ボルボで電動化のデザイン言語づくりに携わったロビン・ペイジが社内デザインチームをリード

ベントレーは2026年9月23日、ロンドンで新型車トルカル(Torcal)を発表した。同社初のフル電動モデルで、ブランドとして四つ目のモデルラインとなる。デザイン、開発、生産はいずれもクルーで行なわれる。ベントレーはトルカルを、よりすっきりとしてミニマルな新しいデザイン言語を最初に適用したモデルと位置付けている。

ベントレー・トルカル
ベントレー・トルカル

デザインを手掛けたのは、デザインディレクターのロビン・ペイジが率いるクルーの社内チームだ。

ペイジは2001年から2013年までベントレーでインテリアデザインの責任者を務め、初代コンチネンタルGT、ミュルザンヌ、英国君主のためのステートリムジンのインテリアを担当した。その後ボルボ・カー・グループに移り、グローバルデザインおよびUXの責任者としてボルボの電動化に向けたデザイン言語づくりに携わった。

ペイジは2023年9月1日にデザインディレクターとしてベントレーに復帰し、電動化時代のベントレーのデザイン言語を定める役割を担っている。約50人のデザインチームを率い、現行・将来の全モデルとコンセプトカー、ショーカーのエクステリア、インテリア、カラー&トリムを統括。そしてトルカルは、ペイジの復帰後に発表された同社初のBEVとなる。

ロビン・ペイジ

ペイジは「クルマを一度にすべて体験するわけではない。見て理解することには階層がある」と語り、トルカルのデザインを四つの「リード(reads)」という段階に分けて説明する。

第1のリードはプロポーション。長いホイールベースと短いオーバーハング、堂々としたフロントまわりで構成し、ベントレーがデザイン指針として掲げる「アップライト・エレガンス」と「エンドレス・ボンネット」をSUVの骨格に落とし込んだ。ボディサイズは全長5008mm、全幅2025mm(ミラー格納時)、全高1677mm、ホイールベース3023mm。トルカルはベントレーの4ドアモデルの中では最も短い全長をもつ。

ベントレー・トルカル

第2のリードはグラフィック。フロントは歴代モデル、特にコンチネンタルTを参照し、ライティングとグリルで顔つきをつくる。グリルは「フローティング・ダイヤモンド・グリル」と呼ばれ、76個のダイヤモンド形状を手作業で配置したもの。解錠するとダイヤモンドが暗い状態から徐々に点灯する。ドア下部のウェルカムランプは路面にベントレーのウイングエンブレムを投影し、ヘッドランプ、テールランプ、グリルと連動した点灯シークエンスを構成する。

リヤはグラフィックを整理し、EXP 15コンセプトで初めて示された「プレステージャス・シールド」の考え方を反映した。テールゲートの造形は、歴史的な「ブルートレイン」ベントレーが備えていたラゲッジキャリアに着想を得たもの。その下にはグロスブラックの馬蹄形パーツを配置し、車幅を強調している。

ベントレー・トルカル
ベントレー・トルカル

第3のリードは面の構成。不要なラインを減らし、面とボリュームで表情をつくるコンセプトである。キャビンを後方に向けて絞り込み、リヤホイールの上にボディのボリュームを盛り上げた。デザインチームはこの後半部の造形を「レスティング・ビースト(resting beast)」と呼んでいる。

ベントレー・トルカル

第4のリードは、近づいたときに見えてくるディテールだ。ダイヤモンドパターンを外装から内装まで繰り返し用い、はっきりした形で表す部分と、面の質感やパターンに置き換えた部分を使い分けている。またトルカルは、昨年発表された新エンブレムを初めて装着したモデルでもある。

ベントレー・トルカル
ベントレー・トルカル

エクステリアの光輝部は、コアモデルではサテンシルバーが標準。コアモデル専用オプションの「Bright Design Specification」を選ぶと、グリルのダイヤモンドがブラックからポリッシュドシルバーに替わり、22インチの「Turbine」ホイールが組み合わされる。ボディカラーは標準7色に加え、新色としてグロス仕上げの「Astral」とサテン仕上げの「Electrum」が用意される。

ベントレー・トルカル

インテリアは、ベントレーのウイングを原型とする左右対称のダッシュボード構成を踏襲している。面を大きくとってレザー、ウール、ウッド、アルミニウムを見せる構成とし、スイッチ類やメタルトリムにはサテン仕上げを用いる。ローレット加工のコントロール類を残し、センターコンソールとステアリングには物理スイッチを配置した。

ダッシュボード中央には、上下方向に湾曲した12.25インチのタッチスクリーンを置く。ベントレーとして初めてOLEDを採用した画面だ。エアベントは、従来のブルズアイ型をもとにした360度型の「Bullseye Vector Sphere」に進化した。ふたつの気流をひとつに合流させることで、リング状に空気が流れ出る感覚をつくる。

シートは新設計で、多くのテクノロジーを盛り込んでいる。標準シートは16ウェイ調整、ヒーター、ベンチレーション、調整式ボルスター、新しいマッサージ機能を備える。

ベントレー・トルカル
ベントレー・トルカル

素材では三つの新しい試みがある。ひとつは、サマセットの織物メーカーFox Brothersと共同開発した100%メリノウールのファブリックで、ベントレーによれば自動車用としては世界初。

ふたつ目の「Ombré Walnut by Mulliner」は、ウォールナットの端材と再生紙を最大1000層重ねて圧着し、1mm未満の厚さにスライスしたもの。ディープブラックからダークスモーク、ライトスモーク、そしてウォールナット本来の色へと移る4段階のグラデーションをもち、キャビンの形状に沿って色調が途切れずにつながるよう設計されている。

三つ目の「Sunburst Aluminium by Mulliner」は、かつてのベントレーのダッシュボードに用いられたエンジンターンド仕上げを、3方向のブラッシュパターンで再解釈した。

ベントレー・トルカル

音もデザインの対象とされた。走行サウンド「Bentley Dynamic Symphony」は、ベントレーV8のリズムを手本に、ドラム、ヴィオラ、ベースギターを実際に演奏してつくられた。ウインカー音は内装工房でハンマーがレザーを叩く音、タッチスクリーンの通知音はクリスタルグラスの音を素材にしている。

トルカルのラインナップは、821PSのコアモデルと、ローンチコントロール作動時に888PSを発生するSの2本立て。Sはブラックのブライトウエアとミラーキャップ、ダーク仕様のリヤランプ、リヤディフューザー、スポーツサイドシル、フロントバンパーのストレーク、レッドのブレーキキャリパー、専用のカラースプリットとキルト・ステッチパターン、ピアノブラックのパネル、発光するトレッドプレートなどで差別化する。

ベントレー・トルカル