25年連れ添う、3台目のハチロク。

AE86からZN6/ZN8まで幅広く手掛ける“テクノプロ・スピリッツ”。熊倉代表に「新旧ハチロクを所有しているお客さん、いますか?」ではなく、「いますよね?」と尋ねると、「うん、いるよ〜」と予想通りの返答。こうして紹介してもらったのが、AE86型3ドアレビンGTアペックスとZN8型GR86を所有する小野寺さんだ。

初めての愛車は3ドアトレノのブラックリミテッド。しかし、自宅の隣にあった工場が火災に見舞われ、その延焼によって愛車も全焼してしまった。その後、気持ちを奮い立たせて購入したのが前期型3ドアレビンだったが、今度は日光サーキットの走行会でクラッシュ。全損となり、廃車の道を辿ることになる。

「その後はGX81やRPS13を乗り継いだんですけど、やっぱりハチロクが楽しいよな……と思って。24歳の時に近所の中古車店で購入したのがこのクルマなんです。前期の赤黒ツートンだったので安かったですね」と小野寺さん。

こうして迎えた3台目のAE86との付き合いは、すでに25年に及ぶ。

購入当時の仕様は、アペックスN1マフラーとスピリッツ車高調が装着されている程度で、エンジンはノーマル状態だった。その後、オーバーホールを兼ねてチューニングが施され、ハイカム+4連スロットル仕様へと進化。しかし、フリーダムECUでの制御に満足できず、以前AE86のメンテナンスを依頼していたテクノプロ・スピリッツへ相談。LINK ECUによるフルコン制御へと変更された。

「断然乗りやすくなりましたね。街乗りでもグズることがありませんし、高回転域の伸びやパワー感も申し分ない。こんなに変わるなら、もっと早くやれば良かったと思いましたよ」と小野寺さん。

点火系はデスビを廃し、ダイレクトイグニッション化を実施。低中速域のトルク感向上や扱いやすさの改善に加え、高回転域での追従性向上にも大きく貢献している。

足回りはフロントにテクノプロ・スピリッツオリジナル車高調、リヤにはTRD製ダンパーを装着。スプリングレートはフロント8kg/mm、リヤ5kg/mmだ。ブッシュ類はクスコ製強化品へ打ち替えられ、リヤラテラルロッドもピロタイプに変更。ブレーキにはテクノプロ・スピリッツオリジナルパッドが投入されている。

ステアリングはカーボンスポークを採用したナルディのディープコーン。車両情報はステアリングコラム上に設置されたLINK MXSマルチモニターへ表示される。

シートはホールド性向上を狙い、運転席にレカロRS-G、助手席にレカロSR-3を装着している。

こうして快調な状態を手に入れたAE86。しかし小野寺さんの中には、以前から興味のあったドリフトへの思いが膨らんでいった。

「始めるなら今しかない」。

そう決意したのが7年ほど前。すでに40歳を過ぎていたが、そこから日光や茂原をメインに、時には筑波まで足を運びながらドリフトを楽しむようになった。また、コンディション維持のため週に1〜2回は必ず動かし、晴れた日は通勤にも使用している。好きなクルマだからこそ、できるだけ多く乗っていたいのだ。

「もちろん、このAE86は大切に乗り続けたいんです。だからドリフト専用に軽量化してロールケージを組んだハチロクをもう1台作ろうと思っていました。でも、中古車価格が上がりすぎてしまって、さすがに手が出せなくなりましたね」。

そんな中で、小野寺さんが走りを楽しむための新たな相棒として選んだのがZN8型GR86だった。

現代スペックで楽しむドリフトマシン!

「AE86に過度な負担は掛けたくない。でもドリフトは楽しみたい」。その答えとして小野寺さんが導き出したのが、ZN8型GR86(RZグレード)の増車だった。

購入したのは昨年3月。2023年式の中古車で、狙っていたホワイトボディの個体を手に入れた。

「最初はシルビアも候補だったんですけど、高すぎて断念しました。それならZN系かなと思って。価格だけならZN6も魅力的でしたが、調べるとZN8はボディ剛性がかなり高くなっているし、アフターパーツも充実してきている。そんな理由でZN8に決めました」。

ちなみにGR86導入に伴い、家族用として使っていたエルグランドは手放したという。子どもたちが成長し、家族揃って遠出する機会が減ったことも理由のひとつだった。

GR86を手に入れ、早速サーキットでドリフトしてみたが、「うまく走れなかったんですよ。慣れもあると思いますが、AE86より速いのは当然として、それ以上に感覚がまるで違うことを実感しました」と小野寺さん。

そこで、まずは運転席をブリッドのジーグ4に交換。前輪の切れ角不足も走りに大きな影響を与えていると考え、ショートナックルを導入した。また、デフにはクスコタイプRSを投入。熊倉さんいわく、「加速側も減速側もカム角55度の2ウェイ。イニシャルトルクを発生する内蔵スプリングも全て組んだ、ドリフト仕様のフルスペックだね」。

さらに、デフキャリアのリジッドマウント化やリヤサスメンバーカラーの追加、リヤロワアームのボディ側ピボット位置変更など、ドリフトを想定したメイキングが各部に施される。

吸気系や制御系まで含めてエンジンはノーマル。「それでも排気量が2.4Lあるので、1.6Lの4A-Gに比べたら速さも乗りやすさも十分です」と小野寺さん。また、高回転域を多用するドリフトでは油温が厳しく、エンジン保護のためにトラスト製オイルクーラーの追加で対策する。

マフラーはフルチタン製でセンターパイプから交換するサードTi-Z。メインパイプ径70→60.5φ、テール径115φ×2となる。排気効率の向上はもちろん、純正に対して10㎏近い軽量化(16.0→7.6㎏)も果たしている。

新旧ハチロクを同時に所有し、その日の気分で好きな方に乗れる環境は、多くのクルマ好きにとって理想そのものだろう。

それでも小野寺さんの中で、特別な存在は変わらない。

「速くて扱いやすくて快適なGR86も本当に良いクルマです。でも、自分にとって一番はやっぱりAE86なんですよ。もう40年前のクルマですから、ボディ剛性なんてGR86とは比べものにならないくらい低い。言ってしまえばグニャグニャなんですけど(笑)、それが逆に乗りやすいんです」。

3台のAE86を乗り継ぎ、その歴史はまもなく30年。長い年月をともに過ごしてきたからこそ、そのフィーリングは身体に深く刻み込まれているのだろう。

小野寺さんの「乗りやすい」という言葉に妙な説得力を感じたのは、きっとそのためだ。

●取材協力:テクノプロ スピリッツ 埼玉県川越市小中居945-1 TEL:049-235-4886

「なぜAE86は“ドライバーを育てるクルマ”と呼ばれるのか」谷口信輝がその理由を語る!

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