CEERは2022年にサウジ公共投資基金(PIF)が立ち上げたブランドで、EXOBOTは2030年までに予定する7車種の第一弾。車両はサウジ国内で設計・開発・生産される。EXOBOTはCEERのフラッグシップモデルとしての役目を担うモデルで、今回、セダンとSUVの2ボディタイプで同時公開した。
デザイン上の注目点はおもに6点。
・ 現在のBEVとして再解釈した「ウェッジ」
・ 国家の歴史を仕込んだ「32本のライト」
・ 3mの「Shahin Wing」ドア
・ 2.4mの巨大フロントウインドシールド
・ 色とホイールにも展開した「国の風景」
・ かなり大胆な“柱なし”キャビン
現在のBEVとして再解釈した「ウェッジ」


“distinctive wedge profile”と明記しているウェッジデザイン。CEERはこの造形を「biomechanical aesthetic」と表現する。前後には機械加工したような鋭いボリュームを与える一方、乗員を包む中央部分には流動的な面をつなげたものだという。そのインスピレーションとなったのが、サウジアラビアの古代都市ヘグラの建築である。「ウェッジだから未来的」ではなく、古代建築→現代的な機械造形への翻訳というストーリーが非常にユニークだ。鋭いフロント/リア → 滑らかなキャビン → ウェッジ状のシルエットという、かなり明確な造形構成になっている。
国家の歴史を仕込んだ「32本のライト」

前後のシグネチャーライトは32本のバー。これは偶然の数字ではなく、1932年のサウジアラビア統一を表しているとCEERが説明している。グラフィックそのものをブランドアイデンティティにすると同時に、国家の成立年をデザインコードにしたということだ。
3mの「Shahin Wing」ドア

EXOBOT最大の見所のひとつだろう。約3mに達するShahin Wing Door。サウジアラビアのハヤブサ(Shahin falcon)の飛翔をモチーフにしたもので、約60cmの弧を描いて上方へ開く構造。前後席へのアクセスを1枚の大きなドアで処理する、かなり特殊な構成としている。単なるギミックとしてではなく“Shahin=ハヤブサ”をブランドの造形言語へ変換したと読むことができよう。
2.4mの巨大フロントウインドシールド

セダンでは、全長5260mm、全幅2102mm、全高1428mm、軸距3200mmという大型ボディに、2.4mのフロントウインドシールドを設定。しかも傾斜角は15度で、CEERは「このクラスでもっとも傾斜したもの」としている。三層の銀コーティングガラスやルーフ上の空気流による熱蓄積抑制などによって、65℃まで上昇したキャビンを10分で32℃まで下げられるとしている。サウジアラビアの環境条件まで、デザインの一部になっている好例だ。
色とホイールにも展開した「国の風景」
5色のボディカラーはサウジアラビアの土地や遺産をモチーフに設定。さらに鍛造アルミホイールには、サウジの建築に見られるAl-Lahuj style openingsから着想した三角形のモチーフを入れている。
ライト=国家の歴史
ボディ=地形・建築
ドア=ハヤブサ
カラー=土地・遺産
と、かなり意識的に「Saudi」を車体全体へ埋め込んでいることが読み取れる。
かなり大胆な“柱なし”キャビン

Reutersによれば、EXOBOTは前後席の間のピラーをなくした構造を採用し、高強度材料によって構造を成立させている。これはShahin Wing Doorとの組み合わせによって、ドア開口そのものをデザインの主役にした構成ともいえる。


ちなみに、この「Saudi」というデザインコードはエクステリアだけにとどまらない。インテリアの48インチ・ピラーtoピラー・ディスプレイも、リヤドのスカイラインから着想したという。
EXOBOTの登場によって「サウジアラビアが自動車を作り始めた」ではなく「新しい自動車ブランドが、最初のプロダクトでどんなデザインアイデンティティを提示したか」が明確になったといえよう。EXOBOTは、サウジアラビアという“国そのもの”をデザイン言語に変換しようとしているのだ。CEERのCDO(Chief Design Officer)であるRobert Melville氏率いるデザインチームは、新しく立ち上げたブランドの最初のデザイン言語を決める仕事として何を“サウジらしさ”として選んだのか。実車に触れる機会を心待ちにしている。
