GOODYEAR in WEC
WEC参戦の目的は3つ

グッドイヤーがWECに参戦する理由は何か。その目的は大きく3つあるという。WEC富士6時間のために来日したマーケティング&レース担当ディレクターのダン・ブラケット氏が答えた。ひとつ目は技術とイノベーションだ。「サーキットで学んだことは、実際にコンシューマー向け製品へと生かされています。その技術のつながりは、我々にとって非常に重要です」と述べた。これはレースで培った技術を市販タイヤへ展開することで、モータースポーツと一般ユーザーとの距離を縮める「レース・トゥ・ロード」という考え方そのものだという。
2つ目がブランド認知である。WECは世界中で視聴されるグローバルな人気レースシリーズであり、グッドイヤーのブランドを世界中のユーザーにアピールする場となる。そして3つ目は、耐久レースそのものがタイヤメーカーの技術力を試す場になることだ。
「耐久性や長時間走行におけるエンジニアリング能力を試す、本当の意味でのテストです。そして最終的には、素晴らしいショーを提供することにもつながります。我々はここに参加できることを非常に誇りに思っています」
2023年まではLMP2(プロトタイプカー)にタイヤを供給していたが、現在供給するLMGT3は上記の理由によりむしろ好都合だ。「LMGT3には9メーカー、18台のマシンが参加しています。そして何より、市販車に非常に近いクルマであることが大きい」と語る。LMGT3では、ポルシェ、フェラーリ、BMW、マクラーレンなど、実際にユーザーが購入できるモデルをベースとしたレーシングカーが競い合う。そのため、レースで使われている技術と市販車用タイヤとのつながりをユーザーがイメージしやすいのだ。ちなみにLMGT3には2029年まで供給する契約が結ばれている。
2027年は大変革する環境スペック

2027年にWECで使用されるタイヤは、サステナブル素材の使用比率を現在の33%から66%へと倍増する予定だという。どの素材がどの程度置き換えられるかについては、「さまざまな原材料によって構成されるため、具体的なリストを示すことはできない」としながらも、化学物質やポリマーなどの合成化合物を含め、複数の素材が対象になると説明する。さらにグッドイヤーではタイヤそのものの開発だけでなく、製造拠点におけるサステナビリティにも取り組んでいるという。
「世界各地の工場に新しいソーラーパネルを設置し、再生可能な資源による新たな電力源を導入しています。これは会社全体としての取り組みであり、今後もこの方向を推進していきます」
レースタイヤの生産についてはFIAの環境認証プログラムで3つ星を取得しており、レースという極限環境で得られた技術と、製造プロセスそのものの環境負荷低減、その双方を同時に進めている。グッドイヤーのレースタイヤ生産拠点は米国とドイツの2ヵ所。米国では本社所在地であるアクロンでNASCAR、NHRA(全米ホットロッド協会)などのレースタイヤを生産している。一方、今回のWECで使用されているタイヤはドイツ・ハーナウの工場で生産される。地域ごとに必要なタイヤをできるだけ近い場所で生産することで、在庫供給の効率化と輸送による環境負荷の低減にもつなげている。
レースタイヤの技術を市販タイヤへ

ところでサーキットで開発された技術が市販タイヤに生かされるのだろうか? その問いに対しては、明確に「イエス」と答えた。「そうした技術の一部は、リプレイスメント市場にも確実にフィードバックされます。我々はモータースポーツのヘリテージ、そしてEAGLEブランドの高性能という歴史に改めて力を入れています。レーシングタイヤだけでなく、市販ハイパフォーマンスタイヤもEAGLEブランドです」とコメントした。EAGLEブランドは1980年代から続くグッドイヤーの高性能タイヤブランドである。
近年、グッドイヤーの市販タイヤがポルシェなどの高性能スポーツカーに採用される機会が増えているが、今後も新たな適合サイズや新車装着(OE)パートナーを開拓し、リプレイスメント市場の展開も拡大していくという。その根底にあるのが、「日曜日にサーキットで見たものを、月曜日には購入できる」という発想だ。レースでEAGLEレースタイヤを見て、それと同ブランドの市販タイヤを愛車に装着する。モータースポーツと市販車を直接つなぐことで、ブランドそのものの価値を高めていくのが狙いだ。
2027年仕様のWECタイヤでは、EAGLEのロゴにも小さな変更が加えられるという。「Gの中央部分にイーグルの頭部を表現した形状が入っています」。こうしたロゴの変更も、今後は市販製品を含むEAGLEブランド全体へ展開していく予定だという。
グッドイヤーがWECで進めているのは、単なる「レース用タイヤ」の開発ではなく、レースから市販車へ、市販車から再びレースへ。EAGLEブランドを軸に、その技術と価値を循環させる「レース・トゥ・ロード」という思想が、WEC参戦の背景にある。
PHOTO/GENROQ、GOODYEAR

