今回の説明会では、かなり広範囲に具体的な技術目標が示された。
- 電池システムは共通化し、地域ごとに電池を選択
- 軽~Dセグメントまで共通思想でカバーするe-Axle
- 軽Aセグメント向けでは3 in 1と同サイズで6 in 1
- B~C~Dセグメント向けでは軽Aセグメント用に対して体積増約10%
- BEV/HEV共用のe 4WD
- モーターの重希土類フリー
- 48V P2ハイブリッド
- シリーズHEV → REEVライト/PHEVへの展開
- 次世代DITCエンジンで熱効率50%を目標
- 2030年に向けて100kg軽量化
- Central Zone ECUでコスト30%、重量15%低減
- DMS/OMSカメラをADASへ統合
これらから読み取れるのは「一つの革新的技術で勝負する」のではなく、技術を共通化・小型化して複数の車格へ展開する設計思想。商品バリエーションを軽自動車および小型車に特化しているスズキらしい戦略と感じる。「共通化」という視点で今回の発表を眺めてみよう。
電池は「共通システム+地域ごとの電池」
スズキは電池パック、熱マネジメント、充放電制御などの電池システムを自社開発して共通化する。いっぽうで、電池セル/電池そのものは日本、インド、欧州など地域・用途に応じて最適なものを選ぶとしている。つまり、車両側の電池システムは共通化/電池そのものは地域最適化という構造だ。
熱マネジメントと充放電制御は各社の電動車/電池戦術における秘中の秘であり、いわば最重要技術のひとつ。電動車における最大のコスト要因であるリチウムイオン電池セルの効率を徹底的に絞り出し、かつ耐久性と両立させる技術で、商品性を大きく左右する。さらにパック化は「いかにスペース効率を高めるか」「どうやって上手にセル/モジュールを冷やすか」ということを実現せねばならず、腕の見せ所。水冷なのか空冷でまかなうのか。万一の衝突時の強度確保や漏電防止のためにパックをどのような設計にするか。軽くするための工夫をどう施すか。これらを「どのクルマにおいても共通の言語とする」ことで、ぶれないxEV設計思想にするのが目的だろう。
さらに「バッテリーリーン」として、必要十分な容量に抑え、小さな電池で必要な性能を成立させることを明確にしている。実際の日本の自動車の使われ方を冷静に眺め、さらに軽自動車や小型車という小さなクルマであれば「これくらいあれば」という落とし所がある。「丁度いい」とスズキが綴っているとおり、必要以上に大容量の電池を搭載するのではなく、車格や用途に応じて必要十分な容量に抑える考え方だ。
いっぽうでセル/モジュール調達は地域ごととしている。先述のとおり非常に高価なリチウムイオンセルは、超精密機械であり万一の際には発火の危険性もある。電池システムは共通/セルは現地調達というのは、いってみれば電池システムという「レシピ」は共通化しながら、セル/モジュールについては各地域の調達環境や車両用途に応じて選択できる構造にするわけだ。
e-Axleは「3 in 1 → 同じサイズで6 in 1」

軽セグメントのBEV『e SKY』用の3 in 1 e-Axleについて、スズキは「自社調べで最小サイズ」と説明。そして次世代の軽・Aセグメント用では、3 in 1と同じサイズで6 in 1へ進化させるとしている。さらにB~Cセグメント向けでは、軽Aセグメント用から体積増を約10%に抑えるとした。単純に「大きなクルマには大きなe-Axle」を作るのではなく、小さな基本ユニットを核に機能を統合し、容量・出力だけを拡大していくというモジュール戦略だ。
ちなみにx in 1における3とは[モーター/減速+差動機構/インバーター]。いっぽうでスズキは「6」の具体的な機能構成までは資料で明らかにしていない。いずれにせよ“エンジンルーム”に収められているパワートレイン各種部品をひとつに統合することで、小型軽量化や部品点数削減、パッケージ効率の向上などが実現する。それぞれに筐体が必要だった分離型に対して、ひとつのケースの中にすべて臓物を収められればよくなるからだ。
ならば6といわずもっとひとつにしてしまえばいいではないかと思われるかもしれない。事実、各サプライヤーではその動きが非常に盛んで、理由は「多くを自社製品でまとめることができ制御が容易になる」「技術の囲い込みが実現する」などがあるのだが、当然ながらひとつの筐体に機能が異なる装置をひとまとめにするとは技術的に困難を極め、電磁ノイズのキャンセルや誤動作防止、NVHの調整、重量化傾向による比剛性の確保など、一朝一夕には実現しない。スズキは、小さく軽いクルマ向けに極限まで小さく仕立ててくるのだろう。
「電動化の全部入り」ではなく、48V P2~REEVライトまで
ハイブリッドシステムについても発表があった。軽には48V P2の新システムを展開し、小型車ではシリーズHEVを用意。さらにそれをベースに外部充電機能を追加して「ライトなレンジエクステンダー」=REEVライトへ進化させる構想も明らかにしている。
今回発表された技術群のなかで、実際の商品展開を考えたときに最も気になるのが48V P2だ。
48V P2システムとはエンジンとトランスミッションの間にモーターを介在させ力行回生するシステムで、つまりエネチャージとは異なる機械構成。現在のスズキの軽自動車は変速機としてほぼ全数をCVTとしているが、48V P2ハイブリッドでこれをどのように仕立ててくるのか個人的に興味が尽きない。
CVTにモーターの組み合わせとなると「無段変速に変速機を不要とする原動機」で重複するイメージがあるが、じつはモーターにも得手不得手領域が明確に存在し、全速度域を単一の減速比だけで最適化するのは難しい。モーターの広い使用領域を利用して、変速機を省くこと自体をメリットとして成立させているわけで「発揮できる出力」には問題ないけれどじつは効率がガタ落ち——という領域が存在する。電費低減を強くマーケットや規制から求められているBEVにおいてはここは看過できず、変速機の導入を検討するケースも少なくない。
軽自動車におけるハイブリッド、しかも48Vならばそこまでパフォーマンスを求める声は大きくないかもしれないが、低電圧と侮ることなかれ、発進時の瞬間アシストの威力は絶大で、これをCVTでトルク増幅したらさらに——という期待は個人的に大きい。48V P2モーターの発進アシストとCVTのトルク増幅をどう組み合わせるのか。ここは今後の技術詳細を楽しみに待ちたい。
なお、シリーズハイブリッドについては、ハイブリッドトランスアクスルに「EV向けeAxleで確立した技術をシリーズHEVで展開」と説明があった。当然ながらBEVのe-Axleとシリーズハイブリッドトランスアクスルはまったくの別物だから、ここでいう「EV向けeAxleで確立した技術」が具体的に何を指すのかは、今後の詳細発表を待ちたいところだ。
