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インタークーラーのパイピングは6メートル!?
魔改造すぎるCD6型アコードを捕獲
このCD6型アコード、相当やばい。フロントから見ると普通なのだがリヤに回り込んでフロア下を覗くと…、なんと本来マフラーのタイコがある場所にHKSのGT3037Sタービンがぶら下がっているではないか!
この奇想天外なマシンを製作したのは、スポコン系からドラッグ仕様まで幅広く展開する富山県の“A-SPEC”。バンパー内や室内にタービンを配置したアメリカのドラッグマシンに触発され、いわば“ノリ”で製作を開始。そして、恐らく日本初であろうタービン・リヤマウント仕様のアコードを完成させたのだ。
メカニズムは至って単純。エンジンからタービンまでのパイピングを思い切り延長して、リヤにタービンを設置している。つまり、エンジンから排出された排気ガスは、長い配管を通ってタービンに到達。そしてタービンにより圧縮された空気も長いインタークーラーパイプを通って、前方のインタークーラーまで送り込まれるというわけだ。
細部を見ていく。まず、エンジン本体はアコードユーロRのH22Aを使用し、セミクローズド加工を施したシリンダーブロックやマーレーの鍛造ピストン、JUNのI断面コンロッドなどで徹底強化。ハイブーストやNOS噴射にも耐えうる強度を確保しているのだ。エンジンルームは、ブローオフバルブが存在する以外ターボ車であることを感じさせない。
エンジンルームにスペースがなかったこともタービンをリヤマウントした理由のひとつ。リヤバンパー内をタービンの設置場所にすることで、GT3037Sを楽にマウントできた。ちなみに、エアクリーナー用のダクトもリヤに移設している。マフラーのテール部分にはアペックスのアクティブサイレンサーが組み込まれていて、全開時以外は静かなんだとか。
マフラーと並んで配管されるのは「全長は6メートルくらい?」と超ロングなインタークーラーパイプ。そのため、タービン側とエンジン側でブースト差が出てしまいセッティングに相当苦労したそうだ。何度も仕様変更した甲斐もあり、今では普通のターボ車と変わらない走りを実現している。最高出力はNOS噴射時で600psを超える。
インタークーラーはHPIのコアを使用。インタークーラーパイプは、当然ながらタービンのリヤマウント化に合わせてアルミでワンオフ製作された。
制御にはモーテックM4を採用。燃調や点火時期の他、VTECの作動ポイントやアイドリングコントロール、NOS制御も全て行なっている。これをAIMのレーシングメーターMXLとリンクさせ、回転数や油温などの車両情報を表示する。
回転の立ち上がりをカバーするために導入されたNOS。スロットル手前にドライショットを噴射し、燃料の増量はモーテックでコントロールする。
足回りは、フロントがレーシングギアのN1ダンパーで、リヤはバーディクラブにショートストローク加工を依頼した特注品を装備。米国ラクティブ社の調整式ブッシュによりキャンバーはできるだけ立てて、タイヤの接地面を稼ぐ。
一方、室内は張替えやペイントによって、魔改造マシンらしからぬ空間に仕上げられる。“羊の皮を被った狼”的なメイキングがオーナーの狙いで、外装がシンプルなのもそのためだ。
ちなみに、このアコードのゼロヨンタイムは11秒〜12秒台といったところ。シルビアクラスならフルタービン仕様でも楽に到達できるポテンシャルだ。それだけに「リヤにタービンをマウントして意味あるの?」などと考える人もいるかもしれないが、そんな疑問は野暮だ。誰もやっていないからこそやる意義があると思うし、それこそがチューニングの原点なのだから。
●取材協力:A-SPECエンタープライズ 富山県富山市萩原83-1 TEL:076-428-5963
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