2.4L+RX6タービンで約400馬力!
5000rpmから炸裂する往年のドッカンターボ
走り屋ブーム真っただ中の時代、若者たちから人気を集めたR32スカイラインGTS-tタイプM。絶対王者であるGT-Rの影に隠れがちだが、FRターボならではの操る楽しさがあり、当時は数多くのチューニングカーが生み出された。

そんな時代から30年以上が経った今、このタイプMを楽しんでいるのが、今年24歳になるちゅんさんだ。幼い頃からAE86に乗る父親や、R32 GTS-4に乗っていた母親の影響を受けて育ち、現在は自動車整備士として働いている若きオーナーである。
21歳の時に手に入れたタイプMは、前オーナーによって作り込まれた昔ながらのフルチューンド。最初からチューニング済みの個体を選んだのは、自分でイチから仕上げるよりもコストを抑えられると考えたからだという。現在も“現状維持”をテーマに、往年のチューンドらしい味わいを残しながら楽しんでいる。

心臓部に収まるのは、東名パワード製鍛造ピストンやRB26純正クランク&コンロッドで強化したRB20改2.4L仕様。これに東名パワード製ポンカムとIHI製RX6タービンを組み合わせ、最大ブースト圧1キロ時に約400psを発揮する。
FD3S純正インジェクターやR35純正エアフロ、インタンク式燃料ポンプを採用し、エンジンマネージメントにはECR33用パワーFCを使用。GT-R純正フロントバンパーの奥にはトラスト製RB26用インタークーラーを収め、KOYO製3層ラジエターやHKS製オイルクーラーも投入するなど、クーリング対策も抜かりない。

ただし、RX6タービンは風量が大きいこともあってか、フルブーストに達するのは5000rpm付近と遅め。そこから一気にパワーが押し寄せ、ウエストゲートからは荒々しい大気開放サウンドが響き渡る。
「本当にドッカン。フルブーストが掛かると、1速でも2速でも簡単にリヤが滑ります。でも、そんなところも楽しいんですよね」と、ちゅんさんは笑う。
街乗りのしやすさやサーキットでの速さを求めるなら、低回転からトルクが立ち上がる最新ターボの方が扱いやすいだろう。しかし、5000rpmを境に豹変するような加速フィールや荒々しいサウンドは、まさに昔ながらのターボチューンならでは。アドレナリンが湧き出るような刺激という点では、往年のチューンドに軍配が上がる。

エクステリアも現代風にアップデートするのではなく、当時のR32チューンドらしい雰囲気を大切にしている。フロントにはニスモダクト付きGT-R純正バンパーと社外カーボンリップを組み合わせ、ダクト付きFRPボンネットや小型リヤウイングを装着。ストリート仕様らしく、R32本来のシルエットを崩さないシンプルなフォルムにまとめている。

購入時には18インチのBBSを履いていたが、「タイプMには少し大きい」と感じて17インチへ変更。一時はボルクレーシング・グループCを履いていたものの、破損してしまったため、現在はBCNR33純正ホイールを装着している。平成2年式という車両の年代感にもよく似合うチョイスだ。
リヤビューでは丸型4灯テールがお気に入り。「電球ならではのぼんやりした光り方がいい」という言葉にも、当時の雰囲気を大切にするちゅんさんのこだわりが表れている。


コクピットにも懐かしいアイテムが並ぶ。ステアリングは、父親が新品のまま保管していた当時モノのパーソナル製3本スポークタイプ。その奥にはニスモ製フルスケールメーターを収め、デフィ製追加メーターや東名パワード製A/F計も装備する。シートはレカロSP-Gのカーボンシェルタイプだ。

さらにマフラーには、今となっては懐かしいHKSスーパードラッガーをチョイス。大径テールも含め、随所に往年のチューンドR32らしい空気感が漂っている。
そんなタイプMを、ちゅんさんはファミリーカーとしても活用している。生まれたばかりの愛娘を助手席に乗せて買い物へ出掛けたり、高速道路で少しアクセルを踏み込んだりと、30年以上前のクルマとは思えないパワフルな走りを存分に楽しんでいる。

とはいえ、年代モノのフルチューンドだけに、それなりのトラブルにも見舞われてきた。入手して間もなくクランクプーリーやクランク角センサーが故障し、さらにミッションブローまで経験している。
「もともとOS3速クロスが入っていたのですが、古いタイプだったので、破損した部品だけを交換しようとしても互換性がありませんでした。やむを得ずクロスギヤ一式を新品で組み直して復活させましたが、修理費用は掛かりましたね」。
自動車整備士の資格を持つメカニックだけに、自分で対処できる修理やメンテナンスは自ら行ってきた。子供が生まれてからはショップに任せることも増えたそうだが、クランク角センサーやパワートランジスターなどの予備パーツを確保し、次のトラブルにも備えている。

ところで、なぜ24歳の若者が、自分よりも年上のR32、それもタイプMを相棒に選んだのだろうか。
「自分が子供の頃、母親がR32に乗っていたんです。当時の記憶は写真の中にしか残っていませんが、もう一度母にR32を運転してもらいたいという思いがあって、21歳の時にこのタイプMを手に入れました」。

実際に母親にも一度ステアリングを握ってもらい、その念願は叶った。ところが、返ってきたのは「なんでこんな古くて壊れそうなクルマに乗っているの?」という、意外にも手厳しい言葉だったそうだ。
かつて母親が子育てのために手放したR32を、その息子が大人になって再び選び、今では自身も父親となって愛娘を乗せて走っている。同じ個体を受け継いだわけではない。それでも、R32への思いとクルマを楽しむ気持ちは、確かに親から子へと受け継がれている。
5000rpmから炸裂するRX6タービンも、17インチの足元も、ぼんやりと光る丸型4灯テールも、ちゅんさんにとっては残していきたいこのクルマの“味”。数々のトラブルと向き合いながらも、往年の姿を維持して走り続ける。その理由が、この一台を見ていると少しだけ理解できた気がする。
PHOTO:近藤浩之(Hiroyuki KONDO)/REPORT:石川大輔(Daisuke ISHIKAWA)
