Radical SR1 XXR

少し先まで走りたい

タイヤはハンコック製レーシングタイヤ
タイヤはハンコック製レーシングタイヤ

情けないことに、たった15分で握力が尽きかけていた。それでも、できるならもう少し乗ってみたいと思った。レースをしたい──、ではない。かといって、もっと速く走りたい──、でもない。このクルマをもう少し自分のものにしたい、あと少し理解してみたい、もっと少し先まで走ってみたい、そんな感覚だ。

そのコクピットに初めて収まった「ラディカルSR1 XXR」との間に、試乗後、早くもそんな感情が芽生えていた。いってみれば、マシンとの“恋愛”の予感。今のところ、片想いではあるけれど……。

舞台はドニントン・パーク。かの有名なヘアピンを使わないショートレイアウトながら、折からの雨も止んで、ほぼドライな路面でテストすることに。ドニントンそのものも初めて走るコースだ。

ちょっと儀式めいた操作をしてスタンバイ。慎重にクラッチをつなぎ、アイドリングスタートする。バイクのミッションシステムを使っているので、シーケンシャルだ。スタート&ストップ時のみクラッチ操作が必要となる。

(今のところ)サーキット専用

走り出す。まず驚いたのはとても扱いやすいということだった。SR1 XXRは、ラディカルのラインナップで最も小さな1台だ。「スズキ ハヤブサ」をベースに専用開発された自社製1340cc直4ユニットをリヤミドに置き、リヤ2輪を6速シーケンシャルミッションでドライブする。(今のところはまだ)トラック専用マシンである。スペースフレームシャシーにアルミニウムパネルを貼り付けた古式ゆかしきボディ骨格をもち、レーシングスリックではなくハンコック製の専用トレッドタイヤを履く。

スペックや仕様に目新しさはない。むしろ、成り立ちそのものは古くさい印象さえ持つ。だが、乗ってみればそんなことなどこのクルマの魅力に何ら関係ないことだったとわかる。まず印象に強く残ったのがエンジンだ。レスポンスは鋭く、トルクが“アシ”応えとしてしっかり伝わってくる。出力はどこまでもリニアに立ち上がり、スロットルを踏んだ分だけ、期待通りにクルマが進む。軽量モデル故にパワーでドライバーを試すようなタイプではない。右足と後輪の間に、余計な演出がひとつもなかった。パワートレインとのエンゲージメントが、SR1 XXRを驚くほど御しやすいものにしている。もちろんハンドリング性能にも感心した。小径のリムには慣れが必要だったとはいえ、15分で握力が尽きかけたのは、そのせいだけではない。伝わってくる情報の質そのものが、実に的確だったからでもあった。

タイヤが路面と今どう向き合っているのか。これから何が起きようとしているのか。クルマと路面との関係が、ステアリングを通して手のひらに確実に届く。タイヤの存在を、十二分に教えてくれるから、握る手にも思わず力が入る。結果、その走りは全くもって「オン・ザ・レール」である。周回を重ねてペースを上げても、その感触はまるで変わらない。自分では速度を上げたつもりでも、クルマは平然としている。何だかとても、悔しい。

正しく扱えば、とても予測しやすい

メカニカルグリップにダウンフォースが折り重なって、速度域が上がるほどに車体は路面に吸い付き、安定する。まるで限界域に近づけていないというだけの話でもあるが、それにしてもその懐の深さには驚くほかない。しかも、スリックタイヤではないのだ。ハンコックがラディカル専用に開発したトラック用とはいえ、ラジアルタイヤである。それでも15分の走行中、滑る気配など微塵も感じさせなかった。

ブレーキも同様だ。まだまだ奥まで突っ込める。レーシングドライバーで2022年のラディカル・カップUK・SR1部門チャンピオンの若者、ダリル・デ・レオン(Daryl De Leon)の助手席で、それがよく分かった。自分ではブレーキを使い切っているつもりだったが、あの程度では「使ったうち」に入っていない。アクセルワークもそうだ。コーナーの立ち上がりで、踏めば踏むほど前へ出ていく──という領域が実は見えてすらいなかった。ミドシップ・リヤドライブだからちょっと恐々と、という言い訳以前に、クルマの性能をシンプルに引き出せていなかっただけの話である。

走る前、ダリルはこう言っていた。「正しく扱えば、とても予測しやすいクルマだ(predictable)」と。その意味が、今ならよく分かる。速い。だが、ドライバーを怖がらせることで速さを実感させるようなクルマではない。スリリングな走りとは対極にあった。クルマの挙動が予測できるからこそ、ドライバーはもっと先へ行きたくなる。もう少し速くても大丈夫ではないか。もう少し奥からブレーキを踏んでもいいのではないか。もっと縁石を使ってもいいのではないか。そんな欲が、次から次へと顔を出す。

エントリーモデル故に際立つ本質

SR1 XXRは、ラディカルのラインナップではエントリーモデルに位置づけられている。エントリーとはいえ、レーシングカーとしての本質が薄まっているわけではない。むしろその逆で、余計なものが削ぎ落とされているぶん、本質が際立つ。エンジンパワーのリニアな立ち方、軽量な車体の動きとスチールフレームシャシーのほどよいねじれ感、メカニカルグリップとエアロダイナミクス。それらすべてが、ドライバーを「速く走る」という一点にだけ集中させるために働いてくれている。たった15分では、その性能のほんの一部しか引き出せなかった。だからこそ、(手がジーンとしているにも関わらず)もっと乗りたいと思った。

英国での本国価格はおよそ6万ポンド。日本円にして1300万円弱。ラディカルジャパンによれば、日本での販売価格はおよそ1500万円程度になる予定だ。高価なスポーツカーではなく、本物のレーシングカー。サーキットでしか味わえない快感を、思う存分に味わう。そのためのパートナーとしてSR1 XXRは驚くほど純粋で、しかもとびきり身近な1台だろう。

大いに期待すべきは、ラディカル・ジャパンによる日本市場における今後の活動である。ジャパンの直接的な運営によるアクティビティはひとまずひとつ上のモデル「SR3」のカップレースというカタチで来年2027年に始まる。だとすれば今回、私たちが試したトラック専用のSR1 XXRの存在理由は一体どこにあるのだろう?(続く)

PHOTO/ラディカル・ジャパン

SPECIFICATIONS

ラディカル SR1 XXR

ボディサイズ:全長3860 全幅1560 全高1020mm
ホイールベース:―mm
車両重量:510kg
エンジン:直列4気筒DOHC16バルブ
総排気量:1340cc
最高出力:190PS
最大トルク:―Nm
トランスミッション:6速MT(シーケンシャル)
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前後ウイッシュボーン+調整式プッシュロッド
ブレーキ:前後4ポットキャリパー+240×25mmベンチレーテッドディスク
タイヤ:ハンコックレーシングタイヤ(スリック/ウエット)
車両本体価格(税込):1384万3500円