「このクルマを知っていたらマツダマニア認定!」オートザムのフラッグシップサルーンに昂ぶる

個性的すぎるルックスが仇となった稀有な珍セダン!?

 その名はクレフ、キャッチコピーは「新世代スポーツサルーン」

マツダが販売店5チャンネル化を展開していた1990年代前半、キャロルやレビュー、AZ-3など小型車を中心に扱ってたのがオートザム店だ。そこへ『新世代スポーツサルーン』なるキャッチコピーを掲げたクレフが1992年に投入された。

まず個性的なのはフロントマスクだが、30系ソアラやCR-Xデルソルを思わせる顔はどうにもセダンには似合わない。もうひとつ、フロントグリルレスというのも日本で受け入れられなかった理由なのではないだろうか。

ただし、これにはマツダも「マズイ…」と気づいたようで、フロントエンブレム左右に3本ずつグリル風横長スリットを入れたリミテッドXなるグレードを追加。しかし、フォグランプが下に移設され、かつ大型化されたので、中途半端なラリーホモロゲモデルのようなエクステリアになってしまったのだが…。

専用ボディパネルが与えられたクレフはクロノスと同じ3ナンバーながら、全長で25mm、全幅で20mmコンパクトな設計。Bピラー以降のルーフラインを見ると、メルセデスベンツCLSに端を発すると思われている4ドアクーペに近いスタイルをいち早く採り入れていたように思えなくもない。

グレードはKF-ZE型2.0L V6(160ps/18.3kgm)搭載のV6 2.0/同タイプLS、KL-ZE型2.5L V6(200ps/22.8kgm)搭載の2.5 V6/同タイプX/同タイプXSで展開し、1993年11月にFS-DE型2.0L直4(125ps/17.6kgm)を載せる2.0 4WDが加わった。ミッションは全グレード4速ATのみの設定となる。取材車両に搭載されるのは60度のバンク角を持つ2.5L V6のKL-ZE型だ。

走りは、このクラスにしては軽量な1250kgの車重に排気量2.5Lのエンジンを積んでいるため、下からトルクでグイグイ引っぱっていくのかと思いきや、2500rpmまでのトルクが思いのほか細い…? 積極的にアクセルを踏んでいかないと厳しく、日常域では多少ストレスを感じてしまいそうだ。

逆に3500rpmを超えてから盛り上がってくパワー感とシャープな吹け上がりは、完全にスポーツユニットのそれだ。ショートストローク型らしいキレの良さで、レッドゾーンが始まる7000rpmまで気持ちよく回り切る。

一方のハンドリングは、ステアリング操作に対するノーズの動きがかなり機敏。そもそもマツダのクルマは総じて走りがスポーティだし、これなら『新世代スポーツセダン』を謳うに値する。ステアリングのセンターパッドに入るロゴが『AUTOZAM』に変わるだけで、ダッシュボードのデザインはクロノスと全く同じ。メーターも同様だ。

また、シートはスポーティ志向を強めた性格から前席はサイドサポートが大きく、デザインを含めてクロノスよりも若々しい印象。最上級グレードのタイプXSにはパワーシートがオプション設定される。シート表皮は2.0Lモデルのファブリックに対して、2.5Lモデルではモケットだ。

センターアームレスト付きの後席は背もたれが6:4分割の可倒式でトランクスルー機能を持つ。

ラゲッジルームは天地方向のスペースにやや物足りなさを感じるかもしれないが、容量としては十分に実用的。トランクパネルはバンパー直上から開くため開口部が大きく、荷物の出し入れもしやすそうだ。

クレフはその個性的なエクステリアと曖昧な立ち位置が仇となり、販売台数は1992年2129台、1993年1979台、1994年1153台と惨敗。わずか3年でこの世から消え去ることとなったのである。

■SPECIFICATIONS
車両型式:GE5PA
全長×全幅×全高:4670×1750×1400mm
ホイールベース:2610mm
トレッド(F/R):1500/1500mm
車両重量:1250kg
エンジン型式:KL-ZE
エンジン形式:V6DOHC
ボア×ストローク:φ84.5×74.2mm
排気量:2496cc 圧縮比:10.0:1
最高出力:200ps/6500rpm
最大トルク:22.8kgm/5500rpm
トランスミッション:4速AT
サスペンション形式:FRストラット
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ:FR195/65R14

TEXT:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)

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