
キーワードは「全席で90点」。運転席だけじゃない音づくり
「モデリスタ」と聞いて、多くの人が思い浮かべるのはエアロパーツやスタイリングだろう。トヨタ車をより上質に、美しく見せるブランドとして確固たるポジションを築いてきたが、いま同ブランドが新たな挑戦として力を入れているのが「車内空間」だ。
その取り組みを体感できたのが、国内最大級のオーディオイベント「OTOTEN2026」。モデリスタは同イベントへ初出展し、東京オートサロン2026でも話題となった「ALPHARD MODELLISTA CONCEPT」を展示。来場者は実際に車内へ乗り込み、その世界観を体験できる内容となっていた。
今回、編集部も前席・後席の両方でじっくり試聴する機会を得たが、率直な感想は「モデリスタって、こんなこともできるんだ」ということ。もちろんインテリアの質感やLED演出も見どころなのだが、最も印象に残ったのは徹底的に作り込まれた音響空間だった。
このコンセプトカーに搭載されているオーディオシステムは、基本的にカロッツェリアの市販モデルをベースに構成されている。特別なワンオフシステムではなく、市販製品を組み合わせながらDSP(デジタルシグナルプロセッサー)による細かな音響チューニングを施しているのが特徴だ。
開発時のテーマは「誰が聴いても心地良い音」。さらに今回はOTOTENに向けてチューニングを見直し、「全席で80点以上」だった完成度を「全席で90点」へ近づけることを目標にブラッシュアップしたという。
この「90点」という数字が実は面白い。
オーディオほど好みが分かれる世界はない。好きなジャンルも違えば、重低音が好きな人もいれば、ボーカルを重視する人もいる。つまり100点という正解は存在しない。
実はイベントの少し前、編集部はカロッツェリアの2026年新製品発表会も取材していた。そこで体験したのが、空間オーディオ対応ディスプレイオーディオと、新型サイバーナビ。それぞれ音づくりの方向性はまったく異なっていた。
空間オーディオは、映画館の客席にいるような立体感が魅力。一方、新型サイバーナビはボーカルの息づかいや楽器の余韻まで丁寧に描き出す高音質が印象的だった。
どちらが優れているという話ではなく、好みの違い。そのことを考えると、モデリスタが掲げる「全席で90点」という考え方は実に現実的だ。
特定の席だけを最高に仕上げるのではなく、運転席でも助手席でも後席でも、誰が座っても気持ちよく音楽を楽しめることを目指す。それがこのコンセプトカーの目指す方向性なのである。
実際に試聴してみると、その狙いは確かに伝わってきた。
前席でも後席でもボーカルは自然と目の前に定位し、音が左右だけでなく前後にも滑らかに広がる。スピーカーから音が鳴っているというより、車内全体がステージになったような感覚だ。
特に試聴曲として用意されていた米津玄師と宇多田ヒカルによる「JANE DOE」は印象的だった。ボーカルの存在感はもちろん、楽曲の中を音が移動していく様子まで自然に感じられ、クルマの中ということを忘れてしまうほど没入感が高い。

将来はディーラーで購入できる日が来るかもしれない
もちろん、このコンセプトカーは現時点では市販車ではない。しかし、取材を進める中で興味深い話も聞くことができた。
現在、このシステムをディーラーで購入できるパッケージ商品として展開できないか検討が進められているという。必要なオーディオユニット、そして最適なサウンドチューニングまで含めた状態で購入できるようになれば、「オーディオは難しそう」と感じていたユーザーでも導入しやすくなるはずだ。
まだ具体的な発売時期などは未定だが、実現すればモデリスタの新たな柱になる可能性も十分あるだろう。
エアロパーツで外観を美しく仕上げるだけではなく、車内で過ごす時間そのものを上質にする――。今回の体験を通じて、モデリスタが描こうとしている未来はそこにあるように感じた。
市販化まではもう少し時間がかかりそうだが、「モデリスタ=エアロ」というイメージは、近い将来、大きく変わることになるかもしれない。






【OTOTEN2026】
開催日:2026年6月19日(金)、20日(土)、21日(日)
開催場所:東京国際フォーラム



