グロムとダックス125|ホンダの原付二種、選ぶならどっち? 比べてみた!

原二の人気が衰え知らずです。セカンドバイクとしてだけじゃなく、利便性や経済性の良さから一家に1台という感じで所有して負担がないことも、原二の需要を高めています。そうした状況から現在、国内外から数多くの原二バイクが発売されています。まさに百花繚乱という感じでカテゴリーも多岐に及んでいます。それら豊富にある原二バイクの中から、小径タイヤを履く4ミニに着目して、グロムとダックスを乗り比べてみました。
写真:徳永茂
協力:ホンダモーターサイクルジャパン https://www.honda.co.jp/HMJ/

スポーツ性かレジャー重視かで選択

国内メーカーの4ミニは現在、ホンダのグロム、ダックス125、モンキー125とカワサキZ125PROの4モデルです。これらをカテゴリーで分類すると、グロムとZ125PROがスポーツバイク、ダックス125とモンキー125がレジャーバイクということになります。なので、選ぶ場合は同一カテゴリーの中からということになります。でも、果たしてどっちがいいのか悩みますよね?

ということで、スポーツバイクとしてグロム、レジャーバイクにダックス125を選んで、走り比べてみました。

まずはスタイリングから見てみましょう。4MINIのレースなどにも引っ張りだこのグロムは、2013年に初登場しました。シャープなボディラインとアップマフラーを装備したアグレッシブなスタイリングが特徴で、9.8psを発生する124㏄空冷4スト単気筒エンジンは、4速マニュアルミッションを採用していました。2016年にはダウンマフラーの採用をはじめスタイリングを一新してモデルチェンジしました。2020年に2度目となるモデルチェンジが行われ、塊感のある遊び心あふれるスタイリングに一新。さらに、高出力化と環境性能の向上を図った123㏄の新型エンジンに変更。ミッションもマニュアル5速となりました。そして2024年、3回目のモデルチェンジで新型となったグロムは、シャープでスポーティなスタイリングへと生まれ変わりました。

一方ダックス125は、モンキーに続くレジャーバイク第2弾として1969年に登場した初代ダックスをモチーフとして、2022年に登場した原二レジャーバイクです。当然のことながら従来のダックスよりひと回り大きなボディが与えられています。しかしスタイリングの基本は、その名のとおりダックスフンドをイメージしたユニークなデザインが踏襲されていて、いかにもレジャーバイクといった姿をしています。エンジンはグロムと同型の123㏄空冷4スト単気筒ですが、低中速重視の特性としていて、ミッションも自動遠心クラッチ式の4速を採用しています。

4代目となったグロムのスタイリングは、ヘッドライトカバーやシュラウドなどをシャープなデザインとして、さらにスポーティでアグレッシブなものとしている。前後12インチタイヤを装着した4MINIながら、ネイキッドスポーツモデルとしての存在感をさらに高めた
犬のダックスフンドをモチーフとしたファニーなスタイリングデザインは、125となっても継承されている。モンキー125に続く原二レジャーバイクの第2弾として登場したダックス125は、見た目のインパクトが強いだけじゃなく、実用性の高さも見逃せない

このようにかなり差異のあるスタイリングですが、跨ってみるとポジションにそう大きなちがいは感じません。グロムに比べてダックス125のハンドルは大きく立ち上がった形状をしていますが、上体の直立程度はほぼ同じ。どちらもアップライトなのでストリートからツーリングまでゆとりのある走行ができます
ヒザの曲がりのきつくないので快適です。比較するとグロムのほうがややバックステップになっているのでスポーティな印象です。シートの座り心地に関しては、グロムは硬質でスポーツライディングに適しています。一方のダックス125はクッション性が良くコンフォータブルな座り心地です。シート高はグロムが14㎜低い761㎜となっていますが、シートの沈み込みなどからダックス125と変わりありません。12インチの小径タイヤを履いている4ミニということで、どちらも足つき性はバッチリです。

スポーツバイクながら直立した上体となるポジションで操作性は良好。やや後退した位置にあるステップがスポーティさを表している。シート高は761㎜と低く、足つき性は抜群だ
レジャーバイクらしくリラックスできるポジションが特徴。ボディのデザイン上ヒザ周りに空間ができるので落ち着かないところはあるが、すぐに慣れる。シート高は775㎜とグロムより高いが、サスやシートの沈み込みがあるので、良好な足つき性に変わりはない

走るうえでグロムとダックス125の最大のちがいは、クラッチ操作の有無です。小さいながらもスポーツバイクであるグロムは、5速マニュアルミッションとなっているので、クラッチ操作をしてギアチェンジします。自動遠心クラッチ式のダックス125は、当然のことながらクラッチレバーがなく、ギアチェンジはペダル操作だけです。しかも4速なので忙しない操作の必要はありません。
エンジンはまったく同じですが、グロムが高回転型なのに対してダックス125は低中回転重視の特性としています。といってもその差は微妙なのでパワー感に大きなちがいを感じることはありません。
ただし、実際に走らせると、グロムの場合はアクセルをワイドオープンして高めの回転でテンポよくシフトアップしていくと、思いのほかスピーディでワクワクしてきます。これなら市街地でスポーツライクな走りが楽しめるし、ワインディングではさらにスポーティに駆けることができます。レーサーベースになっているのも理解できます。
ダックス125も引っ張ればかなりいいペースで走ることができます。でも低中速トルクを生かしてゆったり走るほうが合っています。クラッチ操作もいらないし、ミッションも4速なのでイージーライディングに向いていると思いました。

ロングストロークの123㏄空冷OHC2バルブ単気筒エンジンは、最高出力7.4kW[10ps]/7,250rpm、最大トルク11N・m[1.1kgf・m]/6,000rpmのスペックで、高回転高出力型の特性
ミッションはマニュアル5速で、一般的なスポーツバイクと同じ
搭載するエンジンは、グロムと同型の123㏄空冷OHC2バルブ単気筒。スペックは最高出力6.9kW[9.4ps]/7,000rpm、最大トルク11N・m[1.1kgf・m]/5,000rpmで、低中速型の特性としている
クラッチ操作のいらない自動遠心クラッチ4速ミッションを採用している

乗り心地はダックス125のほうがソフトで快適です。倒立フロントフォークに2本ショック式リアサスを組み合わせている足回りは、全体に良好な作動性を見せてくれます。肉厚のシートのクッション性の良さも手伝って、表現は稚拙だけど、フワフワと心地よい乗り心地を提供してくれます。

グロムは、やはり倒立フロントフォークを装備していますが、リアサスにはモノショックを採用。高いスポーツ性実現のため、比較するとややハードな設定となっています。といっても、低速で負荷のかからない状況でも適度に動いてくれるので、乗り心地を悪く感じることはありません。ダックス125に比べて硬めというだけです。結果的には軽快なハンドリングをもたらすことにもつながっています。

ところで、両車ともダブルシートが採用されていて、リアステップも装備してあります。2人乗車、つまりタンデムが可能ということになっています。4ミニで実際にタンデムツーリングする人は少ないと思いますが、タンデム性もチェックしてみました。
座り心地はクッション性の良いシートを採用しているダックス125が上です。ステップもラバーになっているし、簡易ながらグラブバーも装備してあるので、タンデムをする機会が多いライダーにはダックス125が適していると思います。  一方グロムもタンデム走行に不備はありません。グラブバーの装備がないので安定感には少しばかり欠けますが、2人乗りで極端に姿勢変化が起きることがないので、走行性の面では安心できます。

小さいながらもフラットな形状で自由度のあるグロムのシート。比較的硬質な座り心地がスポーティ。タンデムも可能だがグラブバーの装備はない
リアサスペンションはモノショック式を採用
リアステップはアルミ製
フラットで肉厚なダックス125のシート。クッション性が良く座り心地は快適。グラブバー装備でタンデム性も良好だ
リアサスペンションは2本ショック式を採用
リアステップはラバータイプ

このようにグロム、ダックス125それぞれにコンセプトに合った特性や装備が与えられていて、それが個性につながっています。原二バイクということでどちらもおもに市街地を中心としたストリートを走行することが多いと思いますが、使い勝手ではどちらに軍配が上がるということはありません。つねにバイクとしての走りを楽しみたいライダーにはグロム、のんびりとゆる~い感じで移動したいライダーにはダックス125が合っていると思います。いずれにしても、両車ともに個性的なバイクなので、バイクライフを充実させてくれることはまちがいありません。

スクエア形状のフルデジタルメーターはバーグラフ表示のエンジン回転数をはじめ、速度計/燃料計/走行距離/平均燃費/時計、ギアポジション/REVインジケーターなどを表示。さらに輝度調整できるバックライトも備えていて、視認性は良好だ
反転液晶タイプの丸型メーターを装備。機能を限定することでシンプルな表示としている。イグニッションON時には速度表示部がまばたきする。レジャーバイクらしい遊び心が盛り込まれている

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著者プロフィール

栗栖国安 近影

栗栖国安

TV局や新聞社のプレスライダー、メーカー広告のモデルライダー経験を持つバイクジャーナリスト。およそ40…