「グループAマシン直系の獰猛さ!」令和を生きるスープラ3.0GTターボAに乗った!!

3.0Lの排気量がもたらす余裕の低中速トルク

過給圧の立ち上がりでエンジン特性が豹変!

セリカXX改め、それまで海外名だったスープラを初めて国内モデルにも採用したのが3代目A70系。発売は1986年6月で、前期型は1G-EU/GEU/GTEUを搭載する2.0Lモデル(車両型式GA70)と、7M-GTEUを載せる3.0Lモデル(同MA70)がラインナップされた。

当時、トヨタのフラグシップスポーツであったMA70は、1987年にチームトヨタトムスからJTC(全日本ツーリングカー選手権)への参戦を開始。スポーツランドSUGOでのデビュー戦でいきなり優勝を果たすなど幸先の良いスタートを切った…かのように思われた。

しかし、翌1988年はFIA規定のターボ係数が従来の1.4から1.7に変更。3.0Lエンジンを載せるMA70は換算後5.2L相当となり、最低重量が引き上げられて不利な状況に追い込まれることになった。

そこでトヨタが起死回生の策を打つ。1988年8月に500台限定で発売し、スカイラインGTS-Rと同じように、『エボリューションモデル枠でグループAのホモロゲを取得』したのが3.0GTターボAというわけだ。

エンジンは型式こそ7M-GTEUで変わらないが、タービンやインタークーラーの容量アップを図り、専用プロフィールを持つカムシャフトや大径スロットルなども採用。ベースエンジンに対してパワーで30ps、トルクで1.5kgmのアドバンテージを得ることに成功した。

ちなみに、翌年Z32フェアレディZが登場するまで、国産車最強エンジンとして君臨したのがターボAに載るこの7M-GTEUだ。ブーストアップで400ps、ヘッドガスケット交換とインジェクター容量アップで450psを狙えるポテンシャルが与えられていた。

トヨタ内製のCT26タービンはセリカGT-FOUR(ST165~205)やMR2(SW20)、ランドクルーザー(60/80系)のディーゼルモデルにも採用された汎用機。ターボA用は風量アップが図られた専用品とされ、コンプレッサーハウジングの突起部に“E”の刻印が入る。このタービン、車検証がないと部販で購入できなかったというのは有名な話だ。

また、エンジンスペックの向上に合わせて足回りも強化。スプリングレートのアップと、それに合わせてダンパー減衰力の見直しが図られ、前後スタビライザー径も拡大された。さらに、ソリッドのブラックとされたボディやホイール、冷却性能を高めるためフロントバンパーに追加された3連ダクト、本革シートなど、ターボAには専用の内外装も与えられたのだ。

「始めは80スープラを探していたんですが、昔GA70ツインターボに乗っていた父親に影響されて70にしようと。ただ、僕の中で“スープラは3.0L”という思いがあったので、70ならGAでもJZAでもなく、MAしか考えていませんでした」とはオーナーの山之内さん。

19歳から探し始め、22歳で巡り合ったのがこのターボAだった。走行距離はすでに24万kmを超えているが、20万kmでエンジンオーバーホールが行なわれ、ボディも純正色でオールペン。距離が伸びていても、必要な箇所に適切に手が加えられた個体の方がコンディションも良いだろうという判断から、山之内さんはその場で購入を即決した。

ホイールは純正2インチアップとなる18インチのボルクレーシングTE37 SAGA。フロント9Jプラス35、リヤ10Jプラス35で、フロントに10mm、リヤに5mmのスペーサーを合わせる。タイヤは順に235/45、275/40サイズのアドバンネオバAD08Rだ。

マフラーは迫力のエキゾーストサウンドを奏でるHKSサイレントハイパワーを装着。メインパイプ径85φ、テールエンド径120φで砲弾型サイレンサーがリヤビューをスポーティに演出する。

ダッシュボード周りはベース車と同じだが、ターボAは6連メーターの左端を電圧計からブースト計に変更。メーター指針もオレンジからイエローになる。また、ステアリングホイールとシフトノブは純正でモモ製が装着されるが、いずれもナルディ製に交換される。

運転席、助手席ともレカロ製セミバケに交換。ホモロゲモデルでありながら70スープラのフラッグシップモデルという意味合いもあったからか、純正では本革シートが標準装備された。

エアクリーナーとマフラーが交換される以外、エンジン関係はノーマルの取材車両。シフトレバーで1速を選び、ミートポイントを探りながらクラッチペダルをゆっくりリリースしていくと、アイドリング回転のままスルリと動き出した。いきなり、「あ、この瞬間が排気量3.0Lだね」と思わずにはいられない。

もちろん、低中速トルクも申し分なく、意識してアクセルペダルを踏み込まなくてもストレスなく走る。街乗りなら2500rpmを目安にシフトアップしていけば十分だし、5速60km/h、1500rpmからでもフレキシブルに加速していってくれる。過給機が付いていようがいまいが、結局は排気量が走りやフィーリングに大きな影響を与えることを改めて実感。同じグループAホモロゲモデルに搭載された直6でも、2.0LのRB20DET-Rで感じた線の細さは、当然3.0Lの7M-GTEUでは皆無だ。

ところが、タコメーターの針が4000rpmを超えると表情が一変。突如、強烈なターボキックが襲ってきて二次曲線的な加速を見せるのだ。一言で言えば典型的なドッカンターボ。しかも、排気量が3.0Lあるだけに、NA領域との差がより強調されているように思えた。それは体感的にはカタログスペックの270psを上回り、350psくらいの加速感。言うまでもなく、素の7M-GTEUとは中高回転域のパワー感もフィーリングもまるっきりの別物だった。

トヨタ車だから優等生的にまとまっていると踏んでいたけど、実は結構なジャジャ馬。良い意味で予想を裏切ってくれたスープラ3.0GTターボAに思わずニヤリとしたのは本当だ。

■SPECIFICATIONS
車両型式:MA70
全長×全幅×全高:4630×1745×1300mm
ホイールベース:2595mm
トレッド(F/R):1470/1475mm
車両重量:1530kg
エンジン型式:7M-GTEU
エンジン形式:直6DOHC+ターボ
ボア×ストローク:83.0φ×91.0mm
排気量:2954cc
圧縮比:8.4:1
最高出力:270ps/5600rpm
最大トルク:36.5kgm/4400rpm
トランスミッション:5速MT
サスペンション形式:FRダブルウィッシュボーン
ブレーキ:FRベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:FR225/50R16

TEXT&PHOTO:廣嶋ケン太郎

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