「evolved brand identity」の対象はMcLaren Automotiveだけではなく、McLaren RacingとAutomotiveを横断するブランド・アイデンティティ。新しいワードマークを導入する一方、既存のSpeedmarkは残し、Papayaも継続。さらに過去のMcLarenを想起させるカラーや「Speedy Kiwi」なども組み合わせます。

つまり、完全な「新ブランド」ではない。既存のMcLarenを構成してきた視覚的資産をいったんアーカイブから掘り起こし、それを現代のMcLarenとして再編集した、というのが実態に近い。

そしてタイミングが重要だ。McLarenは直前の9月16日に、英国で5億ポンド規模の製造・エンジニアリング投資と、初のSUVを含む商品拡張を発表している。したがって今回のアイデンティティ刷新は「従来の2シーター・スーパーカーのMcLaren」から、商品・活動領域を広げていくMcLarenへのデザイン基盤の作り直しという文脈で見ることができよう。

新しい「McLaren」の文字は、Bruce McLarenの両親がニュージーランド・オークランドのRemueraで営んでいたService Stationの看板からインスピレーションを得ている。そこはBruceが最初の勝利を得ることになるレーシングカーを製作した場所でもある。つまり、現在のMcLarenのロゴを新しくデザインしたのではなく、McLarenが始まった場所にあった「McLaren」という文字そのものを掘り起こしているわけだ。単なるレトロ回帰ではなく、公式には「future ambition」と「heritage」をつなぐものと位置づけている。

いっぽうで、新しいワードマークを導入しながら、あの斜めに切れたSpeedmarkは残している。McLarenを象徴する色としてPapaya Orangeも継続。ただし、過去のMcLarenの歴史から別のカラーも掘り起こして、ブランドのカラーパレットを拡張している。Speedy Kiwiも残った。「新しくするために過去を消す」のではなく「何を残し、何を更新するか」を整理したのだろう。なお、新しいワードマークに合わせてブランド用の書体も整備された。海外報道ではMcLaren Sansとして紹介されている。

「マクラーレンは長年にわたり大きく進化を遂げてきましたが、レースと自動車業界における私たちの共通の歴史を振り返ると、ブルースの当初のビジョンと精神が今もなおビジネスに息づいていることに感慨深いものがあります。この進化したアイデンティティは、その誇り高き伝統と私たちの未来への野心を完璧に結びつけるものです。ファン、パートナー、そしてチームメイトが既に知っていて愛着を持っているシンボルやストーリーを称えつつ、私たちがこれからどこへ向かうのかをより明確に表現しています。まさにマクラーレンらしさが感じられるブランドです」
——マクラーレン・レーシング最高マーケティング責任者:ルー・マキューエン氏——