セミドライブレーキとは聞き慣れない単語であるかもしれない。「ドライ」とは、油圧(=ウェット)によって制動力を伝えるのではなく、電動アクチュエーターでキャリパーを作動させる仕組みを指す。今回のAUMOVIOのシステムはフロントを油圧式、リヤはモーターでキャリパーピストンを直接作動させるEMB(Electromechanical Brake)とし、前後で異なるブレーキ方式を組み合わせていることから「セミドライ=ウェットとドライのハーフ構造」と称している。

しかし、AUMOVIOはこれを単純に「新しいブレーキシステム」として訴求しているわけではない。BEVの効率を考え、ブレーキディスクとパッドの間隔=エアギャップを意図的に大きくすることが大きなポイントだ。

xEVでは通常、減速要求のかなりの部分をモーターによる回生ブレーキで処理できる。そのため摩擦ブレーキには、必要なときだけ働き、普段は極力存在しないことが求められる。ところが油圧キャリパーは、ブレーキを解除してもパッドとディスクの位置関係を完全に自由にはできない。

Mission Efficiencyでは、フロント:MK C2と油圧キャリパー/リヤ:量産前段階のEMBというブレーキ構造としていて、前後とも量産車より大きなエアギャップを設定するとともに、リヤEMBではモーターによってエアギャップを能動調整という構成としている。つまり「ブレーキを踏んでいないときに、ブレーキを引きずらせない」ことを積極的に設計しているのだ。

EMBというシステムは単に「油圧を電動に置き換えたブレーキ」ではなく、電動ならではの付加機能を実現できるのもポイント。AUMOVIOによれば、コーナリング時にはエアギャップを拡大して引きずりを低減、危険を早期検知するとエアギャップを縮めて制動応答を速める、強い制動後にはキャリパーを意図的に開放して残留制動トルクを抑える——といったブレーキの待機状態そのものを電気的に管理できる構成になっていると訴求。さらに油圧配管もブレーキフルードも不要になるため、重量や車両パッケージングにもメリットがあるとしている。

「特に電気自動車においては、航続距離の延長とエネルギー消費量の削減を実現するため、エネルギー効率の向上は開発における重要な推進力の一つです。ブレーキシステムもまた、様々な形でその向上に貢献できます。フォルクスワーゲンは、120年にわたる開発経験を活かし、この目標達成に向けて取り組んでいます。フォルクスワーゲンの『Mission Efficiency』は、電気自動車におけるエネルギー効率向上への道のりが、まだまだ遠いことを示しています」
——AUMOVIOの安全・モーション事業部門責任者、ボリス・メルゲル氏——