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公園の駐車場に捨てられた、無残な姿の2台のバイク。
ジョギングやウォーキングで頻繁に立ち寄る、筆者の自宅近くにある公園の駐車場の片隅で、2台の放置バイクを発見。1台はビッグスクーターブームの礎を築いた250ccの絶版モデル、そしてもう1台は水冷4スト4気筒DOHC 4バルブ249ccエンジンを搭載したネイキッドモデルのようだ。
両車は昨今の絶版車ブームに伴い、中古車市場において程度の良い両車は高値で販売。放置されたビッグスクーターの方はマフラーやハンドル、シートやロングテールカウル等。バリウスはロングテールカウル等でカスタマイズ。両車ともヤンチャ系の外観が特徴で、ナンバープレートは外されている。
ざっくり見積ったところ、倒されたネイキッドバイクの完全復活には相応のコストが掛かりそう。しかしリアショック、前後ホイール、フロントフォーク、ガソリンタンク、エンジン各部などは中古パーツとして価値ありと推測。ビッグスクーターはリアタイヤの空気が減っているものの(パンクなし)、低コストで動きそうな感じ。中古車もしくは部品取り車としての価値はまだがありそうだ。
公園に車両を放置した人物は、2台のバイクの価値を知らないのか? はたまた分解して売却する等々、“さばき方”を知らないのか? 売却できない何らかのワケがあるのか?
最初にこの現場を見た時、「暴走族が盗難車を捨てていったのかな?」程度に思っていたが、1ヶ月たっても捨てられたまま。無残なその姿を見て何となく哀れに思った筆者は、近所の交番まで通報に出向いた。
公園に放置されたバイクはどうなる?
交番にいる、いつもの年配のお巡りさん(以前、筆者は痴呆老人を保護し、この交番に送り届けた。また妻が財布を落とした時、この交番に届けられていた。それ以来、このお巡りさんとは馴染みとなった)に事情を話したところ、お巡りさんは「あの公園のバイクね」と素っ気なく返答。その口調から、すでに誰かが通報していた模様だ。
「バイクが可哀そう」というバイク好きを随所にアピールし、「コイツ、馴れ馴れしくてしつこいな」と思われないように注意しつつ、お互い顔馴染みであることをやや匂わせながら、お巡りさんへ現況や今後の対応などを、心配ヅラして小声で伺ったところ、
・公園と交番はA市にあり、すでにA警察が盗難届の有無や事件性を確認済み。2台とも盗難届が出ておらず、事件性はない模様
・盗難届や事件性もないため、警察はバイクを勝手に動かせない(盗難届や事件性があれば、警察はすぐに回収)。持ち主が判明したか否かは不明だが、現在は警察の手を離れ、公園を管理するA市役所〇〇課に委ねている
・2台の車両にナンバープレートなし。車体番号を陸運局に照会し、持ち主(名義人)が判明すれば、警察もしくは公園を管理するA市役所〇〇課は、持ち主に引き取り願いの連絡を実施。引き取りに応じない(連絡がない)場合は、内容証明郵便を送付するはず
・持ち主が不明、もしくは持ち主(名義人)から連絡がない場合、公園を管理するA市役所〇〇課が、最終処分通告となる「持ち主の方へ。〇月×日までに移動しない場合は、公園を管理するA市役所〇〇課が移動・廃棄します」という警告の貼り紙を行うだろう
とのこと。これは公共の場所で放置された車両を処理する際のセオリーだという。
お巡りさんによれば、一般的にナンバープレートが取り外され、車体ナンバーが削られ、何の手がかりもなく持ち主(名義人)が不明。もしくは持ち主(名義人)の氏名や住所等は分かったが連絡がつかない、道路、公園、河川敷などの公共の場に放置されたバイクは、たとえ警告の貼り紙をして撤収を促しても、引き取りに来る人はほぼ皆無。放置というよりも、処分費用を支払いたくないから不法投棄していったというのが正解なのだろう。
公園や公道など、公共の場所で放置されていたのが自転車や原付(排気量125cc以下の一種と二種)の場合。管轄が市区町村にあるため、撤去は比較的スムーズ。警察の照会で盗難届や事件性がなければ、市区町村の担当部署が持ち主への連絡や、撤去の手配を実施してくれるはず(各市区町村により異なる場所あり)。
厄介なのは、陸運局の管轄となる排気量126cc以上のバイク。もしも盗難届や事件性がない車両ならば、権限のない警察や市区町村は移動させることもできない。
公園に放置されていたビッグスクーターとネイキッドバイクは、警察もしくはA市役所〇〇課が、車体番号から割り出した持ち主に引き取りの連絡を実施。連絡や引き取りを待っている状況。もしくはすでに内容証明を送付した後だと思われる(あくまでも筆者の推測。これも放置車両を処理する時のセオリー)。
持ち主から連絡がなければ、一定期間、警告の貼り紙を実施。それでも連絡がとれず、持ち主からの引き取りの意思表示がなければ、公園を管理するA市役所〇〇課が専門業者に委託し、“廃棄物”として処分される。
廃棄物となった放置バイクの処分費用は、原形を留めた250ccクラスで1台1万円~2万円程度が相場(放置バイクの程度や破損状況により異なる。専門業者への支払いはもちろん税金)。
なお価値のある車種や破損の状況次第では、無料で回収。また運が良ければ、買い取りしてくれる物件もある(放置バイクという性格上、限りなく買い取りの確率は低い。そもそも程度の良い車両や価値のある絶版車は、誰も放置しない)。
通報から1ヶ月後、2台のバイクは消えていた…
交番への通報から1ヶ月が経過し、筆者はバイクが放置されていた公園駐車場へGO。すると2台は消えていた。
ちなみに筆者は日々のジョギングがてら、放置バイクを時折チェック。筆者の通報から間もなく、倒されたバリオスはサイドスタンドを掛けられていた(誰が立て掛けたかは不明)。しかし警告の貼り紙は、それ以降もなし。
通告により持ち主が引き取ったのか。A市役所〇〇課が早急に処分したのか。はたまた金(わずかだろうが)の匂いを嗅ぎ付けた“ハイエナ(窃盗団)”が、かっさらっていったのかは不明。
ちなみにバイクが放置されていた付近には、まるで“その替わり”のように、クルマのスペアタイヤと古タイヤが放置されていた。
道路に放置されたバイクの場合
道路交通法第45条第1項を始め、以下の場所では、路上駐車が禁止されている。
・駐車禁止の標識のある区域
・交差点・横断歩道・自転車通行帯、またその近辺
・路上のカーブから5m以内
・坂の頂上、勾配のきつい坂
・踏切の10m以内
・トンネル内
・運行時間中のバス停から10m以内
・駐車場や車両の出入口から3m以内
・道路工事の現場から5m以内
・火災報知器から1m以内
・防火水槽や消防器具置き場、それらの出入口を含めた5m以内
上記の場所、たとえ『故障中』の張り紙をしても路上にバイクを放置すれば、「放置駐車違反」の対象となる。
では、「駐車禁止区域」以外で、『故障中』の張り紙をし、路上にバイクを放置しても大丈夫なのか? 答えはNo。たとえば比較的交通量の多い道路などでは、「保管場所法違反」に問われる可能性がある。
公道に放置されていたのが自転車や原付(排気量125cc以下の一種と二種)の場合、管轄が市区町村にあるため、一般的に撤去も早い。
ただし陸運局管轄の管轄となる排気量126cc以上のバイクは、盗難届や事件性がない場合、所轄の警察や市区町村に権限がないため、道路(たとえば国道ならば国土交通省)を管轄する担当部署に“その後の処分”が委ねられる。この場合、撤去までに一定の期間を要することが多い。
もしも長期間、道路を含む公共の場所にバイクを放置した場合。持ち主は「放置駐車違反」や「保管場所法違反」に問われる。
警察はナンバープレートや車体番号から、持ち主(名義人)、また盗難届や事件性の有無を調査。盗難届や事件性がなければ、警察は持ち主に放置車両を大至急引き取るように催促。持ち主から連絡がない場合は、“最後通告”である内容証明郵便を送付する。それ以降の対応は、上記の公園と基本的に同じ。
私有地に放置されたバイクの扱いは、非常に厄介。ターニングポイントは「警察の手から離れた時」
マンションやアパート、複合施設や店舗などの駐車場や敷地内。つまり私有地内にもバイクの放置は多い。
私有地にバイクやクルマを放置された場合、私有地の所有者は絶対的な被害者にもかかわらず(放置した持ち主が明確な加害者であり、圧倒的に悪い)、その後の対応が非常に厄介。面倒な事件に巻き込まれたような、にっちもさっちもゆかぬ状況に陥る可能性があるのだ。
私有地での放置車両は、私有地の所有者の貴重な時間とお金を奪うばかりで、本当に迷惑以外の何物でもない。「人の土地に勝手に放置しやがって!」と怒りたくなる、一方的な被害者であるはずの私有地の所有者だが、放置車両の対応は法律に則り、慎重に進める必要がある。
もしも私有地に無断駐車がある場合、勝手に移動したり処分するのは「自力救済禁止の原則」に該当。違法駐車中の持ち主に訴えられる可能性もあるため、絶対にNG。
なお私有地にバイクやクルマの無断駐車があり、土地の所有者が警察に連絡をしても、警察は「民事不介入の原則(個人間の問題には関わらない)」により、駐車違反の切符を切ったりレッカー移動は行わない。
では、土地の所有者や管理者は、どうすればいい?
土地の所有者や管理者が行う流れとしては、
・まず警察に「事件性があり、盗難車っぽい車両が敷地内に放置されている」と連絡する。警察はナンバープレートや車体番号を手掛かりに、持ち主(名義人)、盗難届や事件性の有無を調査。もしも盗難届や事件性があれば、警察は放置車両を回収する
・処分通告として、「持ち主の方へ。非常に迷惑しているため、〇月×日までに移動しない場合は、管理者(土地の所有者)が移動・廃棄します。持ち主の方は至急移動するか、管理者に連絡してください。連絡先:00-0000-0000」という警告の貼り紙を表示する。バイクの持ち主が後から盗難届を出す可能性もあるので、表示は長ければ長いほど良い
・盗難届や事件性がなければ、警察は持ち主に対し、引き取るよう連絡。持ち主と連絡がとれない、または持ち主不明の場合、多くは「敷地の管理者や所有者で処分してください」という流れとなる(私有地の場合、民事不介入の原則により、所轄の警察によっては持ち主に連絡しない場合あり)
盗難車でなく犯罪にも関係ない場合、警察は手を引く。持ち主が面倒な輩(やから)ならば、弁護士や専門家に即相談を!
マンションやアパート、複合施設や店舗などの駐車場や敷地内は多くの場合、個人ではなく法人(会社)が管理。管理会社はタチの悪い面倒な持ち主とのトラブルを回避するため、警察の手を離れた時点で放置車両や持ち主への対応を、顧問弁護士に一任することが多い。
法律のプロである弁護士は案件により、
・陸運局へ持ち主の照会を請求(請求者が素人の場合、陸運局は個人情報の保護を前提に開示を拒む場合が多い)
・引き取りを拒み、ゴネる持ち主(お金など、何らかの目的や理由があると思われる持ち主)との面倒な交渉
・簡易裁判所への提訴(簡易訴訟)
・放置した持ち主への慰謝料や損害賠償の請求(不当に駐車された迷惑料や処分費等)
など、素人にはハードルの高い法律絡みの作業を実施。
法律に基づき、弁護士は以上を適切に処理後、最終的には信頼のある馴染みの専門業者に処分を依頼して、事案は一件落着となる。
私有地に放置されたバイク。処分時の注意点
放置バイクを処分する際に厄介なのが、バイクの持ち主が後々、盗難届を出すこと。バイクの持ち主が海外赴任など長期不在で、バイクが盗まれたことにまったく気付かず、かなりの月日を経て盗難届を提出するというケースもごく稀にある。
盗難届が出ているバイクは、持ち主に返すのが鉄則。盗難届が出たバイクを、仮に土地の所有者が「もったいないから」といって修理し、勝手に自分の愛車にしてしまった場合。窃盗罪や占有離脱物横領罪などに問われたり、持ち主から損害賠償請求される可能性がある。
私有地に放置されたバイクの処分は、警察の手から離れて以降が法律的なグレーゾーンに突入。土地の所有者ならば、誰もが「迷惑をかけられた挙句、弁護士費用や撤去費用も被害者持ち。本当に腹が立つ!」と思うはず。
しかし現況の法律下では、なぜかバイクを放置した持ち主側(加害者)が優位にあるといえよう。後々のトラブルや面倒を避けるためにも、放置車両の対応や処理に慣れた弁護士や専門業者に相談。また、放置車両の撮影など時系列での明確な証拠を残しておくことが重要だ。