「正しい舵角量」はその瞬間ごとに刻々と変わる

レブスピードR会で多くの読者の方の車載映像を添削していると、中低速コーナーで舵角一定のままハンドルをあまり切っていないケースがよく見られます。

一見、「舵角が少ない」状態なのですが、この走り方は、タイヤの特性から見ても、「上手で速い走り方」とはいえないのです。

結論としては、切るべきでないタイミングでは舵角は最小限に、切るべきタイミングではしっかりと切り込む! が正解です。今回は勘違いが多い「舵角の正解」について紐解いていきましょう。

クリッピングポイントで最大舵角になる

86/BRZレース車両で梅田講師が富士スピードウェイを走行した際の車載映像から。③までのスピードがまだ高い区間は舵角を入れられないが、車速が落ちてCPに向かうエリアでは、どんどん舵角を増やしている。⑥のCPでは約180度まで切っていることに注目。その舵角は一瞬で、直後はすぐに戻しつつ脱出していく

「スローイン・ファーストアウト」というモータースポーツ用語を聞いたことがあるでしょう。「ゆっくり進入して、速く脱出する」という基本を表しています。

では、どこから速度が切り替わるコントロールなのでしょうか?正確には多くの場合、クリッピングポイント(CP)で速度は最も下がります。多くの場合というのは、高速コーナーなどではCPで最低速度ではない可能性があるからです。

よくいわれる「前荷重にするために曲げるブレーキ」を使った場合、コーナーリング中はつねにタイヤの走行抵抗が強く掛かりますので、アクセルを踏んでいない限り、速度は低下する一方。CP以降はアクセルを踏んでいくので、CPで最低速度となるわけです。

舵角が一定になるエリアはない。とくに「曲げるブレーキ」区間ではブレーキのリリースとともに舵角を増やして、クルマの向きを脱出方向に変えている。そして、CP での舵角MAXからアクセルを入れると連動してすぐにステアリングを戻していく

CPで最低速度ということは、その直前の舵角だとグリップが余ることになります。そこで、その分ハンドルを切り足して曲げることができます。この最後の「ひと曲げ」を覚えることで、タイムアップが期待できます。

ここで適切な舵角量の見極めポイントのひとつを紹介します。全開走行でなく、タイヤが滑らない程度での走行時、CPで舵角量が十分であれば、CP以降でハンドルを少しずつ戻していけるはずです。逆にCP以降でもハンドルを戻してくとカーブを曲がりきれないとき(舵角一定になっている)は、CPでの舵角量が足りていません。

よくある間違い① ハンドルを切り足したらオーバーステアが発生した

この場合はハンドルを切り足したあとに、直後の戻しが遅れています。CPが最低速度になり、そのあと加速していくわけですから、即座にハンドルは戻していくことになります。

イメージとしてはハンドルを切り足したらすぐに戻し始めるイメージでよいです。むしろ切り足さないよりも、CPで向きが変わっているためにハンドルをより戻せる=オーバーが減ってよりアクセルを踏めるという好循環になります。

よくある間違い② ハンドルを切り足すとアンダーステアになる

これは、そもそも進入の時点でハンドルを切り過ぎていることが多いです。ハンドルを切るタイミングが早め=クルマの速度が高い 状態で必要以上に切ってしまえばアンダーを誘発したり、そうでなくてもCP手前でコーナーのイン側に突進してしまいます。

早めから少しずつ切り始め、CPで舵角最大となり、それ以降はゆっくりハンドルを戻していく……。極端にいえばハンドルはつねに切っているか戻しているか(舵角は必ずしも一定でない)ともいえますね。

よくある間違い③  ゼロカウンターは速い!?

ゼロカウンターということは、リアが流れている状態です。一見、車をコントロールしきれているようで響きがよいですが、速い走り方ではありません。

大きくカウンターが当たってしまう走りはタイムロスになることはおわかりいただけると思いますが、ゼロカウンターでも修正ですのでタイムロスになります。

仮に、ゼロカウンターが速い走りなのであれば、F1ドライバーは全員ゼロカウンターで走りますね。微妙にリアを流しながら走るのが速いといっても、せいぜい拳1〜2個分ハンドルを戻す程度の滑らせ具合です。

CPで舵角を入れる意識は街中でも十分に培えられる

「CPで切り足す」といって、もちろん切り過ぎはNGですし、高速コーナーでは舵角一定になることもあります。しかし、鈴鹿や富士など一部のサーキットを除き、日本のサーキットの大半は2速3速で抜ける中低速コーナーが占めています。

中低速コーナーでは「舵角一定」「舵角は少ないほどよい」は必ずしも当てはまらず、早めから切り始め、CPで舵角MAX、その後ハンドルを戻していく……。つねに切っているか戻しているかのドライビングがタイムアップのカギのひとつになります。

中低速コーナーでタイムを詰めるのは高速コーナーよりもローリスクで、その数も多いです。まずは中低速コーナーでのハンドルの切り方から直してみましょう。

その練習方法ですが、前号の繰り返しにはなりますが、普段の街乗りでの意識づけがスキルアップに影響します。街乗りでできないことは、サーキットでも絶対にできません。

アマチュアにとってサーキット走行は特別な時間。プロでもない限り、年がら年中スポーツ走行はできません。いうならばサーキット走行は受験生の入試テストのようなものです。いくら意気込んでも試験日だけ頭が冴えて難問が解けるわけではないでしょう。

普段の試験勉強(街乗り)から意識することがドラテク向上のカギです。制限速度内で十分に練習はできます。街中で交差点やカーブを曲がる際にも意識して早めからハンドルを切り、CPで舵角MAX、その後戻していく流れを練習してください。必ずタイムアップにつながります。


講師
梅田 剛