連載

GENROQ アストンマーティンアーカイブ

DB6(1965-1970)

なだらかなファストバックスタイルへ

エンジンは284PSを発生する3995cc直列6気筒DOHCユニット、変速機もZF製5速MTとDB5譲りとなっている。
エンジンは284PSを発生する3995cc直列6気筒DOHCユニット、変速機もZF製5速MTとDB5譲りとなっている。

実質的にDB4の正常進化型と言えたDB5が世界的な名声を築く一方で、アストンマーティンでは、中身を大きく変えた後継モデルである「DBS」の開発が進んでいた。その登場までの間をつなぐべく1965年のロンドン・ショーで発表されたのが「DB6」である。

基本的な構成はDB4からの踏襲となるが、シャシーとボディは大きく変更された。まずシャシーでは、強固なスチール製プラットフォームのホイールベースを2578mmと89mm延長。軽量だがコストが掛かるスーパーレッジェーラ工法のアルミボディを止め、プレス加工のアルミパネルに変更した。あわせてインテリアデザインこそDB5とほとんど変わらないものの、ボディスタイルはDB4、DB5のイメージを踏襲しながらも、なだらかなファストバックスタイルへとリデザイン。

またフロント下部にオイルクーラー用のインテークが加わったほか、テール周りの処理には、レーシングプロトタイプのDP212/214/215で試されたコードトロンカスタイルが採用されている。これらの改良によりDB6の直進安定性は大幅に向上。ボディの剛性もアップしている反面、車重自体はDB5からほとんど変わっていない。

高出力を発揮するヴァンテージ仕様

エンジンはDB5譲りの284PSを発生する3995cc直列6気筒DOHCユニットで、ZF製5速MTも同じ。しかしながらデビューと同時に発表されたトリプルツインチョークウェーバーを装着するヴァンテージ仕様は圧縮比を9.4へと高めるなどの改良が施された結果、329PSを発生するに至った。またオプションでボルグワーナー製3速AT、ZF製パワーステアリング、クーラーといった快適装備が用意されるようになったのもDB6の特徴といえる。

ボディバリエーションとしてはクーペのほか、オープンのヴォランテを用意。ただしヴォランテの最初の37台はDB5のシャシーにスーパーレッジェーラ工法のアルミボディを搭載した実質的なDB5ヴォランテで、現在ではDB6ヴォランテ“ショートシャシー”と呼んで区別されている。

そして1967年に後継車となるDBSが発売されて以降も併売されたDB6は、1969年にマイナーチェンジを受け、「DB6 Mk2」へと発展。とはいえ、その変更点はわずかなもので、エクステリアでは6J×15インチのワイヤースポークホイールを履くために前後のフェンダーアーチにリブが付くようになったこと、インテリアではシートとステアリングがDBSのものへと変更されたことが主な識別点だ。またメカニズム面では、オプションながらAEブリコ製の機械式燃料噴射装置も用意されるようになった。

DB4から続く一連のシリーズは幕を閉じた

ボディバリエーションとしてはクーペのほか、オープンのヴォランテが用意された。
ボディバリエーションとしてはクーペのほか、オープンのヴォランテが用意された。

DB6はMk1のクーペが1327台、ヴォランテが140台、Mk2のクーペが240台、ヴォランテが37台と生産台数はDB5を上回っているものの、その生産期間が倍以上の約5年に及ぶことを考えると、セールス自体はイギリスの景気後退を受けた形となり、決して好調なものとは言えなかった。

そんなDB6でもうひとつ欠かせない話題が、1969年にプリンス・チャールズ3世(現在のキング・チャールズ)の21歳の誕生日プレゼントとして、Mk2ヴォランテが寄贈されたことだ。以来、皇太子のプライベートカーとして愛用されたヴォランテは、2011年のウィリアム王子、キャサリン妃の結婚パレードにあわせてバイオエタノール燃料を使用できるように改造。今でもロイヤルファミリーの愛車の1台として、各所でその姿が目撃されている。

いずれにせよ、このDB6で、DB4から続く一連のシリーズは幕を閉じることになった。それがデイヴィッド・ブラウン時代のアストンマーティンの黄金期の終焉でもあったことがわかるのは、もう少し先になってからだ。

当初は「DB4シリーズ6」として開発を進められていたという「DB5」。

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