「動き出した警察と被害者の会」悪徳チューニングショップの闇を追う〜続報〜

入庫時に装着されていた貴重な純正リアスポイラーと電装部品はプロショップシリウスによって取り外され、行方不明になっている。

動き出した警察、被害者の総数は40名以上か!?

埼玉県のオールド三菱を得意とする「プロショップシリウス」を舞台にした前代未聞のトラブル。「修理や車検でクルマを預けたら帰ってこなくなった」というオーナー達の数は20名以上にのぼる。被害者達は一致団結して車両の回収に乗り出し、警察も刑事事件の立件に向けた捜査を開始するなど、事態は大きな動きを見せはじめた。

※警察捜査の進捗具合や事案の重大性などを総合的に判断した結果、ショップ名のみ実名報道に切り替えさせていただきます。

罪に罪を重ねるプロショップシリウス

被害の全容はまだ見えないが、WEB OPTION編集部には連日のように“プロショップシリウス”による被害報告が寄せられている。

「15年待ってもクルマが完成しない」「預けたクルマがショップから消えた」「前金でパーツを注文したのにバックレられた」等々…。現在進行形での被害者数は20名以上、過去に被害に遭ったというオーナーまで含めると被害総数は40名近いだろう。ここでは、取材を進める中で知り得た新情報を中心にお届けしていく。

立ち上がった被害者の会

前回の記事公開直後に、情報提供者のH氏(被害メールをWEB OPTION編集部に送ってきてくれた人物)が中心となり、大規模な“被害者の会”が立ち上がった。彼らはお互いの被害情報を共有しながら、プロショップシリウス包囲網を確実に狭めている。

「他のチューニングショップとは違い、プロショップシリウスはオールド三菱のレストアでも有名だったため、一般整備を目的としたユーザーも多く被害にあってしまいました。本当に悔しいです。現在、プロショップシリウス代表のS氏は被害者と借金の取り立てに怯えて、雲隠れ状態。借金の取り立てができない21時以降(貸金業法)に動き回っているようですが…。新店舗には何度か乗り込みましたがダメでした」とH氏は憤る。

プロショップシリウスが被害者の一部に送ったメールの内容。

2月下旬、プロショップシリウスは『作業中の車両と預かり金に関する今後の対応』を記したメールを一部の被害者達に送っている。代理人を通して事態を収拾する旨が書かれているが、それ以降、連絡は一切なく、音信不通の状態が続いている。

車両の回収作業が本格化

プロショップシリウスの入庫車両が放置されていたヤード(青空駐車場)では大きな動きがあった。被害者の会が一丸となり、地権者や弁護士などと連携しながら車両回収を行なったのだ。

プロショップシリウスによって放置された愛車を回収する被害者。

なお、前回の記事で触れた『刑法235条の壁』(例え大切な愛車だとしても、ショップに預けたクルマを許可なく持ち帰る行為は法律的にNG)』については、『プロショップシリウスが駐車場の賃料を滞納しており、土地の管理者が車両の即刻撤去を要求している』、『プロショップシリウスS代表が車両返却の意思を示している(メールにて)』などの状況を考慮した結果、弁護士も所有者それぞれが愛車を回収して問題ないと判断したのだ。

もちろん、車両回収に必要となる積載車の準備や受け入れ先の確保などは、被害者達が個々に手配することとなり、想像以上の時間と労力を費やしたことは言うまでもない。

「駐車場の管理者様が協力的で本当に助かりました。というより、プロショップシリウスに賃料を踏み倒されている状況なので、ものすごく怒っていますね。現時点でオーナーが分からないのは、新店舗内にあるホワイトのECランタボのみですが、そちらも対応していくつもりです」(被害者H氏)

新店舗の様子

ちなみに、プロショップシリウスの賃料未払いはここだけに留まらない。2021年10月に引っ越した“埼玉県さいたま市”の新店舗でも賃料未払いが発生、管理会社から立ち退きを求める民事訴訟を起こされている。

3月上旬に新店舗を訪れた被害者の一人は「シャッターが閉じていて、誰もいませんでした。窓が開いていたので中を覗いてみたのですが、旧店舗から移したパーツや工具が所狭しと並んでいる状態。白いランタボが1台置いてあって、作業中のようでしたね」と語っている。

驚くことに、これだけの事態を引き起こしていながら、S代表は夜逃げすることなく、新店舗でショップ業を続けていくつもりだったのである。なお、WEB OPTIONは新店舗に幾度となく突撃し、あらゆるルートからプロショップシリウスに問い合わせを続けているが、未だ本人との直接対面は叶っていない。

金銭トラブルの原因はゲーム課金!?

ところで、プロショップシリウスのS代表とは一体どんな人物だったのか。本人をよく知る関係者によると、「整備専門学校を卒業して、三菱の関連子会社に就職。ちなみに、父親も祖父も三菱系です。で、仕事で大きなミスをして、会社を辞めたと聞いています。シリウスを立ち上げたのはその後ですね。性格は一言で“ずぼら”。酒の席では客の文句ばかり言ってました」とのこと。

代表Sが熱中していた国民的RPGゲームの画面。ゲーム内でのキャラクター名も「シリウス」だった。

また、無類の“ゲーム好き”だったという声も各方面から聞かれ、中でも国民的RPGのオンラインゲームは10年近くプレイしているそう。

「複垢(複数のアカウント)でプレイしていましたね。ゲーム内ではかなりの有名人でしたよ。人気プレイヤーイベントの主催者でしたから。仕事が忙しいとかで、2021年末からインが急激に減って、2022年1月に予定されていたプレイベをドタキャン。ツイッターのアカウントも削除。そのまま、3月頭に休止宣言しました」とは、同ゲーム内でS代表と交流のあったゲーマーの証言だ。

他人の趣味や嗜好に口出しする権利はない。しかし、S代表のゲーム好きは度を超えていた。複数のスマホゲームに重課金を続け、仕事そっちのけで画面越しの世界に没入していたというのである。

プロショップシリウスS代表のSNS裏アカウントは前回の記事公開後に削除された。過去の投稿にはこのような内容も…。

数年前からS代表の異変に気づいていたという被害者は、こう明かす。「愛車を預けてから定期的に工場を覗きに行ってましたが、Sさんはいつも下を向いてスマホゲームに熱中していました。話しかけても上の空だし、SNSでの発言もおかしくて、“普通ではない”と…」

もちろんゲームに責任はない。しかし、WEB OPTIONには「全ての発端はゲーム課金」という情報も舞い込んできている。顧客から騙し取ったお金をゲーム課金で溶かし続ける。これが事実だとしたら、あまりに情けない話だ。

驚きのパーツ転売疑惑まで浮上

取材を進める過程で「クルマを預けている間にパーツが勝手に外されていた」という、信じられない話を複数の被害者から聞いた。

「エンジンルーム内の作業だったのに、なぜかマフラーが外されていたんです。それをSさんに問いただすと“別のクルマに貸しているだけ”と言われて。結局、マフラーは帰ってきませんでした。この手の話は本当に多いです」(前出の被害者)

預かり車両からパーツを剥ぎ取って他車に使うなど言語道断だが、この話はまだ終わりではない。「プロショップシリウスはヤフオクとかでパーツを販売していたのですが、そこでお客さんのクルマの部品を勝手に流していたって話を知人から聞きました」と、真意不明だが驚きの悪事が明らかにされている。

調べてみると、プロショップシリウスのヤフオク取引歴は725件にのぼる。うち427件が出品で、その大半がオールド三菱のマニアックなパーツだ。これまでの悪行の数々を考えると、この中にそうしたものが紛れ込んでいる可能性は十分に考えられる。

気になる警察の動向は?

この手の事案は事件化が非常に難しいそうだが、実のところ、すでに警察は刑事事件(被害者H氏の件)として立件に向けた捜査を開始している。

「刑事事件は民事事件とは違い、集団訴訟が出来ないので被害者が個々に動かなくてはなりません。そのため、現在は他の被害者の件も刑事事件として立件されるようにサポートを続けています。支払い能力がない相手に民事訴訟を起こしても、あまり意味がないですから…」(被害者H氏)。

WEB OPTIONの取材に対して警察は口を固く閉ざしているが、被害者H氏によると「捜査は順調のようです。逮捕で終わりというわけではありませんが、最低でも司法の裁きは受けるべきです。それに、S氏には協力者がいることも分かっていますので、その辺りの事実関係も公にしていきたいですね」とのこと。

プロショップシリウスによって放置された車両はどれも劣化が激しく、正直、再起は不可能ではないか?と思えるレベルの個体もある。かつてはオールド三菱の“駆け込み寺”として名を馳せた名門ショップが、このような悪事を働いたきっかけは何だったのか。取り戻した愛車に向かって、真実を被害者達が報告できる日は果たしてくるのだろうか。

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