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D1GPマシンのレベルを引き上げた起爆剤
強靭なシャシーとハイパワー! 現代ドリフトマシンの先駆け
オートプロデュース・ボスの手によって製作され、D1グランプリに2004年の途中から2014年シーズン終了まで参戦していたのがこのS15シルビア。実はこのマシン、チーム体制の変化に合わせてカラーリングこそ変わっているものの、10年以上もの間、同じシャシーのまま活躍を続けた脅威の1台なのである。
しかも、2005年の風間靖幸、2009年から2011年の今村陽一よる3連覇と、なんと同じシャシーのまま4回ものシリーズチャンピオンを獲得。長いD1グランプリの歴史に中でこれほど戦果を挙げたマシンはこのシルビアだけだ。
「確かに複数回チャンピオンになっているのはウチのシルビアだけだね。まぁ、これまで全損級の大クラッシュがなかったってだけだけどさ(笑)」と謙遜するオートプロデュースボス藤岡代表だが、実際は違う。
まだ、D1マシンの大半がストリート仕様の延長だった2004年に突如として投入されたこのマシンは、他チームに大きな衝撃を与えた。レース/ラリーマシン並みのボディ補強が施され、燃料タンクは小型の安全タンク仕様。ミッションはホリンジャーシーケンシャル(途中でHKSシーケンシャルに変更)で、今では定番になっているサイクルフェンダーはこのマシンが流行らせたものであり、エンジンに関しても500psクラスのハイパワーユニットを搭載していた。
つまり、現代のD1グランプリにおける基本的な部分は、全てこのシルビアが確立したといっても過言ではないのだ。
しかし、そんなマシンも藤岡代表によれば「当時のパワーに対してシャシーは完全にやりすぎ。あの頃はボディ剛性なんて高けりゃ高いほど良いと思ってたからガッチガチで、植尾が乗っていた2007年あたりまではピーキーで乗りにくい部分もあったんじゃないかな。だからウチの真似してやったところは、みんなやりすぎだったんだよね(笑)」とのこと。
また、エンジンに関しても当初は全域トルクフルでパワーバンドの広いエンジンこそが最適だと思っていたが、後半ではあえてトルク変動が大きく少しピーキーな特性を演出していたというから興味深い。
実際に、2005年仕様ではSR20改2.2L+GT3037Sタービン(最大ブースト1.4キロ)でトルクフルな490psを有するエンジンだったが、その後どんどんパワーが引き上げられ、末期ではSR20改2.2L+TO4Zタービン+NOS(最大ブースト1.6キロ)で718psという、2.0Lベースとしては限界に近い出力を発揮していた。
「よく、タイムアタック用とドリフトのエンジンって何が違うんですか?って聞かれるけど、その答えがトルクカーブなんだよ。タイムアタックは可能なかぎりトルクバンドを広くしているけど、それに対してドリフト用はわざとトルク変動の急激なところを作っているんだ。誤解されちゃうかもしれないけど、あえてダルい回転域を作って、ドライバーがそこを上手に行ったり来たりさせることで走りの幅を広げている感じ?」と藤岡代表。
2015年には『DG-5 S15』として両角選手のドライブでドリフトマッスルへ参戦し、見事にチャレンジクラス優勝を達成。製作から15年以上が経過した今でも、その戦闘力は一戦級のままだ。
●取材協力:オートプロデュース・ボス 長野県長野市川合新田1370 TEL:026-266-6388
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