全世界のエンジニアを集めてアイデアを出し合う「エンジンフォーラム」ってどう?

清水:シリーズハイブリッド的にエンジンが“従”でモーターが“主”になると、エンジンは発電用だけならDOHCも要らないんじゃないか、OHVでもいいんじゃないか。そうすれば重心も下がるし、昔のコルベットみたいにね。
高平:超効率型エンジンのようなものをずっと開発してる人たちもいましたけど、アイデアは出るけど結果的になかなか実現してないですよね。
清水:“エンジンフォーラム”やってもいいかもね! 世には出ないけど、各社みんながアイデアを持ち合って、エンジンアイデアの出会い系サイトみたいな。
高平:本当にそう思います。


清水:気になるのはジャパンモビリティショー2025で展示していたカローラコンセプト。あんなに低いボンネットに、どんなエンジンが入るのだろうかと。また、燃料が変わると何かが起こると思う。今までと同じ燃料を使っている限りエンジンは変わらないから。
エンジンはもっとこうしたい、その時に燃料をこうしたい…というのがお互いにくるって言うんだけど、今のマツダのやり方は既存のエンジンに合わせている。トヨタがやっているカーボンニュートラルはエンジンは変えたくない、OEMは燃料メーカーに合わさせられているね。そうじゃなくて、次世代エンジンをイメージした時に次世代燃料っていうのは何?っていうような組み合わせ。だって分子構造を自由自在に作れるんだから、今まで苦労したところが解決できるかもだよね。
高平:いいですね。でも、年寄りのクルマ好きたちは、無鉛ガソリンになった時みたいにバルブは痛まないのか、シール材に悪影響はないのかとかいろんなことを言い出すのかもしれない。燃料潤滑はなくなるんじゃないかとか。そんな心配いらないってわ!って。

核融合発電の実用化、その後は軌道エレベーターで宇宙へ!?
清水:東海村に常温核融合の実験炉があり、この前1億度をプラズマで成功して実用化への道筋が付いて。それは世界の枠組みでやっているからロシア、アメリカ、中国も入っている。その東海村にある実験炉と同じ規模のものを中国は5基持っている。
編集部:えぇ~そうなんですか!?
清水:正しく言うと、ITER(国際熱核融合実験炉)に向けた実験炉で、1億度までプラズマで上げることに成功したという話。この技術は日本だけど、全体のシステム設計はフランスが中心になりロシア、アメリカ、フランス、イギリスで一緒になってやっている枠組みがある。それを東海村でやっているんだけど、その設備を中国は5個もやっている。で、そこで出てくるのがトリチウム(三重水素)という、放射性物質をあんまり出さない核融合。

高平:Googleも超小型原子炉を別会社でやっているじゃないですか。
清水: Microsoftのビル・ゲイツがそこに金を出している。
高平:あれはどういうやつなのか…? 意外にそういう人からお金が流れ込んできているんだなと思って。
編集部:核融合が実現したらゲームチェンジですよね。いろんなことがなかったことになりそうな感じがします。もうこれでいいじゃん!って。CO₂は出ないし、電気は使い放題だし。
高平:その頃には、人間はもっととんでもない欲深なことを考え出すでしょうね。
清水:量子コンピュータはかなり実用化されていて、NEXT Logistics Japan(ネクスト ロジスティクス ジャパン/2018年に日野自動車の子会社として設立)という日本のロジ会社も、カナダのD-WAVE社という量子コンピュータ会社と契約し、「NeLOSS(ネロス)」というシステムを使うとトラックへの荷物の積み方と配送の仕方のルーティンが100×100通りできちゃう。スーパーコンピュータだと時間もかかるけど、ネロスだと40分くらいで答えが来るんだって。
でも、かなり低温にするので電気を消費するらしい。そこでNTTは、光通信の技術を使う量子コンピュータを研究している。この分野はNTTが世界でもトップクラスとのこと。
編集部:へぇ~。

清水:3つ目は超伝導、送電ロスがなくなるので充電がもっと早くなる、みたいな。
高平:あとは、軌道エレベーターですね。それさえあれば人間は無尽蔵のエネルギーとHAL(ハル9000[Heuristically Programmed Algorithmic Computer 9000]/人工知能を備えた架空のコンピュータ)みたいなスーパーなコンピュータとで、核廃棄物みたいな危ないヤツを無重力で安全に上まで持っていって全部捨て放題、みたいになっちゃったら、どこまでやるかわかんないですよ。
ホンダのロケット開発テストで熊がいなくなる!?

清水:データセンターってものすごい熱出すんだよね。その冷却で損失があるから、大気圏外にクラウドを置いてマイナスの温度で冷やす。ホンダも北海道広尾郡大樹町でロケット上げて自動で戻る、っていう離着陸実験に成功したんだよね(2025年6月17日)。
編集部:ビックリしましたよね!

清水:話を聞いたらアレ、三部さん(三部敏宏/取締役代表執行役社長兼CEO)のこだわりなんだって。ジェットエンジンの制御は、テスラよりはるかに安くホンダはできる。
高平:ホンダはホンダジェットの時も途中で諦めたじゃないですか。
清水:ソレ、厳密には諦めたんじゃなくて、FAA(米国連邦航空局)で認可を取らないといけないから、諦めたように見せかけてアメリカのゼネラル・エレクトリック社と共同開発したHF120エンジンにしたんだけど、実は裏では全部ホンダがやっていた。
三部さんはジェットエンジンの制御にこだわっていたから、大樹町で離着陸実験、誤差37cm! バーン!って上げたロケットが37cmの誤差で戻ってくる(※到達高度 271.4m、着地位置の目標との誤差 37cm、飛行時間56.6秒)。
高平:あれこそ昔のSFアニメの世界。1機安くてもロケット1発、H3で150億円とか言っていましたっけ? 今は安くなったとは言うけど、1回ごとに150億円を打ちっぱなしで捨てるのとまったく違いますよね。
清水:ホンダはそのジェットエンジンの技術がホンダ第2期F1ターボエンジンにも繋がっていたと。

高平:ホンダはその開発をどこでやっていたんですか? 朝霞にあったんですか? シミュレーションだけでできるわけでもないでよね?
清水:北海道のテストコース(鷹栖プルービンググラウンド/北海道上川郡鷹栖町)の一番奥にジェットのラボがあるらしいよ。で、ラボでエンジンをかけた時には市内のスナックでも音が聞こえたっていう。「あ、また焚いてるな」って。あ、この話はものすごく盛ってるから!!
高平:「なんもなんも、時々やってくれると熊がいなくなってエエんだ!」っていう感じ!
清水:日産も、IHIに売っちゃったけどロケットやっていたじゃない。だからいろんな意味で、ホンダと日産ってイノベーションを起こすみたいな。トヨタはお金儲けを一緒懸命やっているけど、ホンダと日産はそれ以前に何かイノベーションを起こそう!みたいな社風があるじゃない。
高平:ホンダがずっと変なこと(!)をやってきたのは、大体誰かの“オレのプロジェクト”っていうのがあって、それが守られてきた。

清水:ホンダと日産って、負けるってわかっていてもやり出したら止まらない。トヨタは戦略的に勝つためにいろんなことを考えてくる。でも、日産やホンダは何か、ある人の暴走が許されちゃう雰囲気。お金を使うではなく、お金を作るイノベーションを熱心に取り組めばいいのにね。
高平:何かカッコいい、社是というか自分たちの合い言葉みたいなのが決まると、それが神格化されて、“技術の日産”みたいな感じになっちゃう。「世界一になるんだ」、「それが最大の目標だ!」、「オレたちは世界一になる。それがひいてはお客さんのためになる」って感じですかね。
清水:日産はカルロス・ゴーンが来たときに、トヨタ、ワーゲンを抜いて世界一になるっていう野望を抱きすぎたんだよ。だから決定的な失敗は、台数主義に走って「クルマの本質や中身はどうでもいい、インドや中国に売れ、どんどん作っていけ」と。「売れないんだったら安くしろ」と。もうそれしか言わなかった。でもコッチ側から見て「本当にそれでいいんですか?」と感じた。専門家集めてシミュレーションして、「これは絶対勝てないですよ」っていうレポートがあっても、ゴーンがやるって決めたらもう止められない。しかも周りには賛同する役員だけが集められちゃうから、本当に日産を想う社員は「本当にそれでいいんですか?」という声を出せない。出したらクビになる。
高平:昔の中国の五カ年計画みたいに偉い人が作った目標に合わせるために、数字を作って、下が少しずつ陰蔽とか改ざんをしていって、結局それが手に負えなくなった時には大失敗になって終焉するという。これはソ連(旧ロシア)も中国も経験してきたこと。
新エクストレイル発売、の前の異常事態とは?
高平:この間それに近い話があって。エクストレイルのビッグマイナーチェンジが発表されたときに某自動車系Web編集スタッフが「新古車のエクストレイル、走行距離5kmとか30kmが2000件くらい出てますよ!」と言っていた。すべて計画的に在庫一掃というか、何かそういうことをやったんだと思うんですよね。「新しくなりました、値段が上がりました、NISMO出ました…みたいなことを言わなくちゃいけない。これはディーラーも辛いよな」っていう話をしたことがあったんです。
清水:このマイナーチェンジは多分大失敗に終わるな…と思ったのは、この後に第3世代e-POWERがキャシュカイとローグに載って、エルグランドに載って、最後にエクストレイルにも載せてくるんだよね。何を今さら!って感じ。
高平:それが今の日産なんでしょうね。どこか中間から上の方でちょっとチグハグな。ちょっとボタンずれてますよっていうことですよね。第3世代e-POWERってもう既にキャシュカイか何かで名前を伏せて試乗会もやっているのに、後日もう1回「SUV試乗会です」って行ったら、「NISMOです」。それが現状でしょう。
【清水和夫プロフィール】
1954年生まれ東京出身/武蔵工業大学電子通信工学科卒業。1972年のラリーデビュー以来、N1耐久や全日本ツーリングカー選手権、ル・マン、スパ24時間など国内外のレースに参戦する一方、国際自動車ジャーナリストとして活動。自動車の運動理論・安全技術・環境技術などを中心に多方面のメディアで執筆し、TV番組のコメンテーターやシンポジウムのモデレーターとして多数の出演経験を持つ。自身のYouTubeチャンネル「StartYourEnginesX」では試乗他、様々な発信をしている。2025年も引き続き全日本ラリー選手権JN-Xクラスに「SYE YARIS HEV」にて参戦、シリーズクラス2位を獲得した。
【高平高輝プロフィール】
大学卒業後、二玄社カーグラフィック編集部とナビ編集部に通算4半世紀在籍、自動車業界を広く勉強させていただきました。1980年代末から2000年ぐらいの間はWRCを取材していたので、世界の僻地はだいたい走ったことあり。コロナ禍直前にはオランダから北京まで旧いボルボでシルクロードの天山南路を辿りました。西欧からイラン、トルクメニスタン、ウズベク、キルギス、そして中国カシュガルへ、個人では入国すら難しい地域の道を自分で走ると、北京や上海のモーターショー会場では見えないことも見えてきます。モータージャーナリスト清水和夫さんをサーキットとフェアウェイ上で抜くのが見果てぬ野望。
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自動車業界だけではなく、いろんな世界の技術、話題へもアンテナを伸ばし知識として考え蓄えてきたおふたりだからこそ、話題が尽きない今回の【清水和夫×高平高輝クロストーク】はいかがだったでしょうか? さて、次回はどんなトークになるのでしょうか…今からワクワクしています!













