飛び切りクールで走りもイイ。EVのイメージを覆す楽しさだ!|BMW CE 02 海外試乗記

BMWモトラッドの都市型EVコミューター「CE 02」の国際試乗会に参加してきたのでレポートしたい。

写真:BMW Motorrad
文:ケニー佐川
協力:BMW Motorrad JAPAN https://www.bmw-motorrad.jp
コンセプトは「eパルクーラー」。体ひとつでビルの谷間を軽々と越えていく都会型スポーツ「パルクール」をイメージしている。
BMW・CE 02
BMW・CE 02

マシン解説

都会を遊び場に変える自由でエキサイティングな乗り物

ゴールドの倒立フォークや3色シートは上級版の「ハイライン」専用装備。小ぶりだが効くコックピットフェアリングはオプションになる。
最高出力11kw(約15ps)、最大トルク55Nmを発揮する空冷モーターを車体センター部分に搭載。カバーされていて外側からは見えない。
モーター上部には専用充電器用のポートがある。充電器は各国の仕様に合わせて家庭用電源が使えるようになっている。
ディッシュタイプの鋳造軽合金ホイールにディスクブレーキを装着。フロントのみABSを採用。
車体左側に片持ちスイングアームとリアサスペンション、ファイナルドライブとリアブレ
ーキもまとめた構造。
3色シートはハイライン専用。オプションで厚みを20㎜増したコンフォートシートも用意。シート下にリチウムイオンバッテリーを2個収納する。
TFTディスプレイに速度やバッテリー充電量などを表示。専用ホルダーにスマホをセットすれば、BMW Motorradアプリを通じて追加ディスプレイとして便利に使える。USB-C充電ソケット付き。
左手元のキーパッドでライディングモードやディスプレイ表示を簡単に操作できる。アプリで表示されるスマホのナビ画面の操作も可能だ。奥に見えるのがリバース用スイッチ。

このモデルは、CエボリューションやCE 04に続くBMWモトラッドのEVラインナップの第3弾。2輪のEVはまだマイナーな存在だが、脱炭素化社会においては重要な次世代モビリティと言えそうだ。
「CE 02」はBMWが「eパルクーラー」と呼ぶ、スケートボードのようなスタイリッシュなデザインが特徴。低く長い車体や小さなホイール、象徴的なベンチシートなどが、まるで都市のストリートを自由気ままに駆けるスケボーのようなイメージを与える。見た目だけでなく、使い勝手も都会を遊び場に変えるような自由でエキサイティングな乗り物として位置づけられている。
試乗では、定格出力6kW(最高出力11kw=15ps)のバージョンが用意されていた。日本では軽二輪クラスに該当し、もちろん高速道路も走れる性能を持っている。最高速は95km/hで、フル充電からの通常走行で約90kmの走行距離を実現したとのこと。動力源はシート下に搭載されたリチウムイオンバッテリーで、電動モーターからドライブベルトを通じて後輪を駆動する仕組み。ベーシック仕様に加え、上級版のハイライン仕様も用意されている。なお、ヨーロッパ市場向けには14歳から乗れる低出力バージョンも用意されるが、日本への入荷は定格出力6kW バージョンになる見通しだ。
車体はスチール製フレームに倒立フォーク、片持ち式スイングアーム+モノショックを採用。ホイールは前後14インチのキャストタイプで、フロント120/リア150のワイドタイヤを装備。ブレーキは前後にシングルディスクを備えるなど、見た目によらず割とオーソドックスな構成になっている。
また、ライディングモードには遊び心のある呼び名がつけられているのもユニーク。標準モードの「フロー」は穏やかなスロットルレスポンスと中程度のエネルギー回生がある街乗り向き、「サーフ」はダイレクトな加速とエネルギー回生ゼロによる惰性走行が可能ないわば高速道路向きのモード。さらに上級版のハイライン仕様には最もアグレッシブで回生も強力な「フラッシュ」モードが追加されるなど、乗り手に様々な走りの楽しさを提供している。安全面でもフロントABSに加え、オートマチック・スタビリティ・コントロール(ASC)や回生スタビリティ・コントロール(RSC)が搭載され、快適かつ安全なライディングをサポート。都市生活にフィットするクールでスタイリッシュなEVコミューターとして、注目を集めそうだ。

試乗インプレッション

加速モリモリで風のように走るEVならではの気持ち良さ

滑りやすい石畳や路面電車の軌道もへっちゃらの安心感だ。

未来的でおしゃれなスタイルのCE 02は、まるでキックボードやスケボーのようなフラットで平たいフォルムが目を引く。街中で見かける電動チャリと125ccミニモトがコラボしたような、ちょっと新感覚な乗り物だ。その見た目に反して、実は車体はコンパクトで軽快。前後14インチの小径ホイールが効いているのかハンドリングもクイックだ。車重も132kgと原2スクーター程度と軽めでシート高も750mmと低めなので、中での取り回しもスムーズそのもの。ワイドバーハンドルでリラックスしたポジションで乗れるし、フラットなベンチシートは足を前に投げ出してもよし、前傾してスポーツバイク風に乗っても楽しめる。

上り坂はEVの独壇場。スロットルを捻ればどこからでも即加速する。

電動モーターのトルク感はエンジンとは別物で、ゼロ発進からグイッと前に飛び出す感じがたまらない快感。クラッチもギアチェンジもいらないから操作も簡単そのものだ。しかも加速が滑らかでシームレス。スペック的には150ccクラスと同等だが、出足の良さはそれを完全に超えている。上り坂も得意で、エンジンバイクのようなエンストの心配もなし。Uターンも半クラ操作がいらないので楽チンだし、スロットル操作もガソリン車並みに細かく刻めるなど、制御系もよく仕上げてきたと思う。
フロント倒立フォークやリアショックもしっかりとしていて、路面の凹凸も吸収してくれる感じ。リスボンの石畳でもミシュランのCITY GRIPのおかげでしっかりとグリップして安心して走れた。ちなみに、ABSはフロントブレーキのみだが、効きも自然でスポーティな走りも楽しめる仕様。リアブレーキはABSがないが、そこは逆にアクション好きな人には嬉しいポイント。車体が軽いので、ブレーキターンなどちょっとした遊びも簡単にできちゃうのだ。

イージーで静かでスムーズ。風のように走る。

郊外の幹線道路では「サーフ」モードにしてみた。スロットルをオフにしても慣性でスムーズに進む感じは、まるで風に吹かれて飛んでいるような気持ち良さ。エンジンの振動も熱もなく、いつものエキゾーストノートも聞こえない。そんな“ノイズ”がないことで、周囲の状況がよく分かったり、街の風景をゆっくり楽しむ余裕も生まれる気がした。もちろん、エンジンには独特の素晴らしさがたくさんあるが、今回あらためてEVならではの魅力も感じられた。
試乗ではリスボンの街中を約60km走り回ったが、20%のバッテリー残量を残して走行可能距離はまだ20kmほど余裕があった。充電に関しては標準の0.9kW充電器で5時間12分、オプションの1.5kW急速充電器(ハイラインには標準装備)だと3時間30分でフル充電可能である。走りの良さはもちろん、スタイルや装備にもBMWらしい完成度の高さを見せつけてくれた「CE 02」。日本での発売も近そうだ。期待して待ちたい。

右は2022年にデビューした「CE 04」は400ccクラスを想定した超未来的EV。こちらに比べると「CE 02」は軽快でカジュアルな印象になった。

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