連載

MotorFan Bikes 1000kmガチ試乗

スズキSV650 ABS……803,000円

前任のグラディウスでは独創的な異形ヘッドライトを採用したスズキだが、現行SV650では原点回帰という意識で、オーソドックスな丸型ヘッドライトを採用。ちなみにバルブは昔ながらのH4。

■ライディングポジション ★★★☆☆

785mmのシート高は初代SV650やグラディウス650と同じで、過去にその2台を体験した際は、乗車姿勢に違和感はなかったのだが……。現行SV650は着座面が妙に低い印象。身長182cmの僕が跨ると、リラックスできる上半身に対して、下半身はタイトで、膝と足首の曲がりがキツい。純正アクセサリーとして、着座面が800mm前後のハイシートを設定して欲しいところである。なお海外のみで販売された、2003~2015年型SV650のシート高は800mmだった。

ライポジに対する違和感はさておき、シート高を近年のミドルクラスでは低い部類となる785mmに設定したおかげで、SV650は足つき性が良好。両足がベッタリ接地するには170cm以上の身長が必要だが、ガソリンタンク後端とシート前部がギュッと絞り込まれているうえに、サイドカバーの出っ張りが皆無なので、身長が160cm前後のライダーでも大きな不満は感じないようだ。

■タンデムライディング ★★★★★

タンデムライディングは好感触で、リアの重量増でハンドリングが大きく変化しないだけではなく、加減速で後部のライダーが揺すられる感も希薄。不思議に思って、タンデムライダーを務めた富樫カメラマンに聞いてみると、以下の答えが返って来た。「ステップの位置が絶妙だから、減速時にしっかり踏ん張れるんだよ。欲を言うなら、加速用としてグラブバーがあると嬉しいけど、シートベルトでとりあえずは対応できる。座面が小さいわりに、尻の落ち着きも悪くなかった」 なおグラブバーをSV650に装着する場合は、アフターマーケットパーツから選択することになるが、純正アクセサリーのトップケースキャリアにはグラブバーの機能が備わっている。

■取り回し ★★★★☆

停車時の傾きが大きいので、サイドスタンドを払って車体を直立させるときは適度な手応えを感じるけれど、押し引きで使う力は現代のミドルクラスとしては平均的。ただし、ヘッドパイプ後部のフレーム幅が広いため、最小回転半径は、市場でライバルとなるヤマハMT-07:2.7mやカワサキZ650:2.6mより大きい3.0m。なお低めのセパハンを採用するSV650Xは、さらに大きい3.3m。

■ハンドル/メーターまわり ★★★★☆

ハンドル幅はライバル勢より狭く(左右グリップの端~端は約680mm)、絞り角とタレ角は少な目。バックミラーの視認性は非常に良好なのだが、スリムなVツインの魅力を強調するなら、もう少し幅が狭くていいような気がする。メーターはシンプルなモノクロLCDで、時計やギアポジションの表示が大きいこと、ウインカーインジケーターが最上段に設置されていることが、僕としては好感触。バーグラフ式燃料残量計の上部には、航続可能距離、平均燃費、瞬間燃費などを表示することが可能。

■左右スイッチ/レバー ★★★☆☆

細部のデザインは変わっているものの、左右スイッチボックスの構成は大昔から継承されて来たスズキの定番で、操作感は至って普通。軽快なハンドリングを意識してか、バーエンドに備わる振動対策用のウェイトは小さめ。

握り心地が絶妙のグリップラバーは、GSX-Rシリーズと共通。始動装置にはワンプッシュでセルが回り続ける、スズキイージースタートシステムを採用している。レバーの基部に位置調整機構が備わるのはブレーキ側のみ。

■燃料タンク/シート/ステップまわり ★★★★☆

燃料タンク+サイドカバーのホールド感は素晴らしく良好。SV650に限らず、近年のスズキ車はこの部分の出来が秀逸で、スポーツライディングでの一体感が得やすいように思う。おそらく、シート高が+15mmになったとしても、その印象は変わらないだろう。なおガソリン容量は、MT-07:13ℓとZ650:15ℓの中間となる14ℓ。

かなり長めのバンクセンサーを除けば、ステップはスーパースポーツ的な雰囲気。近年のミドルツインでは、ラバー付きのステップバーが一般的になっているのだけれど、不快な振動を出さないという絶対的な自信があるのか、あるいは、ソリッドな操縦性を考慮してか、SV650の場合は細かなギザギザが刻まれたアルミ地のまま。

■積載性 ★★☆☆☆

シート裏に格納式ストラップ×2が備わり、タンデムステップブラケットのヒールガードが荷かけフックとして使えなくはないものの、このバイクは積載性をあまり考慮していない模様。と言っても、シートにベルトを巻き付けるタイプの固定方法なら、シートバッグが装着できるのだが、安定した積載状況を実現するためには、後部にベルトを追加する必要があった。ちなみに純正アクセサリーのトップケースの価格は、本体:1万3200円、キャリア:2万66400円、アダプタープレート:2640円。なおシート下にはETCユニットの収納が可能。

■ブレーキ ★★★★☆

フロントφ290mmディスク+対向式4ピストンキャリパー、リヤφ240mmディスク+片押し式1ピストンキャリパーのブレーキは、かけ始めからの利き具合がわかりやすく、制動力が引き出しやすかった。個人的には、コーナリング中にリアをナメるようにして使ったときのフィーリングが好感触。ABSの介入に唐突感は皆無なので、初心者でも臆することなく、フルブレーキングが行えそうだ。

■サスペンション ★★★☆☆

フロントフォークはφ41mm正立式で、リアサスはリンク式モノショック。第2回目で述べたロングツーリングにおける衝撃吸収性に対する不満は、7段階に調整できるリアショックのプリロードを弱くしても解消できなかった(フロントの調整機構はナシ)。スイングアームは楕円断面のスチール製。

■車載工具 ★★★☆☆

車載工具は、両口スパナ×2、L型六角棒レンチ×2、差し替え式ドライバー、リアショックのプリロード調整用フックレンチの6点。決して充実しているとは言えないが、近年の基準で考えると点数は多いほうである。

■燃費 ★★★★☆

インターネット上でSV650の燃費を調べると、20km/ℓ代前半と言う人がいれば、30km/ℓ弱と言う人もいる。どうやらこのモデルの燃費は、乗り方によって大きな差が出るようで、僕が記録した24.3km/ℓという平均燃費は、一般的な基準よりちょっと悪い模様。まあでも、早めに点灯するガソリン残量警告灯を気にしければ、300kmは確実に走れるのだから、個人的な感覚だと航続距離は十二分。

歴史を振り返ればホンダやヤマハも手がけたことがあるのだが、現在の日本の2輪メーカーで、ミドルVツインを生産しているのはスズキのみ。ちなみに、SV650の好敵手だったドゥカティ・モンスター696/796はすでに廃止され、現在の同社はその後継/代替機種として、937ccのモンスターと803ccのスクランブラーシリーズを販売している。

主要諸元

車名:SV650
型式:8BL-VP55E
全長×全幅×全高:2140mm×760mm×1090mm
軸間距離:1450mm
最低地上高:135mm
シート高:785mm
キャスター/トレール:25°/106mm
エンジン形式:水冷4ストロークV型2気筒
弁形式:DOHC4バルブ
総排気量:645cc
内径×行程:81.0mm×62.6mm
圧縮比:11.2
最高出力:53kW(72PS)/8500rpm
最大トルク:63N・m(6.4kgf・m)/6800rpm
始動方式:セルフスターター
点火方式:フルトランジスタ点火
潤滑方式:ウェットサンプ
燃料供給方式:フューエルインジェクション
トランスミッション形式:常時噛合式6段リターン
クラッチ形式:湿式多板
ギヤ・レシオ
 1速:2.461
 2速:1.777
 3速:1.380
 4速:1.125
 5速:0.961
 6速:0.851
1・2次減速比:2.088・3.066
フレーム形式:ダイヤモンド
懸架方式前:テレスコピック正立式φ41mm
懸架方式後:リンク式モノショック
タイヤサイズ前後:120/70ZR17 160/60ZR17
ブレーキ形式前:油圧式ダブルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
車両重量:199kg
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
燃料タンク容量:14L
乗車定員:2名
燃料消費率国交省届出値:34.8km/L(2名乗車時)
燃料消費率WMTCモード値・クラス3:24.4km/L(1名乗車時)

1000km試乗した結論:「最高出力は下がったのに、 スズキSV650は相変わらずの鉄板物件だった」|1000kmガチ試乗1/3 

1998年に登場した初代SVに感銘を受けて以来、スズキのミドルVツインシリーズは、筆者にとって大のお気に入りである。ユーロ5規制に適合するため、最高出力と最大トルクがわずかに低下した2022年型に乗っても、その思いは変わらなかった。 REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko) PHOTO●富樫秀明(TOGASHI Hideaki)

https://motor-fan.jp/bikes/article/44252/
クランク横置き90度Vツインの究極形、それはスズキSV650かもしれない。| 1000kmガチ試乗2/3 

昨今のミドルクラスの主力エンジンは、クランク位相角が270度のパラレルツインである。そんな中で貴重な90度Vツインを搭載するSV650は、このエンジン形式だからこそと言いたくなる、ダイレクトで軽快なフィーリングを実現しているのだ。 REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko) PHOTO●富樫秀明(TOGASHI Hideaki)

https://motor-fan.jp/bikes/article/44305/

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