水冷式の熱ダレを根本から解消!
空冷インタークーラーでVR30DDTTが覚醒
405ps&48.4kgmを発揮するVR30DDTTと、上質なセダンボディを組み合わせることで、ハイレベルなグランドツーリング性能を実現したスカイライン400R。ノーマルでも完成度の高い走りを誇る一台だが、チューニングによって引き出せるポテンシャルにも注目したい。


吸排気系がノーマルのままでも、ECUチューンによるブーストアップで約500psを狙うことができ、メタルキャタライザーやマフラーによって排気効率を高めれば、530ps級へのステップアップも可能。そんな400Rにいち早く注目し、パフォーマンスアップを積極的に進めてきたのがフェニックスパワーだ。
ブーストアップ仕様を熟成させた後は、扱いやすさとパワフルさを両立するオリジナルハイフロータービンを開発。最高出力580psを発揮する第二形態へと進化させてきた。しかし、さらなる性能向上を目指すうえで、避けて通れない課題があった。

「RV37が搭載するVR30は非常に伸び代のあるエンジンですが、チューニングを進めていくと、水冷インタークーラーの熱ダレが安定したパフォーマンスを引き出すうえでのネックになります。これまではオリジナルの大容量ヒートエクスチェンジャーで吸気温度の上昇を抑えてきましたが、根本的な対策を施すなら、インタークーラーの空冷化がベスト。同じVR30DDTTを搭載するRZ34で大きな効果が得られたこともあり、トラストにRV37用空冷インタークーラーの開発をリクエストしました」と話すのは、フェニックスパワーの横山さん。

そこで今回は、2027年春の発売に向けて最終チェックが進められているトラストの「GReddyインタークーラーキット RV37 T29F」を、開発に協力するフェニックスパワーの400Rでいち早くチェックした。
キットの基本構成は、先行してリリースされたRZ34用に近い。純正の水冷インタークーラーを撤去し、フロントバンパー内に大型の空冷コアを設置する方式だ。ただし、RV37はRZ34よりもバンパー内部のスペースが限られるため、専用レインフォースやアルミ製ウォッシャータンクを新たに用意。大径パイピングの取り回しにも工夫を凝らすことで、大容量コアを収めるスペースを確保している。

採用されたのは、RZ34用と同じクロスフロー式のタイプ29コア。サイズは高さ302mm、幅710mm、厚さ100mmで、ブーストアップ仕様はもちろん、タービン交換によるハイパワー&ハイブースト仕様にも対応する。
もっとも、開発は最初から順調に進んだわけではない。RZ34では、インタークーラーの空冷化によってブーストの立ち上がりが約400rpm遅くなったというデータがあった。そこでRV37では、グランドツアラーとして重要なレスポンスをできるだけ維持するため、当初は大容量化よりも配管長や加工範囲を抑えることを優先。左右分割式のターンフローコアを採用して空冷化を試みたという。
ところが、完成したプロトタイプでセッティングを進めたところ、吸気温度は62℃まで上昇。大容量ヒートエクスチェンジャーを組み合わせた従来の水冷式を下回る結果となったため、この方式は断念された。
そこで開発方針を転換し、RZ34と同じクロスフロー式のタイプ29コアを採用。十分な冷却容量を確保しながら、RV37の車体に適したレイアウトを追求することになった。その効果は、パワーチェックでも明確に現れた。

外気温37℃という厳しい条件にもかかわらず、吸気温度の上昇は40℃までに抑制。ハイフロータービンと空冷インタークーラーの組み合わせによって、584ps&81.09kgmをマークしたのだ。
さらに、空冷化に合わせてECUのリセッティングを進めた結果、最高出力は593.6ps、最大トルクは82.9kgmにまで向上。吸気温度を低く抑えられたことで点火時期をさらに煮詰められたことが、パワーアップにつながっている。
また、吸気温度の上昇に伴って介入するトルクセーブを抑えられることも大きなメリットだ。単に一発の最高出力を伸ばすだけでなく、連続した高負荷走行でも安定してパフォーマンスを引き出せる環境を整えられるわけだ。

もちろん、インタークーラー本体以外の作り込みにも抜かりはない。水冷インタークーラーの撤去によって生まれたエンジン上部のスペースには、アルミ製のインテークパイプを左右対称にレイアウト。鈍い輝きを放つパイピングによって、エンジンルームは一気にチューンドカーらしい雰囲気へと変貌している。
なお、干渉する部分だけをカットすれば、純正エンジンカバーも装着可能。見た目の仕上がりにも配慮されているのが嬉しいところだ。

吸気系にはトラストのエアインクスを採用し、専用ヒートシールドをセット。エンジンルーム全体が高温になりやすいVR30DDTTだけに、熱気を吸い込まないための対策も徹底している。

また、アルミパイピングにはエアフロセンサーやブローオフバルブを適切に配置。RZ34用では純正ブローオフバルブを継続使用していたが、RV37用ではリターンタイプの強化品が組み合わされている。

バンパー内には、専用レインフォースを介してタイプ29コアを搭載。純正エンジンオイルクーラーは、クリアランスの確保と冷却性能の両立を図るため、取り付け角度を変更している。

空冷化によって干渉するウォッシャータンクも、注入口を含めた専用品へと交換。こうした専用設計のパーツを用意することで、大容量インタークーラーを無理なく収めている。

フロントバンパーの開口部からはコアがわずかに覗く程度で、400Rらしい落ち着いたフロントマスクを崩していない点も魅力だ。
「ノーマルインジェクターは計算上640psあたりがリミットになりますが、グランドツアラーとして肩肘張らずにRV37を楽しむなら、ハイフロータービンと空冷インタークーラーの組み合わせがパワーチューンの最終形態になりそうです。RZ34よりホイールベースが長いとはいえ、FRですから、パワーばかりを引き出しても乗りにくくなってしまう。快適性はそのままに、扱いやすさと頼もしさを高い次元で両立した一台に仕上げたいですね」と横山さん。

さらに、空冷インタークーラーとともに注目したいのが、RV37で新たに開発がスタートしたミッションコンピュータのチューニングだ。
400Rに搭載される7速ATは、サーキット走行をしなければATF温度も問題になりにくい一方、パワーアップを進めるほど、リニアさに欠けるシフトフィールが気になってくるという。
現在は未知のマップも多く、解析を進めている段階だが、シフトスケジュールや油圧、トルクマップなどの最適化に着手。エンジンのパワーアップに見合ったトランスミッション制御の実現を目指している。

ちなみに、この空冷インタークーラーキットは400Rだけでなく、300GTにも装着可能。純正ではインタークーラー用の水冷ポンプが400Rに2基、300GTに1基という違いがあるが、空冷化によってその違いも解消されることになる。発売は2027年春を予定しており、価格は未定。装着時にはエーミングとECUのリセッティングが必要となる。

高いグランドツーリング性能を備えた400Rの魅力を損なうことなく、600ps級のパフォーマンスを安定して引き出す。空冷インタークーラーは、VR30DDTTの潜在能力をさらに解き放つ重要なアイテムとなりそうだ。
●取材協力:フェニックスパワー 福井店:福井県坂井市丸岡町朝陽2-317 TEL:0776-67-2980/京都店:京都府久世郡久御山町佐古外屋敷37-2 TEL:0774-48-1157
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