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ビモータKB4……4,378,000円(消費税込み)
徹底した軽量化によってスポーツ性と扱いやすさを高めた
カスタムマシンを製造するフレームビルダーとしてスタートしたビモータは、ロードレースの世界で成功を収めたことによってその名を広く知られるようになりました。レースのノウハウを生かしたフレームやコンポーネンツは市販車にもフィードバックされ、高性能なスペシャルバイクは世界中にエンスージアストを創出しました。ヤマハやスズキ、ドゥカティなどのパワーユニットを独自のシャーシにマッチさせたビモータは、1980年代から2000年代初頭にかけて隆盛を極めました。しかし経営状態に関しては決して順風満帆というわけにはいかず、2019年の時点では活動が休眠状態に陥っていました。そんなビモータに手を差し伸べたのがカワサキです。そしてニンジャH2のスーパーチャージド・エンジンを搭載したTESI H2を製造販売するなど、カワサキ最新モデルのパワーユニットを心臓部に据えたスペシャルモデルを生み出しています。ビモータKB4はニンジャ1000SXをベースにして開発されたモデルで、2022年から国内販売が開始されました。
ビモータの特色のひとつが先鋭的なスタイリングデザインです。KB4にもそうした考えは取り入れられていて、フルカバードタイプのボディは新しさとレーシーさを兼ね備えています。それでいてオーソドックスな丸型ヘッドライトを装備している点が実にユニークだと思いました。
独創的でアグレッシブなデザインのボディは、ビモータ独自のトレリスフレームをはじめとした車体構成によってひとクラス下のコンパクトさを実現しています。ちなみにホイールベースはニンジャ1000SXが1440㎜なのに対し、KB4は1390㎜と50㎜も短くなっています。さらに、随所にカーボンパーツやアルミ素材を使用することで徹底的な軽量化を目指し、ニンジャ1000SXよりも42㎏も軽量な194㎏という車重を実現しています。こうした軽量コンパクト化は運動性能を高め、スポーツ性が大きくアップしているはずです。
本革製の表皮を採用したシングルシートに跨り、ハンドルに手を添えると、まるでレーシングマシンに乗っているような前傾姿勢となります。現在はスーパースポーツモデルでも深い前傾姿勢とならないポジションに設定されていることが多いので、少しばかり前時代的な感覚を受けました。日常的に乗る、ツーリングに使うといった用途には向きません。
4,378,000円と高価であることに加えてかなり戦闘的なポジションなので、当初はビビりながらのスタートとなっていました。今回は市街地での試乗だったので、とにかくゴー&ストップが頻繁で、交通量も多かったので気を遣いました。しかし走りだして30分程度で感覚に徐々に慣れてきて、冷静に分析することができるようになってきました。
まず最初に感じたのが、圧倒的な軽さです。圧倒なんて表現するとやや大げさですが、ゴー&ストップを繰り返しているにもかかわらず、車体の重さをあまり感じなかったのです。リッタークラスのバイクで市街地を走るとその重量で疲労してきてしまうのですが、KB4にはそれを強く感じませんでした。前傾がきついポジションに関しては使いづらいと思いましたが、ニーグリップで意識的に腕の力を抜いてみると、負担は減りました。とはいうものの、決して快適なポジションじゃないのはたしかです。
ハンドリングの軽快さも市街地走行ではメリットだと感じました。サーキットやワインディング走行で真価を発揮するのは当然として、低速で扱うことが多い市街地でも軽快性は大きく生きてきます。たとえば1速で交差点を直角に曲がるといった状況では、一般的に車体の重さが気になるものですが、KB4はミドルクラスのバイクを扱っている感覚で向きを変えることができるのです。したがって市街地や一般道でも軽量コンパクトなボディと軽快なハンドリングは、走りやすさや扱う楽しさを実感させてくれるのです。
これだけレーシーなモデルだと、足回りの設定はハードなのではないだろうかと思っていたのですが、オーリンズ製の前後サスペンションは市街地走行の低荷重でもしっかり作動してくれ、シート自体の座り心地を除けば、乗り心地は意外なほど快適でした。作動性の良い前後サスも軽快なハンドリングに大きく貢献しています。今回は高速ワインディングを走行していないので明確なことはいえませんが、おそらく高荷重が掛かったときにも的確な減衰力が働き、優れたロードホールディング性を発揮するんじゃないかと思います。ブレンボ製の前後ブレーキも、スピードに関わらず高い制動力とコントロール性を発揮してくれました。
予想外の扱いやすさを感じたのは軽快なハンドリングだけじゃありませんでした。ベースとなっているニンジャ1000SXの水冷DOHC4バルブ並列4気筒エンジンは、スタンダードのまま搭載されているのです。なので走り出した瞬間から実感していたのですが、トルクフルでありながらもスムーズなパワーフィーリングが扱いやすく、クイックシフターのシフト操作などもとてもやりやすかったのです。またアシスト&スリッパークラッチもそのまま使われているので、レバー操作も軽くてラクです。
当然のことながら、ニンジャ1000SXに搭載されている電子制御システムもそのまま採用されています。高度な車体姿勢認識を行うIMU(慣性計測装置)を中心にKCMF(カワサキコーナリングマネジメントファンクションがKTRC(カワサキトラクションコントロール)、KIBS (カワサキインテリジェントアンチロックブレーキシステム)をコントロール。さらにフルパワー・ローパワーの2種類のモードから選択可能なパワーモードを搭載。そしてKTRC、パワーモードと連携する包括的なモードセレクト機能を採用し、トラクションコントロール、出力特性をスポーツ、ロード、レインの3種類から、走行条件に合わせて簡単に設定することができるようになっています。加えて、好みの設定が記憶可能なライダーモードも備えています。
長距離に及ぶ高速走行をサポートしてくれるエレクトロニッククルーズコントロールも搭載するなど、カワサキの技術とビモータの独創性を見事に融合させた結果、単に高性能なスペシャルモデルという枠にとどまらず、さまざまな領域でライダーフレンドリーな性能を発揮してくれるモデルに仕上がっています。現実的にユーザーとなれるライダーはごくわずかですが、多くのライダーに走る楽しさと所有する喜びを与えてくれるモデル。それがビモータKB4だと感じました。
ディテール解説
主要諸元
モデル名:KB4 全長×全幅×全高:2,050mm×774mm×1,150mm 軸間距離:1,390mm 最低地上高:140mm シート高:810mm(+/-8mm) キャスター/トレール:24.0°/100.8mm エンジン種類/弁方式:水冷4ストローク並列4気筒 / DOHC 4バルブ 総排気量:1,043cm³ 内径×行程/圧縮比:77.0mm×56.0mm/11.8:1 最大出力:104.5kW(142PS)/10,000rpm 最大トルク:111N・m(11.3kgf・m)/8,000rpm 始動方式:セルフスターター 点火方式:バッテリ&コイル(トランジスタ点火) 潤滑方式:ウェットサンプ エンジンオイル容量:4.0L 燃料供給方式:フューエルインジェクション 燃料タンク容量:19.5L トランスミッション形式:常噛6段リターン クラッチ形式:湿式多板 ギヤ・レシオ: 1速:2.600(39/15)/2速:1.950(39/20)/3速:1.600(24/15) 4速:1.389(25/18)/5速:1.238(26/21)/6速:1.107(31/28) 一次減速比/二次減速比:1.627(83/51)/2.733(41/15) フレーム形式:トレリス サスペンション: 前|オーリンズ FG R&T 43 NIX30 後|アルミ削り出しスイングアーム、オーリンズ TTX36 ホイールトラベル: 前|130mm 後|122mm タイヤサイズ: 前|120/70ZR17 後|190/50ZR17 ホイールサイズ: 前|17M/C×MT3.50 後|17M/C×MT6.00 ブレーキ形式: 前|デュアルディスク 320mm (外径) 後|シングルディスク 220mm (外径) 車両重量:194kg 乗車定員:1名 生産国:イタリア共和国 メーカー希望小売価格:4,378,000円(本体価格 3,980,000円、消費税 398,000円)