ヤマハとJAFが低速の電動車「GSM」を使った協業を発表、地方の観光新興や生活の足としての活用を目指す

JAFとヤマハが低速モビリティに関する協業契約締結
ヤマハ製の低速モビリティ、グリーンスローモビリティ(GSM)
ヤマハ発動機(以下、ヤマハ)と日本自動車連盟(以下、JAF)は、2022年6月8日、ヤマハ製の低速モビリティ「グリーンスローモビリティ(以下、GSM)」を使い、「地域社会にマッチした移動を実現する」ための事業について協業契約を締結した。GSMは、20km/h以下で走るゴルフカートがベースの電気自動車。高齢化が進み公共交通機関が少ない地域における生活の足などに活用することで、地方における課題の解決を目指すという。

REPORT●平塚直樹
PHOTO●ヤマハ発動機

公共交通機関が少ない地域の課題解決を目指す

 少子高齢化が進む日本では、特に、地方における移動手段の確保も社会課題となっている。例えば、公共交通機関が少ない地域では、買い物や病院、通勤・通学など、生活にクルマは必需品だ。だが、一方で、高齢者のペダル踏み間違いなどによる重大事故も問題となっており、免許を返納する層も増えている。そのため、住民の多くが高齢となっている地域では、日常の足をどう確保するかが大きな問題になっているのだ。

 今回、ヤマハとJAFが協業を開始するのは、そうした地域の課題解決に貢献するための事業だ。ヤマハが持つ低速モビリティGSMの開発・販売ノウハウと、ロードサービスや観光協定をはじめとしたJAFの全国に広がるサービス網、自治体との連携を活かすことで、移動困難地域などでの低速モビリティの導入、アフターサービスを行い、持続可能なモビリティサービスの提供を目指すという。

 事業の具体的な分担としては、導入地の選定や導入検討に向けた付随業務などをJAFが担当。車両提供・車両へのシステム搭載などをヤマハ発動機が行い、導入後のアフターサービスや、低速モビリティの安全運転講習業務などもJAFが行う想定だ。

JAFとヤマハが低速モビリティに関する協業契約締結
ヤマハ発動機とJAFが社会課題の解決に関する協業契約を締結

ゆっくり走り移動を楽しめるGSM

 活用の例には、例えば、地域の一定ルートをGSMで走行し、住民が買い物や通院など日常の足として活用することが考えられる。また、地方の経済活性化として、観光地における移動手段などとしても使用できる。

 ヤマハによれば、「GSMは窓もドアもなく、しかも20km/h以下の低速で走るため、のんびりと景色を楽しんだり、乗客と歩いている人が会話できるなど、移動を楽しむことができるのも特徴」だという。

 なお、導入に関しては、自治体や運営会社にもよるが、専任ドライバーが運転することを想定する。そのため、前述の通り、ドライバーなどに対する安全運転講習も行うことが予定されているのだ。

 ちなみに、導入エリアや自治体などはまだ未定で、具体的にはこれから進めて行くという。

JAFとヤマハが低速モビリティに関する協業契約締結
GSMの7人乗り仕様AR-07

4人乗りから7人乗りまでラインアップ

 今回、当事業に活用する予定のGSMは、これも先述の通り、ゴルフカートをベースにした4輪の電気自動車だ。ラインアップには、4人乗りのAR-04と5人乗りのAR-05、7人乗りのAR-07の3タイプがあり、AR-04は軽自動車ナンバー、AR-05やAR-07は小型車ナンバーを取得し、普通免許で運転ができる。

JAFとヤマハが低速モビリティに関する協業契約締結
ヤマハ製の低速モビリティ、グリーンスローモビリティ(GSM)

 ちなみに、GSMは、ヤマハが磐田市など自治体と行っている自動運転の実証実験にも使用されている。こうした実証実験も、同じく移動困難地域などの課題解決策のひとつだが、同時に、公共交通機関における運転者不足を自動運転車により解決することも目的としている。

 ヤマハでは、仮に自治体がGSMを自動運転車として運用したい場合は、走行ルートにある路面の地中に磁力を発する誘導線を埋め込むことで、決められたルートを自動走行する「電磁誘導方式」を採用することを想定している。

 この方式の導入により、例えば、雪や豪雨など悪天候時に、カメラやセンサー類など「クルマの目」となる機器やシステムが車両の周囲を検知できないといった問題を解決し、より安全な自動運転が可能となるという。

 ともあれ、ヤマハとJAFの協業事業が、今後、いかに普及し、地域の課題解決に貢献できるのかが、今後注目されるところだ。

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著者プロフィール

平塚直樹 近影

平塚直樹

1965年、福岡県生まれ。福岡大学法学部卒業。自動車系出版社3社を渡り歩き、バイク、自動車、バス釣りなど…