ヘッドもナプレックで加工済みとなる。E85アルコール燃料を使用し、最大ブースト圧2.8キロ時に約950psを発生させる。エンジンマネージメントはモーテックM150だ。
なお、今シーズンのアップデートポイントで注目すべきは点火系と燃料系の強化だ。点火はこれまでのCDI方式からダイレクトイグニッションに変更し、インジェクターも3000cc(メイン2000cc+サブ1000cc)×4から4300cc×4という超大容量タイプへとスイッチ。高出力を安定発揮させる環境を構築したのだ。
ちなみに、インマニ周りのモディファイに関しては“エスコート”塩原代表がインディカーのエンジンメイキングから着想を得たものとのこと。インジェクターの取り付け位置と角度を改良した結果、それだけで100ps近いパワーアップを達成したというから驚かされる。
足回りはマグナス社製のサブフレームをベースにオリジナルのカスタムアームを組み合わせて構築。サスペンションはオーリンズの車高調キット(F34kg/mm R32kg/mm)をベースにしたスペシャル品だ。
ブレーキは前後ともにエンドレスのモノブロックキャリパーをセット。ローターはフロントに特注のカーボンローターを合わせつつ、ABSにはボッシュ製のレーシングシステムを導入している。
タイヤはフージャーDOTラジアルを筆頭に様々な銘柄を試してきたが、今シーズンの筑波に関しては前後295/30−18サイズのアドバンA050(G/Sコンパウンド+削り)をメインにする方向で調整中とのこと。実際に、今回のスーパータイムもアドバンA050でマークしている(画像は昨シーズンのもの)。ホイールはエンケイNT05RRだ。
室内のメイキングも凄まじい。ダッシュボードはドライカーボンパネルで作り直されており、そこにランエボ9の面影は残されていない。ステアリングは上部がカットされたジュニアフォーミュラ系の『MOMO 12C』、メインメーターはモーテックのC187カラーディスプレイロガーだ。メーカー脇にはデジタル時計が確認できる。
ステアリングシャフトは、操作量の1.5倍多くシャフトが回転する増速機構付きのスペシャル品を採用。ステアリングから手を離さずアタックに集中するための装備だ。
ミッション自体はホリンジャーの6速シーケンシャルだが、操作はIパターンではなくモーテックM150制御によるパドルシフト仕様だ。これにより、電光石火のシフトチェンジを可能にしている。
「まだ伸びしろはあると思ってます。今回の最速ラップも『あそこはもっと早く立ち上がれた』というポイントがあるし、セッティングもまだ煮詰めきれていないですから。50秒切りの壁は非常に高いですが、狙いますよ。次のATTACK筑波(2022年2月19日)でどんなタイムが出るか、期待してください」と、偉業達成の喜びを噛み締めつつ、次のアタックに向けての意気込みを語るファイヤー安藤。
そう、この男にとって50秒233という記録は通過点に過ぎない。目標はあくまでもチューニングカー未到の領域、49秒台入りなのである。
約4年ぶりに記録が更新され、大きく動き出した筑波サーキットのチューニングカー最速争奪戦。限界に挑むレコードブレイカー達の戦いは、まだまだ終わらない。
PHOTO:金子信敏