BMW・R1300GS試乗記|「取り回しに難あり」は過去の話! 今回のモデルチェンジで、これなら乗れるに大躍進。

1980年の発売以来、43年が経過した今もなお、ツーリングエンデューロカテゴリーにおいて市場占有率が6割以上という絶対的な王者がBMWのR-GSシリーズだ。前回の大がかりなフルモデルチェンジから9年、ついに新時代の幕開けともいうべきニューモデル〝R1300GS〟が日本へ上陸した。ジャーナリスト松井勉氏による詳細解説および海外試乗記に続き、今回は伊豆で開催されたメディア試乗発表会でのインプレッションをお届けしよう。

REPORT●大屋雄一(OYA Yuichi)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●ビー・エム・ダブリュー株式会社(https://www.bmw-motorrad.jp/ja/home.html#/filter-all)

BMW・R1300GS……2,843,000円~(2023年11月23日発売)

先代のR1250GSから12kgもの軽量化(欧州仕様における比較)を果たしたR1300GS。前回のフルモデルチェンジはR1150GSからR1200GSへと進化した2004年で、このときの30kgダウンと比べれば大した減量ではないと思われそうだ。しかし、実際に乗っての印象は“別物”とか“激変”などという表現が少しも誇張ではないと断言できる。
バリエーションはスタンダード(284万3000/286万6000円)、GSスポーツ(297万1000円)、ツーリング(317万9000/318万5000円/336万8000円)の3種類。今回試乗したのは最上位にあたるツーリングで、話題のアダプティブ車高制御機能や、ACCを含むライディングアシスト、コーナリングライトなどを装備している。

ザックス製の車高調整がアジア人ライダーに福音をもたらした

アドベンチャーバイクが世界的に大人気だ。特にリッターオーバークラスは、BMWのR1250GS/アドベンチャーを筆頭に、ドゥカティのムルティストラーダシリーズ、KTMの1290スーパーアドベンチャー、ハーレーのパンアメリカ1250、そしてトライアンフのタイガー1200シリーズらが鎬を削っている。いや、この接戦をイメージしそうな表現は少々誤りかもしれない。というのも、このマーケットはR1250GSと同アドベンチャーだけで6割以上(!)を占有しており、その他のメーカーはそれぞれ1割にも満たないからだ。

さて、そんな大人気のアドベンチャーバイクだが、個人的には少々苦手意識があった。筆者の身長は175cmで、日本人男性の平均身長より3cmほど高いのだが、それでもR1250GSやムルティストラーダは大きくて重く、足着き性や取り回しについても難ありなので、走り出すまでが憂鬱なのだ。

そんなこともあり、今回の「R1300GSメディア試乗発表会」も実のところ足取りが非常に重かった。とりあえず好天に恵まれたことが幸いだな……、そんなことを思いつつ現地入りした。

今回試乗したのは、ラインナップの最上位にあたるR1300GS・ツーリングだ。電子制御サスのDSAに加え、ザックス製のアダプティブ車高制御機能を採用しているのが最大のポイント。このほかにもACCを含むライディングアシストや、コーナリングライトなどを装備している。なお、スタンダードとツーリングの差額は、車体色がブルーの場合で34万2000円、ブラックは31万3000円となっている。車両価格にして1割程度のアップだが、冷静に考えれば原付二種スクーター1台分相当の金額なので、決して小さくはないだろう。

まずはサイドスタンドの状態から車体を起こし、シートに着座する。R1300GS・ツーリングの公称車重は258kgで、ホンダのCRF1100Lアフリカツイン・アドベンチャースポーツES・DCTの250kgに限りなく近く、「あれっ、GSってこんなに軽かったっけ?」というのが第一印象。そして、次に感じたのは足着き性の良さだ。例のアダプティブ車高調のおかげで停車時は前後のサスが短縮され、座面の高さはマイナス30mmの実質820mmとなっている。よって、身長175cmの筆者で両かかとがうっすらと浮く程度に足が地面に届くのだ。

合わせて、燃料タンクが先代よりもフラットに近い形状になったことで、またがった際のライダーに対する威圧感というか圧迫感が少なくなったことも好印象。こうした要素の全てがプラスに作用し、シートに座った瞬間に「これならオレにも乗れそう!」という自信が自然と湧いてくるのだ。

走り出してもまだ驚きは続く。またがった際に感じた車体の軽さは、動き出すとさらに増幅され、これが1300ccもあるバイクとは思えないほど。シャシーについては全面的に刷新されてはいるが、フロントサスにテレレバー、リヤサスにパラレバーを継続採用しているので、ハンドリングの傾向としてはR1100GS時代からの延長線上にある。だが、ライダーの意志に対してより従順に反応するようになり、まるで資質が底上げされたかのように数段レベルアップしている。

アダプティブ車高制御機能は、50km/hを超えると約3秒で上昇し、25km/hを下回ると約1.5秒で下降するプログラミングだ。TFT液晶ディスプレイの下端にそれを知らせるアイコンが表示されるが、見ていなければ気付かないほどにハンドリングへの影響は最小限となっている。ちなみにエンデューロモードにすると車高は常時下がった状態となり(いつでも足が着けるようにとの配慮から)、そのまま舗装路を走るとややクイックさが減るが、それすらも慣れの範疇だと感じた。

電子制御サスのDSAは、大きなギャップを通過したときなど、動き始めにやや硬さはあるものの、ライディングモードごとに減衰特性の変化が感じられ、セッティングに相当な時間を費やしたであろうことが伝わってくる。今回、落ち葉だらけの簡易舗装の林道も走ってみたのだが、ここでもまた1300ccのアドベンチャーバイクとは思えないほどに扱いやすく、急峻かつタイトなトレイルからフル積載の高速巡航まで柔軟に対応できるDSAの優秀さをあらためて実感した。


大刷新のボクサーツインは“らしさ”を残しつつ全方位へ進化

刷新された水平対向2気筒、通称ボクサーエンジンは、先代比で4mmビッグボア&3mmショートストロークとなり、排気量は1,254ccから1,300ccへとわずかにアップ。また、最高出力はR1250GSの136ps/7750rpmから145ps/7750rpmへと引き上げられた。ムルティストラーダV4Sの170psを筆頭に、ライバルたちが軒並み150psの大台に乗っているので、新しいGSがこのカテゴリーにおいて特別パワフルというわけではない。だが、149Nmという最大トルクは他を圧倒するもので、これこそがBMWモトラッドの狙いなのだ。

高速道路を含む一般道において、9,000rpmから始まるレッドゾーンまで回すことはほぼ皆無であり、きつい上り勾配やフル積載、タンデムなど、負荷が増える状況でもせいぜい5,000~6,000rpmまでで事足りるほど低~中回転域のトルクが豊かだ。おそらくR1250GSと同様に、シフトカムが5,000rpm付近で切り替わっていると思うのだが、出力の変化は限りなくシームレスであり、突然パワフルになるといった過剰な演出は一切ない。

ライディングモードは、ハンドル右側にあるモードボタンの短押しで切り替えられる。レイン/ロード/ダイナミック/エンデューロとあり、スロットルレスポンスだけでなく、DTCやフルインテグラルABSプロ、MSR(エンジン・ドラッグ・トルク調整)、DBC(ダイナミック・ブレーキ・コントロール)、DSA(ダイナミック・サスペンション・アジャストメント)らが連動して切り替わる仕組みだ。

何より感心したのは、ビッグボアのエンジンが苦手とする極低回転域、具体的は2,000rpm付近からスロットルをガバッと開けても、ガツガツとした症状を一切出さずにスムーズに加速するマナーの良さだ。例えばコーナーの半径が意外と急だったり、上り勾配がきつかったりと、予想よりもエンジン回転数が落ち込んでしまった際、この低回転域からの滑らかな加速力は実に頼もしく、特に今回は急峻な簡易舗装の林道でこの優しさに何度も助けられた。

ダイナミックモードでスロットルを大きく開ければ、レッドゾーンに向かって勢いよく加速する。ライバルたちよりも最高出力は低いとはいえ145psもあり、また剛性がアップしたシャシーと相まって、まるで滑空するかのごとくスピードが上昇する。この新型エンジン、R1250GS時代よりもさらに振動が少なくなったとすら感じるほどで、ボクサーツインにまだ伸び代が残されていたとは……、と感心しきりだ。

BMWモトラッドはすでにCE04という電動スクーターをラインナップしていることから、アドベンチャーバイク界を牽引する新しいGSが、このCE04と同様のBEV、もしくはカワサキのニンジャ7ハイブリッドのようにHEVに挑戦する未来もあったはずだ。しかし、BMWの出した答えは「内燃機関のままでの大刷新」だった。ここに開発陣の本音が見え隠れしており、新設計のガソリンエンジンの完成度は想像をはるかに超えていた。よって、会場までの重い足取りはどこへやら、素晴らしい余韻に浸りながらの帰路となったことは言うまでもない。

なお、今回のR1300GSは非常に情報量が多いため、電子制御系のインプレッションについては後日あらためて執筆する予定だ。


ライディングポジション&足着き性(175cm/65kg)

燃料タンク(アルミ製)手前の傾斜が緩やかになり、そこを機能的なファブリックで覆うことで着座位置の自由度をアップ。ハンドル切れ角は左右42度もあり、この車格にして小回りがしやすい点は先代から受け継いでいる。
試乗車は最上位の「ツーリング」だ。シート高は850mmだが、アダプティブ車高調整制御機能によって車両全体が30mm下がっており、足着き性についてはかつて設定されていたローダウン仕様よりも優秀といっていい。

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著者プロフィール

大屋雄一 近影

大屋雄一

短大卒業と同時に二輪雑誌業界へ飛び込んで早30年以上。1996年にフリーランス宣言をしたモーターサイクル…