シャオミのような1000ps超を追いかけるのではなく、800ps前後に抑えられる可能性も
BMWが開発を進める次世代「M3」のEVモデルが、ニュルブルクリンクで高速テストを続けている。今回目撃されたプロトタイプは、コーナーで豪快にテールを流す走りを披露。そのすぐ後ろには、中国シャオミ(Xiaomi)の高性能EV「SU7 Ultra」の姿もあった。

次世代M3 EVは2028年の登場が予想されている。電動化によって、M3を象徴してきたエンジンサウンドや4本出しエキゾーストは姿を消すことになるが、BMW Mが重視している「操る楽しさ」まで失われるわけではなさそうだ。

ニュルブルクリンクで捉えられたプロトタイプは、コーナー立ち上がりでタイヤを激しくスピンさせながらドリフト。EVらしい強大なトルクを使い、かなり積極的に車体を振り回している。
そして興味深いのが、その背後を走っていた黄色いセダンだ。中国シャオミのSU7 Ultraである。
SU7 Ultraは最高出力1547ps(1138kW)を発揮するモンスターEVだ。2025年にはニュルブルクリンクで7分04秒96を記録し、一時は量産EVの最速記録を保持していた。その後、ヤンワン「U9 Extreme」やマンタイ仕様のポルシェ「タイカン ターボGT」がさらに速いタイムを記録している。
もっとも、BMWがM3 EVで目指しているのは、単純な最高出力競争ではないようだ。
現時点でM3 EVの最高出力は明らかになっていない。BMWが開発した「Vision Driving Experience」では1000kW(1360ps)という途方もない出力が示されたが、これがそのまま市販M3に採用される可能性は低い。
BMW M部門を率いるフランク・ファン・ミール氏も、1000psという出力について「制御できないので意味がない」との考えを示している。
そのため、市販型M3 EVはシャオミのような1000ps超を追いかけるのではなく、800ps前後に抑えられる可能性もある。
それでも現在の高性能EVと比べれば十分に強力だ。例えばヒョンデ「IONIQ 5 N」は650psを発揮するが、実際の速さに不足を感じるようなモデルではない。BMWがさらに高い出力を与えるとしても、重要になるのは数字そのものより、そのパワーをどのように使わせるかだろう。
次世代M3 EVでは4基の電気モーターを搭載し、後輪駆動と全輪駆動を切り替えられるシステムの採用が予想されている。さらに各輪の駆動力を緻密に制御するトルクベクタリングを組み合わせ、コーナリング性能を高めるとみられる。
これは、単に直線加速のために4モーターを使うのとは少し意味が違う。4輪それぞれの駆動力を自在に変えられれば、旋回時の姿勢を積極的に作ることができる。今回ニュルで見せた豪快なドリフトも、そうした開発の方向性を示すものといえそうだ。
初代E30型M3も、当時もっともパワフルなクルマだったわけではない。それでも軽快なハンドリングとドライバーが操る楽しさによって、M3というブランドを築いた。
1500psを超える中国製EVが登場するなか、BMWはあえて最高出力競争から少し距離を置き、電動化されても「M3らしく曲がるクルマ」を作ろうとしている。ニュルブルクリンクでタイヤスモークを上げるプロトタイプを見る限り、その方向性はかなり明確になってきたようだ。















