ラスベガス最速を目指した、20年越しの進化形

ベガス流JDMは、派手さも速さもケタ違い!
SEMAショーの開催地として知られるラスベガスは、年中ネオンが輝く“眠らない街”。そんな土地柄もあってか、JDMチューニングのスタイルも実に派手で過激だ。今回紹介するランサーエボリューションⅨも、その空気感を全身で体現したような一台である。


SEMA会場でこのエボⅨを見つけた時、真っ先に目を奪われたのはラメ感たっぷりのキャンディグリーンで仕上げられたワイドボディ。そして、グリル越しに覗く巨大タービンだった。いかにも“アメリカンJDM”な仕様に見えたが、話を聞けば2006年の新車購入時から約20年にわたって進化を続けてきた、筋金入りの愛車だったのである。
オーナーはチャールストン・ペネーサ。フィリピンにルーツを持つアメリカ人で、ハワイで育った後にラスベガスへ移住した。若い頃からバギーやDC2インテグラを乗り回し、クルマ遊びに親しんできた人物だ。

その後、いとこのアーチーの影響もあってランエボのハイパワーチューンにどっぷりとのめり込んでいく。ちょうどエボⅧからエボⅨへモデルチェンジするタイミングだったこともあり、「ラスベガスで一番早くエボⅨを買った」と本人は笑う。購入後の半年ほどはノーマルで乗っていたものの、すぐに物足りなさを感じ、本格的なチューニング生活へと突入した。



現在の仕様は、まさに“ベガス流フルブーストスペック”。TrevTec Motorsportsが製作した2.1L仕様の4G63には、マンレー製94mmビレットクランクや圧縮比10.5:1のハイコンプピストン、GSC S3レースカムなどを投入。プレシジョン6266タービンを組み合わせたフロントマウント仕様とし、791ps・94.9kgmを発揮する。しかも9500rpmまで吹け上がる超高回転型だ。巨大なエキゾーストアウトレットがボンネットから突き出すレイアウトも、実にアメリカらしい。

制御にはハルテックElite 2500を採用し、サーキット走行にも対応できるハードなセットアップが施されている。


シャシーにも抜かりはない。APR製の片側45mmワイドボディをベースに、ボルテックスやセイボンのカーボンパーツを組み合わせて戦闘的なシルエットを構築。
足元にはボルクレーシングTE37SLの18インチホイールとBFグッドリッチ製ハイグリップタイヤを装着する。ブレーキにはロトーラ製6ポットキットを奢り、迫力あるワイドボディに見合う制動力を確保している。




室内は完全なレーシングスペック。6点式ロールケージやブリッドA.i.R.フルバケットシート、カーボネティックス製カーボンダッシュ、デジタルメーターなどを装備し、後席は撤去済み。それでもどこか“見せるJDM”としての華やかさを残しているのが、このクルマらしいところだ。

そして、このエボを象徴するのがネバダ州のナンバープレートに刻まれた「EVO2H8」の文字。“EVO TO HATE”、つまり「エボ嫌いなヤツらに見せつけるエボ」という意味が込められている。嫌いだと言いながら遅いクルマに乗っているなら、せめて俺のテールランプでも眺めていろ。そんな挑発的なメッセージなのだ。

現在47歳となったチャールストンは、4人の子供と孫にも恵まれている。本業はホテルオーナー専属のパイロットで、著名人をプライベートジェットで送迎することもあるという。しかし本人は驚くほど礼儀正しく、どんなお願いにも「Yes Sir!」と笑顔で応えてくれるナイスガイだった。

空ではジェット機を操り、地上では791psのエボⅨを全開にする。ラスベガス流JDMのDNAは、今日もフルブーストで受け継がれている。
PHOTO:Akio HIRANO/TEXT:Hideo KOBAYASHI

