インチアップが燃料消費を悪化させる主な要因は重量と接地面積の増加にある

タイヤとホイールの直径を拡大するインチアップは、原則として車両の燃費性能を低下させる。
その理由は、車輪全体の重量増加と、路面との接地面積拡大に伴う転がり抵抗の増加という2つの物理的な変化が生じるからである。ホイールは金属製であり、ゴムと空気で構成されるタイヤに比べて比重が大きい。そのため、タイヤの扁平率を下げて外径を同一に保ったとしても、金属部分の体積が増えることで車輪全体の重量、すなわちバネ下重量は重くなる傾向にある。バネ下重量の増加は、車両の加速時や発進時において、より多くのエンジントルクを必要とするため、結果として燃料の消費量を増加させる。
具体的な例を挙げると、純正状態で15インチのホイールが装着されている車両に対し、17インチのホイールへ変更を行った場合を想定する。一般的な鋳造ホイールを使用した場合、1本あたり数キログラムの重量増加が発生することが多い。さらに、インチアップを行う際には、操縦安定性の確保やホイールのリム幅との適合を目的として、タイヤのトレッド幅を広げるのが一般的である。タイヤの幅が195サイズから215サイズへと広がれば、路面と接触する面積が増加し、走行時に発生する摩擦抵抗が大きくなる。この転がり抵抗の増加も、エンジンに余分な負荷をかける原因となる。
したがって、金属部品の重量増加とタイヤの幅広化による転がり抵抗の増加という構造上の理由により、インチアップを行った車両の燃費性能は、純正状態と比較して低下することが避けられない。
外径の誤差や空気圧の管理不足が見かけ上の燃費悪化を引き起こす

インチアップに伴うタイヤ外径の変化や、不適切な空気圧管理も、燃費性能の悪化や燃費数値の誤認を招く原因となる。
これは、タイヤの外周長が変化することでスピードメーターおよびオドメーターに誤差が生じることと、低扁平タイヤ特有の空気圧管理の難しさが関係しているからである。車両のメーター類は、純正タイヤの外周長を基準に速度や走行距離を算出している。インチアップを行う際は外径を変えないことが前提となるが、選択するタイヤサイズの組み合わせによっては、数ミリから十数ミリの誤差が生じることがある。
たとえば、インチアップによってタイヤの外径が純正状態よりも大きくなった場合、タイヤが1回転して進む距離は長くなる。しかし、車両のコンピューターは純正タイヤの外径を基準に計算を行っているため、実際の走行距離よりもメーター上の走行距離が少なく表示される。燃費は走行距離を消費燃料で割って算出されるため、走行距離が短く計測されることで、見かけ上の燃費数値が悪化することになる。また、インチアップ時にはタイヤ内の空気容積が減少するため、車両指定の空気圧ではなく、エクストラロード規格などの高い空気圧設定が要求される場合がある。これに気づかず低い空気圧で走行を続けると、タイヤが過度にたわんで転がり抵抗が急増する。
正確な燃費を維持し、正しい数値を把握するためには、外径誤差を最小限に留めるタイヤサイズの選定と、装着するタイヤの規格に合致した適切な空気圧管理を継続して行うことが必須条件となる。
燃費低下を抑えるには軽量部品の選択とエコタイヤの活用が有効

インチアップによる燃費性能の低下は物理的な必然であるものの、部品の選択によってその悪影響を最小限に抑えることは可能である。
その理由は、ホイールの製造工法やタイヤのコンパウンド技術によって、重量増加と転がり抵抗の増加というマイナス要因を軽減できるからである。市場には様々な製法や素材を用いた自動車部品が存在しており、それぞれの特性を理解して組み合わせることで、性能の変化をコントロールできる。
有効な対策の例として、鍛造工法で製造されたアルミニウムホイールの選択が挙げられる。鍛造ホイールは、金属に高い圧力をかけて成形するため、一般的な鋳造ホイールに比べて金属組織が密になり、薄くても高い強度を確保できる。これにより、インチアップに伴うバネ下重量の増加を抑制することが可能となる。また、タイヤの選択においては、低燃費タイヤとしてラベリング制度で認定されている製品を選ぶことが望ましい。最新のシリカ配合技術などを採用したエコタイヤは、トレッド幅が広くなった場合でも、走行時の発熱を抑えて転がり抵抗を低減する効果がある。
ホイールの大径化という構造上の不利益に対して、軽量な鍛造ホイールと転がり抵抗の少ないエコタイヤを組み合わせることで、燃費への悪影響を相殺することが可能である。部品の特性を考慮した適切な製品選びを行うことが、カスタマイズと燃費維持を両立するための鍵となる。