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BMW・F900GS……2,095,000円
他の兄弟モデルが基本的にエンジンのみのブラッシュアップなのに対して、900GSはその多くが刷新されている。ある意味、不動の地位を確立しているRシリーズに対して、ミドルクラスはエンジン型式も似ている競合モデルも多い。価格面だけでなく、ライバル勢のアップデートに対して対応がよりシビアである状況だ。
スタイリングは一言で言えばレーシー。スリムでスタイリッシュなデザインはアドベンチャーというよりもエンデューロレーサーを思わせるもので、実際に重量も大幅にシェイプアップされている。
エンジンは270度クランクの並列ツインエンジンというレイアウトはこれまでを引き継ぐが、排気量は853ccから895ccに拡大。また、このモデルだけファイナルレシオも変更され、より低回転からの力強さを発揮している。
発進するとすぐにトルクが2〜3割ほど増しているような印象をおぼえる。エンジン回転数が落ちた場面でも、今までであれば少し待ってから車速を回復していくような印象だったものが即座に反応。まさに1速高いギアで難なくこなせるような場面を多く経験したのである。
ライディングモードはレイン、ロード、ダイナミックのほかに、ダート路面用にエンデューロとエンデューロプロが選択可能。
ダイナミックモードのはじけっぷりが気持ち良い。
これまでのF850GSもダイナミックモードは搭載していたのであるが、よりパワフルかつスポーティな味付けにしたとの言葉に大きく頷いてしまった。もちろん、ロード、レインとそれぞれが異なる味付けとなっており、シチュエーションに応じた選択が出来る汎用性はさすがGSといえるものだ。
フルアジャスタブル仕様となった前後足回りはあきらかに動きの良さが向上している。
ワインディングでは剛性感高い車体とあいまって、思い切ってマシンをバンクしていける。長めのストロークのマシンでありがちな、やや腰砕けになりそうな雰囲気もない。そして14kgも軽量になった車体はハッキリと軽さを感じ、軽快にスイスイとコーナーを駆け抜けている。
21インチホイールの大径さを感じないわけではないものの、それがマイナス要素にならず、安心感や操っている操作感につながっている。
ランチタイムにマシンをエンデューロパッケージ仕様に乗り換える。
タイヤはオンロードでのブリヂストン製AT41からメッツラー製カルー4に換装。エンデューロパッケージに装備されるのはインナーチューブにチタンコートの施されたSHOWA製フルアジャスタブルフォークである。
オフロード性能を強化したというだけあって、スタンディングした際のライディングポジション=ステップ位置やタンク&シートと下半身のフィット具合が良好。そして、やはり軽さが大きなメリットとなって走りのレベルをワンランク上げている。
足回りの動きの良さ=安心感はオフロードでより感じられる。
石ころのゴロゴロしているダート区間を高速で走行中、ギャップでフロントタイヤが弾かれて怖い思いをするようなこともない。
走り始め当初、体重60kg少々の自分にはややサスペンションがハードかと感じ、途中でフロントのプリロードと圧側ダンパーを緩めていただいたことで格段に乗りやすくなったことも報告しておきたい。
F850GSには備わっていなかったフルアジャスタブル機構により、より細かいセットアップが可能となっているのも嬉しいところだ。
オンロードで感じられたトルクフルさはオフロードでも大きなメリットがあり、無駄に回転をあげなくてもトラクションを感じやすい。車体だけでなく、エンジン性能によってコントロール性が大きく向上している。エンデューロプロモードにセットしておけば、優れたトラクションコントロールを味わうことが出来るのであるが、それをカットしたところでマシンの破綻が感じられないバランスの良さがある。
F850GSが登場した際にもテストが行われたのは同じマラガであった。
しかし、今回のほうが走るルートがハード目に振られていたのは自信の現れでもあったのだろう。そして、そんなルートであっても不安なく走破できるパフォーマンスが与えられていたのである。
強力なライバルモデルが増えたことで、スポーツ性能。とくにオフロードでのポテンシャルを引き上げをおこなったとされるF900GSは、BMWのマシン、そしてGSらしい汎用性は保ちながら、よりエキサイティングなマシンになっていたのである。
足つきチェック
フロントに21インチホイールを装着するとともに、前後サスペンションのストローク量も230/215mmとたっぷり確保されているため、シート高は870mmと高め。身長165cmでは足つき性良好とは言えないが、車体およびシートサイドのフィニッシュ、車重の軽量化による恩恵は大きく感じられる。ライディングポジションはアップライトで快適性高いもの。とくにスタンディングでしっくりくるポジション設定。シフトペダルの位置関係も適正化されている。
ディテール解説
主要諸元
●エンジン 最高出力:77 kW(105 PS)/ 8,500 rpm エミッション制御:クローズドループ制御式三元触媒コンバーター タイプ:水冷並列2気筒4ストロークエンジン、1気筒あたり4バルブ、オーバーヘッドカムシャフト2本、ドライサンプ潤滑方式 ボア x ストローク:86 mm x 77 mm 排気量:894 cc 圧縮比:13.1 : 1 点火 / 噴射制御:電子制御式インテークパイプインジェクション / デジタルエンジンマネージメントシステム: BMS-X、スロットル・バイ・ワイヤ 排ガス基準:EURO 5 最大トルク:93 Nm / 6,750 rpm ●走行性能 / 燃費 最高速度200 km/h以上 燃料種類:無鉛プレミアムガソリン(ハイオク)(最大15%エタノール、E15)、95 ROZ/RON、90 AKI WMTCに準拠した1Lあたり燃料消費率(1名乗車時):22.72 km/L ●電装関係 オルタネーター:永久磁石オルタネーター、416 W(定格出力) バッテリー:12 V / 9 Ah、メンテナンスフリー ●パワートランスミッション クラッチ:湿式多板、アンチホッピング 駆動方式:エンドレスOリングチェーン、リアホイールハブにショック・ダンピング付き ●サスペンション / ブレーキ フレーム:シェル構造スチール製ブリッジタイプフレーム ステアリングヘッド角度:62° ホイールクロススポークホイール リム(フロント):2.15" x 21" リム(リア):4.25" x 17" タイヤ(フロント):90/90 R21 タイヤ(リア)150/70 R17 ブレーキ(フロント):ダブルディスクブレーキ、フローティングブレーキディスク、直径305mm、2ピストン・フローティングキャリパー ブレーキ(リア):シングルディスクブレーキ、直径265mm、1ピストン・フローティングキャリパー ABS:BMW Motorrad ABS キャスター:119.8 mm 軸距:1,600 mm サスペンションストローク、フロント/リア:230 mm / 215 mm フロントサスペンション:倒立フォーク、直径45 mm、スプリング・ベース手動調整式、リバウンド及びコンプレッション・ダンピング調整式 リアサスペンション:アルミキャストダブルスイングアーム、センターWADスプリングストラット、スプリングプリロード油圧調整式、リバウンドダンピング調整式 ●寸法 / 重量 シート高、空車時:870 mm リザーブ容量:約4 L 車両重量(ドイツ工業規格DIN 空車時、走行可能状態、燃料満載時の90%、オプション非装備):219 kg 許容総重量:445 kg 最大積載荷重(標準装備の場合):226 kg 全幅:945 mm 全高:1,395 mm 全長:2,270 mm 燃料タンク容量:14.5 L インナーレッグ曲線、空車時:1,935 車両重量(日本国内国土交通省届出値、燃料100%時):224 kg