MotoGP第7戦イギリスGP:ヤマハのクアルタラロ無念のリタイア。トップ独走もマシントラブル発生

©YAMAHA

MotoGP第7戦イギリスGPが、5月23日から25日にかけて、イギリスのシルバーストン・サーキットで行われた。

このレースではファビオ・クアルタラロ(ヤマハ)がトップを走行したが、レース中盤にマシントラブルが発生し、リタイアに終わった。

ライドハイトデバイスが作動したまま戻らず

イギリスGPの決勝レースは、波乱の幕開けとなった。“最初の”スタート直後、アレックス・マルケス(ドゥカティ)、その後フランコ・モルビデリ(ドゥカティ)とアレイシ・エスパルガロ(ホンダ)、そして2周目にマルク・マルケス(ドゥカティ)が転倒を喫し、コース上にオイルが流出したために赤旗中断となった。

3周未満での中断だったため、レギュレーションによりそれまでのレースは無効となり、19周の新しいレースとして再開された。

よって、転倒した4名のライダー、アレックス・マルケスとマルク・マルケスのマルケス兄弟と、モルビデリ、エスパルガロはピットに戻り、スペアマシンでリスタートのグリッドについた。

一方、クアルタラロは、イギリスGPで3戦連続のポールポジションを獲得していた。ただ、1周のアタックラップではこうした速さを発揮できるが、土曜日に行われたスプリントレースを7位で終えたように、レースでは他の後塵を拝していた。しかし、赤旗中断からリスタートとなったレース展開が、ファビオ・クアルタラロ(ヤマハ)に有利に働いた。

優勝候補であったマルク・マルケスとアレックス・マルケスは転倒したばかりだったため、1度目のスタートと同じように最初から攻めることが難しい状態にあった。また、特にマルク・マルケスは2回目のレースではスペアマシンとタイヤのフィーリングがひどく、優勝をねらえる状況ではなかった。

対するクアルタラロは、変わらず自信をもってレースに臨むことができた。

2周目には2番手のライダーに対し、2秒以上の差をつけて快走していた。レース中盤には4秒以上の差を築き、独走状態だった。

だが、12周目にリアのライドハイトデバイスにトラブルが発生する。これによって、クアルタラロはリタイアを余儀なくされた。

ライドハイトデバイスとは、車高調整機構のことで、スタート時のみならず、レース中にも使用されている。レース中の場合は、一部のコーナー立ち上がりの加速で車高を下げて使う。今回の場合、クアルタラロのリアのライドハイトデバイスが、戻らなくなるというトラブルだった。

国際映像にも映っているように、クアルタラロはマシンをピットウオールに停め、座り込んだ。ピットレーンに入り、そこでも座り込んで手で顔を覆っていた。

「僕はほんとにうまく走れていたと思う。でも、リア側のデバイスが作動したまま戻らなくなるというトラブルが起こったんだ。とても残念だよ。長いこと、こういういい感じは持てていなかった。全て、コントロールできていたのに」

クアルタラロは、レース後の囲み取材でそう説明していた。クアルタラロがチャンピオンを獲得した2021年のあと、ヤマハは次第に苦戦を強いられるようになり、ここ数年は優勝や表彰台から遠ざかる、とても苦しい状況が続いていた。「if」の話にはなるが、クアルタラロにとっては2022年ドイツGP以来の優勝のチャンスだった。

リアのライドハイトデバイスのトラブルは、チームメイトであるアレックス・リンスにも起きていた。ただ、リンスのトラブルは最終ラップで起こったため、ポジションを3つ落としたものの、完走することができた。ヤマハのファクトリーチームの二人に、同じトラブルが、同じレースで起こったことになる。

リンスによれば、こうしたトラブルは「以前は何度かあったけど、今年起こったのは初めて」ということだ。

なお、ライドハイトデバイスに関しては、技術規則の変更により、2027年から禁止されることになっている。

ただ、クアルタラロはトラブルによってリタイアとなったが、条件さえそろえば、トップを独走できるというパフォーマンスを見せた。ヤマハが改善し、上位──つまりドゥカティとの差を詰めつつあるのだと期待させるレースだったことも、確かだ。

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伊藤英里 近影

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