すべてのカテゴリーで頂点を獲る!
不屈のドリフターが挑むD1GP制覇
関わったカテゴリーでは、必ずチャンピオンを獲る。米内選手のドリフトキャリアは、そんな目標をひとつずつ達成していくことで積み重ねられてきた。
その原点となったのが、『ドリフト天国』が主催していた全日本学生ドリフト王座決定戦、通称『学ドリ』への出場だ。24歳以下の現役学生だけに出場資格が与えられるこの大会に憧れた米内選手は、自動車部のある山形大学へ進学。大学院まで進み、卒業を控えたラストチャンスとなる2014年、自身4回目の挑戦で東西統一王者に輝いた。
当時の米内選手は、学ドリで勝つことに文字通り人生を懸けていた。しかし、勝利のあとに生まれたのは達成感だけではなかった。学ドリには約200名が参加し、書類選考まで含めれば年間300名にも及ぶ同世代のドリフターが挑戦している。その頂点に立ったからこそ、「中途半端な形で自分のドリフト人生を終わらせてはいけない」という使命感が芽生えたのだ。
翌年に社会人となると、D1GPへ向かう道を一歩ずつ歩み始める。まず2014年のD1地方戦全国大会を制覇すると、D1地方戦イーストディビジョナルシリーズを2015年、2016年と連覇。さらにD1東日本シリーズでもチャンピオンを獲得した。

また、配属先が福島県となったことで、ドリフトの聖地として知られるエビスサーキットが身近な存在となった。休日のほとんどをエビスで過ごすほど、ドリフト漬けの日々を送るようになり、2017年からスタートしたエビスサーキット主催のEDS(エビスドリフトシリーズ)では、2022年までシリーズ6連覇という快挙も成し遂げている。
次なるステージとなるD1ライツにステップアップしたのは2019年。この年はプライベーターとして参戦し、第2戦エビス南でラウンド優勝を飾ったものの、シリーズランキングは5位に終わった。
翌2020年にはカザマオートのドライバーに抜擢され、3戦連続優勝を達成。しかし、最終戦の1週間前、エビスでの走行中にあばら骨5本を折る大怪我を負ってしまう。その影響で最終戦はノーポイントとなり、シリーズ2位でシーズンを終えることになった。

ほぼ手中に収めていたシリーズタイトルを逃した悔しさ。そして、ワークスマシンのドライバーを経験したことで、大きく意識が変わったと米内選手は振り返る。
以降は2年間参戦を休止し、自宅ガレージを拠点に、プライベーターとしてD1ライツで戦える本格的なマシン製作に着手した。

その成果が実を結んだのが2023年だった。ニューマシンの180SXとともに復帰を果たすと、有言実行でD1ライツのシリーズチャンピオンを獲得。米内選手の目標は、さらにその先となるD1GPシリーズ制覇へと書き換えられた。
D1GP初参戦となる2024年シーズンは、新たな180SXをベースにGPスポーツへマシン製作を依頼し、国内最高峰の舞台へ挑戦。エンジンはオートサービスMORIが手がける2JZ改3.4Lを搭載する一方、足回りには自作の純正加工ナックルを中心としたD1ライツ時代の仕様を継承している。

すると、マシントラブルでリタイヤした開幕戦を除き、16台だけが勝ち残る熾烈なD1GP予選を8割の確率で突破する安定感を披露。しかし、追走では組み合わせの不運も重なり、一度も勝利を挙げられないままシーズンを終えた。
さらにスポンサーとの契約事情も重なり、2025年の参戦も見送ることとなった。
それでも、米内選手がシリーズチャンピオンという目標を諦めることはなかった。エビスサーキットで知り合った現チーム監督・黒田氏の支援に加え、新たなスポンサーも獲得。復帰への道筋が整うと、これまで勝てなかった追走での課題を解決するため、マシンのアップデートに取り組んだのである。

エンジンは引き続き、オートサービスMORIが製作した海外製パーツを組み合わせた3.4L仕様の2JZ。最高出力は約800psを発揮する。セッティングを担当するのは、茨城県のプライベートチューナー・川又さんだ。
セッティング技術はもちろん、ドリフターとしても一流の腕を持つ川又さん。電動スロットルやアンチラグの効かせ方までドライバーの意図を汲み取り、米内選手が求めるフィーリングに仕上げてくれるという。

2024年はG35タービンを使用していたが、2026年仕様ではG40-1150へサイズアップ。ただし、A/Rの小さい仕様を選択することで、高回転域の伸びだけでなく低回転域のトルク感も向上。G35時代に抱えていた不満を解消した。
さらにエキゾーストマニホールドをツインスクロール化。レイアウトの厳しいエンジンルームのなかで、フロントパイプも自作してフル90φ化している。

2024年仕様では、吸気温度の高さも課題となっていた。インタークーラーの大型化はレスポンス低下を懸念して見送り、燃料をレーシングガソリン単体からスノコE85とGTプラスのハーフミックスへ変更。さらに吸気隔壁を設け、コアへファンを追加することで、大幅な改善を実現した。

2026年シーズンからは、純正加工ナックルからスキッドレーシング製アングルキットへ変更。DOSS審査で求められる、振り返しの鋭い動きを狙ったものだ。タイロッドエンド取り付け部などにも加工を施し、好みの特性に合わせている。
なお、最大切れ角については、逆関節との兼ね合いから純正加工ナックル時代と変わっていない。

車高調はスキッドレーシング製シルビア用の市販モデルをそのまま使用。もともと減衰力が高めに設定されているため、ダイヤル調整だけでも十分なセッティングが可能だという。
クセのない扱いやすさも特徴で、スプリングレートはフロント14kg/mm、リヤ7kg/mmという比較的硬めの設定。DOSS審査で不利となる姿勢変化を抑えるためだ。さらにフロントには2kg/mmのヘルパースプリングを追加し、初期ストロークを確保している。

フロントまわりは、ワイズファブのような動きを目指して仕様変更。GT-R純正ナックルからマックスドリフト製ドロップナックルへ変更し、さらにスキッドレーシング製の試作ロワアームを組み合わせて、追走時のトラクション向上を狙っている。
ちなみに、スキッドレーシング代表は学ドリ時代にともに戦った山形大学自動車部の先輩。ドリフト用パーツの開発では、米内選手自身も意見を出すテストドライバーとして協力している。

シートポジションは、レールをワンオフ加工して低く設定。ロールバーとヘルメットの干渉を避けるためだが、本人は本来、もう少し高いポジションを好んでいるという。
ヘルメットに送風する扇風機は、あるとないとでは集中力がまったく違うという重要な冷却アイテム。フロントウインドウ側の送風は、雨天時の曇り止めとしても役立っている。

シーケンシャルドグミッションは、サムソナスの耐久性に不安を感じたことから、2026年仕様よりホリンジャーへ変更。チームオレンジが長年実戦投入してきたギヤの摩耗状態を確認し、その耐久性を評価して採用を決断したという。
シフトノブの位置と形状は、米内選手のこだわりを反映した黒田製作所製のワンオフ品だ。


オリジンラボの風神ボディキットは、180SX乗りのD1GPドライバーとして知られる唄選手がデザインを監修したモデル。今年は欧州の著名カーケアブランド、ジーオンがメインスポンサーとなり、ボディ左右で異なる派手な迷彩カラーをラッピングで再現している。

フロントフェンダーは、アングルキットによるワイドトレッド化に対応するため、片側40mmワイド化したワンオフモデル。ホイールにはワークCR至極を装着し、サイズはフロント9.5J×18+12、リヤ10.5J×19+12となる。

ホームコースであるエビスサーキットを走り込み、EDS(エビスドリフトシリーズ)での連覇も達成。その実力が認められ、チームオレンジの熊久保代表とも縁が生まれた。
2026年シーズンはハーソンタイヤを履いてD1GPを戦う。タイヤサイズはフロント265/35R18、リヤ285/35R19だ。

参戦2年目となる2026年シーズンは、現時点で4戦連続の予選通過を記録し、追走でも2勝をマーク。4戦すべてで敗れた相手は、今季圧倒的な成績でシリーズトップを走る横井選手という不運こそ続いているものの、マシンのアップデートが確かな成果につながっていることを示している。

学ドリ優勝で背負った使命に突き動かされて歩んできたドリフトキャリア。そのため、米内選手がD1GPへ参戦する際のメカニックをはじめとするサポートスタッフは、監督を除けば全員が学ドリ時代に腕を競い合った仲間たちだ。
彼らだけではない。これまで学ドリに挑戦してきた数千人ものドリフターたちの想いも背負い、米内選手はD1GPシリーズチャンピオンという新たな頂点を目指している。
学ドリ王者として、誰よりも長く、そして険しい道のりを歩んできた男。その先に待つのは、学ドリ王者初となるD1GPシリーズチャンピオンという快挙だ。その瞬間が訪れる日を期待したい。
TEXT:Miro HASEGAWA (長谷川実路) /PHOTO:Miro HASEGAWA (長谷川実路) &Daisuke YAMAMOTO(山本大介)
