ストレートではなくコーナーで勝つ!
レーシングカーに迫る軽量&高剛性パッケージ
カタログスペックで235psのFA24を、吸排気系とECUチューンによって252psまで引き上げる。数値だけを見ればライトチューンの部類だが、このGR86の真価は最高出力ではない。軽快さと圧倒的なコーナリング性能を武器に、ハイパワーマシンすら追い回せる戦闘力こそが、このマシン最大の魅力なのである。

そのアプローチは、まさにレーシングカーそのもの。ベースには装備を簡素化したRCグレードを選び、内装を徹底的に取り払ったドンガラ状態からボディ補強と軽量化を実施。さらにオリジナルのドライカーボン製ボンネット、ルーフ、トランクを投入し、エアコンレス化やハーネスの間引きまで敢行した結果、車重は1200kgまで軽量化されている。

「サーキットを走り始めた頃はR35GT-Rに乗っていました。でも、夏場の全開走行は厳しいですし、維持費も高い。もっと気軽にスポーツ走行を楽しめるクルマを探していたところ、縁があって86/BRZレースに参戦することになったんです。その時にトライアルが製作した、軽量かつ高剛性ボディのサーキット仕様ZN6へ乗る機会がありました。あの意のままに動くレーシングフィールに、完全に魅了されてしまいましたね」と語るのはオーナーの大和さん。
しかし、コロナ禍によるレース開催中止なども重なり、86/BRZレースは満足に参戦できないまま終了。その後はGR86/BRZカップへと移行したため、大和さんはレース用カップカーと、自身の理想を追求するRCグレードという2台のGR86を購入した。
ところが、カップカーはわずか1戦のみで手放すことになる。
理由は明快だった。レース参戦には多くの準備や周囲の協力が必要となるうえ、ワンメイクレース用マシンならではの穏やかな動きよりも、自分が魅了されたレーシングフィールを存分に味わいながらサーキットを走り込みたいという思いの方が強くなったからだ。



こうして1000kmの慣らし運転を終えたRCは、完全なサーキット専用車へと進化。ボディ補強をさらに進めるとともに、トライアルがリリースしたばかりのドライカーボンパーツやリジッドマウント、さらに連続周回に対応するクーリング強化メニューなどを追加した。
完成後はストレートスピードやラップタイムだけを追い求めるのではなく、「いかにコーナーを速く駆け抜けられるか」をテーマに、走り込みを重ねている。

ワンオフ製作されたロールケージは、ピラー留めやサイドバーを追加した本格仕様。スポット増しによって鍛えられたボディ剛性をさらに高めるとともに、ドライバーの安全性もしっかり確保している。

ピラー留めのガゼットには、不要な部分を削ぎ落としながら強度を確保するパーリング加工を採用。ボディを完全に剥き出しにして製作するからこそ実現できるディテールだ。

また、人馬一体のハンドリングを実現するため、ロールケージはストラットタワーとも接続。バッテリーを避けながらバルクヘッドを貫通させるレイアウトとし、剛性向上を徹底している。

ドライビングシートには、軽量かつ高剛性なカーボンシェル構造のレカロ・プロレーサーRMS2600Aを採用。

足まわりはフルピロボール化に加え、デフマウントをリジッド化。さらに大容量デフカバーやミッションオイルクーラーも装備し、連続周回でも安定した性能を維持できるよう配慮されている。

フロントブレーキにはブレンボ・ピスタを投入し、制動力だけでなく、リニアなブレーキフィールも追求した。

サスペンションはHKSハイパーマックスRをベースに、軽量・高剛性ボディに合わせてトライアルが専用セッティングを施したもの。スプリングレートはフロント20kg/mm、リヤ22kg/mmとなる。

タイヤサイズは前後とも265/35R18。グリップ性能だけでなく、連続周回時の安定性も重視したセレクトで、取材時はプロクセスR888Rドリフトを装着していたが、メインはアドバンA050のMコンパウンドを使用している。

エンジンは軽量・高剛性ボディとのバランスを重視し、FA24は吸排気チューンとECUセッティングに留めた。ストレートでは突出した速さこそないものの、タイトコーナーでは格上マシンを追い回すだけの実力を発揮する。

「軽量で高剛性なマシンを自在に操りながらコーナーを駆け抜けるのは、本当に楽しいですね。ストレートの速さは過給機を付ければいつでも手に入ります。それよりも、自分の操作がそのままクルマの動きに現れるシビアな特性を乗りこなし、ドライビングスキルを高めていくことに夢中なんです」と大和さん。

現在は、左右合わせて30kg以上ある純正ドアをドライカーボン製へ変更する計画も進行中。1200kgまで軽量化されたGR86だが、さらなる進化の余地はまだ残されている。
快適性や耐久性も求められるストリートチューンドでは、なかなか到達できない究極の人馬一体感。その痛快なハンドリングは、一度味わえば誰もが虜になってしまうはずだ。
●取材協力:トライアル TEL:072-369-3539
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