Audi A6 TFSI quattro 200kW
BMW 523d xDrive M Sport
Mercedes-Benz E 220 d Sports Night Edition(ISG)

BEVとICEの二刀流のBMW

ボディサイズが3台の中で大きいBMW523d、一方Eセグメントセダンとして標準的なサイズのA6。それぞれの走りの個性は対照的だ。
ボディサイズが3台の中で大きいBMW523d、一方Eセグメントセダンとして標準的なサイズのA6。それぞれの走りの個性は対照的だ。

今年春に国内発売された新型「アウディ A6」は2025年春にワールドプレミアされた。そんなA6のライバルである「メルセデス・ベンツ Eクラス」と「BMW 5シリーズ」も、最新型はともに2023年に本国デビューだから、まだまだモデルライフ半ばと思われる。こうして、ジャーマンスリー(以下、御三家)の同世代Eセグメントセダンによるガチンコ勝負の舞台が、改めて整ったわけだ。

それにしても、Eセグメント市場は昨今の日米欧のセダン離れの影響をもろに受けており、特にエンジンを搭載したEセグメントセダンは、御三家以外には、もはや「キャデラック CT5」と「レクサス ES」くらいしか思い当たらない。最近まで「ボルボ S90」もあったが、後継であるES90はBEV専用になったうえに、大きめの地上高とハッチゲートを持つクロスオーバーに転身してしまった。アルファロメオにランチア、マセラティ、シトロエン、プジョー、さらには日産にホンダ……と、Eセグメント全盛時代を肌感覚で知る中高年カーマニアにとって、今の状況は素直にさみしい。

さて、5mという新型A6の全長は、先代比で50mm大きくなったが、御三家における「Eクラスより大きく、5シリーズよりは小さい」という相対関係は変わりない。全幅や全高については先代と5mmほどの差しかなく、全幅は新型の方がわずかに小さいくらいだ。Eも全幅こそ30mm大きくなったが、全長は20mm、全高で10mmの拡大にとどまる。

セダンの価値を今こそ見直す時がきた

吸い付くようなロードホールディング性を魅せるアウディA6。ドンピシャの車両感覚が気持ちいいメルセデスE220。
吸い付くようなロードホールディング性を魅せるアウディA6。ドンピシャの車両感覚が気持ちいいメルセデスE220。

こうして先代からのサイズ拡大が最小限といえるA6やEに対して、5シリーズは全長で85mmも大きくなっている。5は先代でも御三家で最大だったが、こうして3台の最新Eセグメントセダンを並べてみると、実寸以上に5の大きさを実感させられる。これは5mを軽く超える全長に加えて、全高も30mm増となって1.5mの大台(?)に達した、セダンとしては異例の背高プロポーションによるところも大きい。

5がここまで大きくなったのには理由がある。それは同じボディでエンジン搭載車とBEVを用意する二刀流だからだ。これまでBEV化を強力に進めてきた欧州メーカーが、戦略の見直しを余儀なくされているのはご承知のとおりだ。しかし、BMWに限っては、積極的なBEV戦略を同時にエンジン車の継続を想定した“マルチパスウェイ”を、以前から公言していた。だからこそ……の二刀流である。今回の5シリーズのクラス最長のホイールベースや、セダンとしては背高なプロポーションも床下に大きな電池を積むBEVのためと考えれば納得である。

一方、つい最近まで、アウディは2033年、メルセデスは2030年までの完全BEV化を掲げており、それに向けたラインナップ再構築を着々と進めていた。両社はすでにEセグメントにもBEV専用モデルを投入しており、今回のA6やEは「完全BEV化に向けた最後のエンジン搭載車」として開発されたフシがある。パッケージレイアウトや基本メカニズムも従来踏襲型と思われるし、それゆえサイズ拡大も最小限。新型A6のプラットフォーム=PPCは新開発とされるが、厳密にはMLBエボの改良版と考えるとしっくりくる。

特性や味わいの違う3車のエンジン

微笑をたたえたフロントグリル、丸みを帯びたトランクリッド、そして3枚並んだディスプレイと、A6のデザインはまさに最新アウディそのものだが、その乗り味はそれとは好対照に熟成感に満ちている。

試乗車にはアダプティブエアサスペンションとオールホイールステアリング(四輪操舵)というオプション機能が追加されていたが、そこに自慢のクワトロ4WDも相まって、どんなに過酷な路面でも走行ラインが揺らぐことはほとんどない。ステアリングの接地感などは少し希薄なのは事実だが、吸いつくようなロードホールド性能とクールな運転感覚の融合は、まさにアウディというほかない。また、新型A6の自慢という静粛性もなるほど非常に高い。

エンジン搭載車といっても、48Vマイルドハイブリッドは今のヨーロッパでは不可欠で、それは今回の3台も例外ではない。ただ、A6に搭載されるMHEVプラスは、マイルドといいつつ、状況に応じて電気走行も可能。実際、A6は大概はモーターで発進して、走行中も気がつくとエンジンが停止していることもしばしば。さらに100km/h超の高速域でも、意外なほどあっさりとエンジンが落ちるなど、そのふるまいはフルハイブリッドを彷彿とさせる。

もはやガソリンとディーゼルで価格や性能に大きな差はない

Eクラスの乗り味もまた、A6同様に熟成感にあふれる。ガラスで覆われたインパネはA6以上に未来的だが、それを抱えるダッシュボードの奥行は短く、ドンピシャの車両感覚は、Eクラスの伝統そのものというほかない。その運転感覚は最もコンパクトでタイト。ステアリングフィールも鮮明で、今回唯一の2WDということあり、いい意味で古典的なスポーティ感は快感である。

こうして熟成されたパッケージが、筆者のような中高年には滋味深いA6やEに対して、BEVとの二刀流という新たな領域に踏み込んだ5シリーズの運転感覚は新しい。なにより印象的には「こんなに硬くなくてもいいのでは?」といいたくなるほどのボディ剛性感である。

これはおそらく、重くてBEVを想定したボディ設計によるものと思われるが、それゆえ大型バッテリーが省かれる今回のマイルドハイブリッドでは、ボディもシャシーも余裕しゃくしゃく。しかも今回の523dは4WDなので、さらに余力たっぷりだ。荷重移動などは意識せずとも、ステアリングの利きは強力で、しかも正確無比。タイトなコーナーでアクセルペダルを遠慮なく踏み込んでも、何事もなかったかのようにシレッと曲がってくれるのだ。

今回は試乗車の都合もあって、A6がガソリン、Eと5がディーゼルだったが、エンジンのモジュラー設計や過給ダウンサイジングが常識となった近年では、ガソリンとディーゼルで価格や性能に大きな差はなく、ユーザーの乗り味の好みや用途によって使い分ける時代である。

どこまでも走っていきたくなる3台の走行性能

セダンはクルマの基本形であり、特にドイツEセグメントセダンはあらゆる交通環境に適用するサイズ感、十二分な高級感がある。
セダンはクルマの基本形であり、特にドイツEセグメントセダンはあらゆる交通環境に適用するサイズ感、十二分な高級感がある。

実際の車名も、BMWはディーゼルもガソリンも「523」だし、メルセデスも前者が「220」、後者が「200」と大差ない。A6も本国では両エンジンとも「150kW」が基準になっているが、日本にはガソリンのみハイチューン型の「200kW」が導入される。今回の試乗でも、唯一のガソリンだったA6は、高速での胸がすく伸び感が印象的。しかも、そのA6TFSIクワトロが、本体価格でも御三家のEセグメントでは最安……と、冷静に考えると、これは魅力的なチョイスだと思う。

それにしても、Eセグメントセダンはあらゆる交通環境でも持てあまさないギリギリのサイズにして、十二分な高級感があり、ガソリンもディーゼルもどこまでも走っていきたくなる乗り味で、まさにクルマの基本形というほかない。アウディとメルセデスの野心的なBEV戦略の中で、一時はフェードアウト必至と思われたA6やEも、両社の戦略見直しで、もうしばらく主力として活躍しそうな風向きになってきた。この点は、クルマ好きとしてひと安心である。

REPORT/佐野弘宗(Hiromuneu SANO)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
MAGAZINE/GENROQ 2026年11月号

SPECIFICATIONS

アウディA6 TFSIクワトロ

ボディサイズ:全長5000 全幅1875 全高1465mm
ホイールベース:2925mm
車両重量:1980kg
エンジンタイプ:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1984cc
最高出力:200kW(272PS)/5000-6500rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/1600-4500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション:前後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後225/55R18
車両本体価格:885万円

メルセデス・ベンツE 220 dスポーツナイトエディション(ISG)

ボディサイズ:全長4960 全幅1880 全高1465mm
ホイールベース:2960mm
車両重量:1960kg
エンジンタイプ:直列4気筒DOHCディーゼルターボ
総排気量:1992cc
最高出力:145kW(197PS)/3600rpm
最大トルク:440Nm(44.9kgm)/1800-2800rpm
トランスミッション:9速AT
駆動方式:RWD
サスペンション:前後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前245/40R20 後275/35R20
車両本体価格:995万円

BMW 523d xドライブ Mスポーツ

ボディサイズ:全長5060 全幅1900 全高1515mm
ホイールベース:2995mm
車両重量:1870kg
エンジンタイプ:直列4気筒DOHCディーゼルターボ
総排気量:1995cc
最高出力:145kW(197PS)/4000rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/1500-2750rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後245/45R19
車両本体価格:964万円

【問い合わせ】
アウディ コミュニケーションセンター
TEL 0120-598-106
https://www.audi.co.jp/

メルセデス・コール
TEL 0120-190-610
https://www.mercedes-benz.co.jp/

BMWカスタマー・インタラクション・センター
TEL 0120-269-437
https://www.bmw.co.jp/

アウディのDセグメントモデルA6

【Eセグ新基準】新型「アウディA6セダン」に試乗「これは超洗練されたスーパーモダンセダンだ!」

アウディのDセグメントモデルA6が9代目へ進化を遂げた。アウディのICEモデル史上最高のCd値0.23を達成したほか、全車MHEVプラスを組み合わせる。エレガンスを極めた新型A6の魅力を紹介していこう。(GENROQ 2026年10月号より転載・再構成)