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2023年10月に発売されたヤマハYZF-R125。YZF-Rシリーズの末弟に当たり、可変バルブ方式を採用する水冷124cc単気筒SOHCエンジンを搭載する。前後に17インチホイールを採用しており、ゆとりあるライディングポジションを実現するフルサイズスポーツだ。もちろんブレーキにはABSを標準装備するほか、トラクションコントロールまで備えているのでベテランからビギナーまで楽しめるスポーツバイクといえる。
大注目のYZF-R125を早速、KN企画がやってくれた。車体のカスタムだけでなくエンジンをボアアップしてしまったのだ。トルクフルさが持ち味のエンジンにさらなる余裕を与えて、素性の良さを引き出そうというもの。一体どのようなチューニング内容となっているのだろう。そこで今回はユーチューブで動画を無料配信しているモトチャンプTVにアップされた「YZF-R125のKN企画183ccボアアップ車試乗&車両解説!」という回をダイジェストにまとめて紹介しよう。
解説するのはモトチャンプ編集長のチャボとジャーナリストのケニー佐川に加えて、KN-YOKOHAMAの佐々木さんを交えて深掘りしている。スクーターのカスタムやレース活動を盛んに進めているKN企画では、YZF-R125の可能性を追求。パーツ交換によるカスタムが中心になっているが、今回はなんとエンジンをボアアップしたデモ車両を借りてサーキットテストすることになった。ではまず、気になるチューニング&カスタム内容を見ていこう。
チューニング&カスタムポイント
エンジンはシリンダーとピストンだけを変更するボアアップで、ボア径を純正のφ52.0mmからφ63.0mmへ変更している。クランクケースは純正のままで排気量は183ccになる。KN-YOKOHAMAの佐々木さんによれば200cc前後までは拡大できるだけのポテンシャルを備えているという。またこのボアアップはYZF-R15でも可能となっている。
車体を見てまず目に飛び込んでくるのがゴールドに輝く足元だろう。台湾MOS製の鍛造ホイールでフロントが3J、リヤが4Jとなっている。またタイヤを純正のバイアスからラジアルに変更しつつ、リヤタイヤだけ1サイズアップさせている。これもボアアップによるパワーアップに対応させてのことだ。
さらに純正で剛性の高いフレーム性能を備えているので、ボアアップと同時にブレーキを強化している。特にフロントブレーキに注目で、RCB製の鍛造ラジアルポンプマスターシリンダーにしつつ同社製4ポットキャリパーを装着しているのだ。現状でディスクローターは試作品とのことだが、さらに大きなサイズを検討中だとか。
操作性にも配慮されていて、クラッチ&ブレーキレバーはRCB製の可倒式としている。純正のレバーだとての小さなライダーには遠く感じられるところなので、RCB製に変更することで手のサイズを気にせず操作できるようになる。さらに同社製バックステップを装着してスポーツライディングをアシスト。特にサーキットを走るなら必需品といえ、クラッチ側にはaRacerのフルコンとリンクするオートシフターを装着。クイックなシフト操作が可能だ。
吸排気系にも手を加えている。ボアアップによりスロットルボディを純正のφ30mmからφ36mmのものへ変更している。さらにエアクリーナーを取り去りSTAGE6製パワーフィルターを装着。ボアアップエンジンに必要な吸気を確保している。さらに排気ではHOTLAPとKN企画がコラボして製作した試作品に変更。こちらは発売を楽しみにしているライダーが多いことだろう。
最終的にエンジン制御はaRacerのフルコンに変更して対処している。これによりヘッドのチューニングを行うことなく、出力特性を自在に変更させることが可能となっている。このままさらにエンジンチューニングを進めても対応可能で、佐々木さんによればターボ化しても問題ないそうだ。
ケニー佐川がサーキットテスト!
とんでもなく楽しそうなデモ車両をケニー佐川がサーキットで試乗している。試乗を終えて開口一番「メチャクチャ速いしメチャクチャ楽しい」という。過去にミニバイクでレースをしていたケニー佐川だから、「昔を思い出した」という。まずクラッチをつなげてマシンをスタートさせると、前へ押し出すトルクがとんでもなく太い。そのためサーキットを走ると使っているギアがノーマルとは違ってしまう。排気量の強みでトルクでグイグイ加速できるため、ギアをポンポンと上げていけるのだ。
以前は排気量を2倍ほどにボアアップした車両に乗っていたケニー佐川だが、今回の車両は扱いにくさがまるでないという。これはフルコンによる制御が最適にされている証拠。ピーキーさを感じさないから乗りやすいうえに速いのだ。これはフルコンにより可変バルブの切り替わるポイントをノーマルより低い回転数に設定していることも効いているようで、走行シーンにより変化させることも可能。さらに広いサーキットを走るなら可変バルブをもっと上の回転数に設定してもいいだろう。
エンジンだけでなくブレーキ性能の高さも特筆モノ。ノーマルだと片押しの2ポットとなるフロントキャリパーだから、サーキットだとブレーキングしても止まり切れないようなシチュエーションがある。それがデモ車両のブレーキだと倒立フォークやデルタボックスによるフレーム性能を思う存分に引き出して強烈な制動力を発揮する。まさにガツンと止まってくれるのだ。これはラジアルタイヤによる恩恵もあるところで、旋回性能だけでなく制動性能にも大いに貢献している。また鍛造ホイールによりバネ下重量が低減されているのでラジアルによる安定感があるなか、ヒラヒラと向きを変えてくれる。総じてケニー佐川がベタ褒めな1台に仕上がっていた。