4歳から磨いた感覚を武器にD1GPへ

石井亮が操る進化形JZX100

3歳からラジコンを始め、4歳でラジコンドリフトにシフト。15歳で、当時ラジコンドリフトの世界最高峰だった「D1-10ワールドチャンピオンシップ」でチャンピオンに輝いた石井選手。現在もD1GPドライバーとして活動する一方、ラジコンドリフトの世界大会でも活躍する一線級の選手であり続けている。

そんな石井選手が実車ドリフトに挑戦し始めたのは、18歳で運転免許を取得してから。そこからのステップアップは驚くほどスムーズだった。

まずは免許取得の翌年となる2023年、茂原ツインサーキットで開催されたD1地方戦にスポット参戦。実車では自身初の大会出場だったにもかかわらず、いきなり初出場・初優勝を飾り、D1ライツへの出場権を獲得した。

さらに2024年には、ステップアップしたD1ライツの開幕戦・日光で準優勝。D1GPライセンスの権利を獲得し、実車ドリフトの公式戦にはわずか2度出場しただけで、最終目標としていたトップカテゴリーへの切符を手にしたのである。

この急速なステップアップを支えたのが、ラジコンで長年培ってきた経験に加え、親交のあった山中真生選手から教わったシミュレーターでのトレーニングだった。

当時、実車でドリフトする機会はほとんど数えられるほど。それでも本番を想定し、シミュレーターを使って短時間に集中して練習するスタイルは、現在も石井選手のルーチンワークとなっている。

こうして念願のD1GPに初挑戦したのが2025年シーズン。しかし、開幕戦で大きな壁に直面することになる。

「環境が大きく変わって、おそらくメンタルの問題でした。練習走行では予選で勝負できる、そこそこいい走りができていても、予選の本番になると全く実力が出せなくなりました」

石井選手自身がそう振り返るように、D1GPはこれまでとは一筋縄ではいかない世界だった。予選を通過できないことへの挫折感も大きかったという。

久々に味わう大きな挫折の中で、シーズンを通して自身のメンタル、培ってきたテクニックの順応性、そしてマシンのセットアップなど、さまざまな方向から解決策を模索。その転機となったのが、シリーズ前半戦を終えたタイミングで行われた、チーム監督を務めるウエルド伊藤代表との話し合いだった。

「直前の大会で、普段はやらないような変なミスをボクがしたんです。ラジコン時代からずっとボクを見てきている伊藤さんには、その違和感が分かったようで『何を消極的に走っているんだ』と。それまでのボクは、チームから乗せてもらっているクルマを上手く走らせなきゃいけないという気持ちが強くて、どこか遠慮があったのを見抜かれました」

さらに伊藤代表からは、「ブツけてもいいし、壊してもいいから亮は思い切りやれ」と言われたという。

「それから次のオートポリスでは、吹っ切れた走りができるようになりました」。そう振り返るように、この心境の変化は、その後の成績にもつながっていった。

また、シーズンオフから2026年にかけては、ラジコンの大会へ参加する回数も意図的に増やしたという石井選手。

操縦者が隔絶された車内で目の前のコースだけに集中して走れる実車に対し、ラジコンはお立ち台の上でギャラリーの注目を集めながら競技を行う。そのため、石井選手にとってはラジコンの方が緊張する度合いが大きいという。

そこでラジコンの大会に積極的に参加することで、D1GPで課題となったメンタルコントロールを鍛えることも意識している。

そんな石井選手が現在操るマークIIは、2024年に将来的なD1GP参戦を前提として製作されたマシンだ。製作当初から一部レギュレーションをD1ライツ仕様に合わせ、その後、2025年のD1GP参戦に向けてロールケージやリヤラジエター化などのアップデートを受けている。

さらに2025年シーズン中には、3.6Lの2JZエンジンをハイコンプ化するとともにタービンサイズを拡大。2026年に向けては、ミッションもクロス化された。

重量のあるJZX100のネガティブな部分を補ううえで、高トルクを発揮する3.6Lエンジンが活きる。そしてクイックチェンジによってファイナルギヤの選択が容易になったことで、昨今のD1GPでは低回転域を広く使えるメリットも大きいという。

タービンはG40を採用し、LINKフューリーでセッティング。最高出力は1050psに達する。燃料にはスノコGTプラスを100%使用する。

レブリミットは8000rpm手前と、あえて抑えめに設定。タービンがタレ始める高回転域はなるべく使わず、エンジンやタービンに強引な負荷を掛けないことで、トラブルを避けながら高い耐久性を確保する狙いだ。

アンチラグを使用しつつ、追加のバキュームを設置しないマスターバックレス仕様。ブレーキシリンダーをボディにしっかりと補強することで、ブレーキペダルそのものの効きはある程度維持されているという。

リヤウインドウの代わりに設けられているのは、自社製のカーボンエアスクープ。その内側にクールマックス製ラジエターを配置し、アリスト純正ファンを2基掛けすることで冷却を行う。

基本レイアウトはJZX100のまま。切れ角アップには秋葉瑠世選手のブランド「ブースター」のナックルを使用し、ステアリングラックは20mm前方へオフセット。ただし、6月の筑波ラウンドで新たなセッティングの方向性が見えてきたことから、ナックルを含めたフロント周りを新しい構成へ変更することも検討中とのこと。

ブレーキはプロジェクトμ製をベースに、ローターを自社で加工。1カ所あたり600g、合計でバネ下重量を軽量化している。今後はさらなる軽量化も狙っているそうだ。

車高調は前後ともJIC製で、伸び側と縮み側の減衰力を独立して調整できる2ウェイタイプを採用。山下選手の時代からこの仕様を継続している。

一度2ウェイの便利さを知ってしまうと1ウェイには戻れないほど、セッティングの自由度が高いという。

アーム類はすべてイケヤフォーミュラ製の調整式を使用。リヤナックルはトラクション向上を狙い、ピロボールへ打ち換えられている。

トランスミッションは、車両製作時からホリンジャー製のシーケンシャルドグを使用。2025年シーズン終了後には、従来よりもクロスしたギヤ比を持つ仕様へと新調した。

これによってファイナル側での調整がしやすくなり、今シーズンの好調を支える要因のひとつになっている。

「ゴアボディ」を採用するJZX100は、徹底的に補強を施したとしても、GR86などと比べてボディ剛性に限界がある面も多い。そのため、長年JZX100を扱ってきた経験をもとに、ボディ補強は効果的な部分に重点を置き、重量増を抑えることを優先。レギュレーションの限界に近い加工を施しながら、車重は1290kgに仕上げられている。

不要なものを取り除いてスッキリとした4ドアボディを、さらにスマートに見せたいという伊藤代表のこだわりから、燃料タンクを隔離するための室内隔壁もアルミパネルでワンオフ製作。

「Weld」の刻印は、このパネル専用に型を作って入れたというから、そのこだわりも徹底している。

コックピットの中心となるのは、純正から型を取って製作した自社製カーボンダッシュボード。ペダルは吊り下げ式だが、アクセルペダルのみ電スロ化に伴ってGR86用を流用している。

サイドレバーはジュラコンから削り出したワンオフ品だ。

ホイールはワークエモーションZR7で、サイズはフロント9.5Jプラス12×18、リヤ10.5Jプラス12×19。タイヤにはフロント265/35、リヤ285/35のヴァリノ・ペルギア08Rを組み合わせる。

ワイドボディキットは、山下選手とFDJに参戦していた当時に製作した自社製品を採用。フロント片側75mm、リヤ片側100mmという大幅なワイド化が施され、ドアパネルも専用品が用意されている。

開発のきっかけは、切れ角とタイヤ幅に合わせて、より大きなサイズのエアロが欲しいという要求だった。

盤石のチーム体制のもと、開幕戦では自身初となるベスト4を経験。20代の若手選手の中ではシリーズ7位につけるなど、着実に結果を残している石井選手。

4歳からラジコンドリフトで磨き続けてきた感覚と、シミュレーターで積み重ねた経験。そして、D1GPという舞台で味わった挫折を乗り越えて手にしたメンタル面での成長。それらすべてを武器に、進化を続けるJZX100を操る。

ラジコン出身ドライバーとして、すでにD1GPで活躍する蕎麦切、田野両選手に追いつく日も、そう遠くないのかもしれない。

TEXT:Miro HASEGAWA (長谷川実路) /PHOTO:Miro HASEGAWA (長谷川実路) &Daisuke YAMAMOTO(山本大介)

●取材協力:Weld×OVERDOSE

「すべてのカテゴリーで頂点を獲る!」学ドリ王者が挑むD1GP制覇、800馬力の180SXに込めた執念

2023年のD1ライツ王座獲得を経て、2024年にD1GPへステップアップした米内寿斗。初年度は追走未勝利に終わったものの、1年間の休止期間を利用してマシンを大幅にアップデート。復帰した2026シーズンは開幕から4戦連続で予選を突破し、追走でも初のベスト8進出を果たした。約800psの2JZと刷新された足まわりを武器に、最高峰の頂点を目指す180SXの進化に迫る。

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