「ついに来た」日本MotoGP復活を感じさせた表彰台

近年のMotoGPは、日本人ライダーにとって厳しい時代が続いていた。

かつては宇川徹がロッシを破って優勝し、玉田誠がHonda RC211Vで世界を驚かせ、中野真矢もカワサキで表彰台を獲得。しかし2012年、中須賀克行が代役参戦したバレンシアGPで2位表彰台を獲得して以降、日本人ライダーは長らく表彰台から遠ざかっていた。

その歴史を変えたのが小椋藍だ。

Moto3時代から頭角を現し、2024年にはMoto2世界王者を獲得。そして2025年、TrackhouseからMotoGPへ昇格すると、開幕戦からトップ5入りを記録するなど高い適応力を見せてきた。

その積み重ねの先にあったのが、今回の初表彰台だ。

MotoGP参戦2年目にして到達した“3位表彰台”は、日本ロードレース界にとって大きな意味を持つ結果となった。

2002年以降、MotoGPクラスで表彰台を獲得した日本人ライダー

MotoGP最高峰クラスで表彰台に立つ――。

このハードルは、想像以上に高い。

WGP500からMotoGPへと名称変更された2002年以降、日本人ライダーで最高峰クラス表彰台を獲得したのは、実はわずか6人しかいない。

ライダーレース結果
2002宇川徹南アフリカGP優勝
2002宇川徹スペインGP3位
2002宇川徹フランスGP2位
2002宇川徹イタリアGP3位
2002宇川徹カタルーニャGP2位
2002宇川徹ドイツGP3位
2002宇川徹チェコGP3位
2002宇川徹ポルトガルGP3位
2002宇川徹オーストラリアGP3位
2002加藤大治郎スペインGP2位
2002加藤大治郎チェコGP2位
2003玉田誠ブラジルGP3位
2004玉田誠フランスGP2位
2004玉田誠ブラジルGP優勝
2004玉田誠日本GP優勝
2004中野真矢日本GP3位
2005玉田誠日本GP3位
2006中野真矢オランダGP2位
2012中須賀克行バレンシアGP2位
2026小椋藍フランスGP3位

こうして並べると、小椋藍の今回の表彰台がどれだけ大きな意味を持つかがよくわかる。

特にMotoGPクラスでの表彰台は、日本メーカーが苦戦する近年ではさらに難易度が上がっていた。その中で、小椋はサテライトチームのTrackhouse所属ながらトップ争いへ食い込んだ。

実は“世界王者”も少ない日本ロードレース界

さらに振り返ると、日本人ライダーの世界タイトル獲得は、長いロードレース史の中でも決して多くない。

それだけに、小椋藍のMoto2世界王者、そしてMotoGP表彰台には大きな意味がある。

ライダークラス実績
1977片山敬済350cc世界チャンピオン
1993原田哲也250cc世界チャンピオン
1994坂田和人125cc世界チャンピオン
1995青木治親125cc世界チャンピオン
1996青木治親125cc世界チャンピオン
1998坂田和人125cc世界チャンピオン
2001加藤大治郎250cc世界チャンピオン
2009青山博一250cc世界チャンピオン
2024小椋藍Moto2世界チャンピオン

片山敬済が日本人初の世界王者となり、90年代には坂田和人と青木治親が125ccクラスで世界を席巻。そして原田哲也はアプリリアを駆り、激戦の250ccクラスを制覇した。

さらに2001年には加藤大治郎が圧倒的な強さで250cc王座を獲得。青山博一は“最後の2スト250cc王者”として歴史に名を残している。

©HONDA

その15年後、小椋藍がMoto2王者として世界タイトルを日本へ持ち帰り、さらにMotoGP最高峰クラスで表彰台へ到達した。

Moto2/Moto3では“日本人ラッシュ”が始まっていた

近年、日本人ライダーはMotoGP最高峰クラスでは苦戦が続いていた一方、Moto2やMoto3では再び存在感を強めていた。

その流れを作ったのが、中上貴晶、小椋藍、佐々木歩夢らだ。

さらにMoto3では、鈴木竜生、鳥羽海渡、山中琉聖、古里太陽らが毎戦のようにトップ争いへ加わり、日本人ライダー複数台が表彰台圏内を走る光景も珍しくなくなっていった。

近年の日本人Moto2/Moto3ライダー主要実績一覧

ライダークラス開催戦GP/実績結果
2010富沢祥也Moto2第1戦カタールGP優勝
2010富沢祥也Moto2第2戦スペインGP2位
2013中上貴晶Moto2第1戦カタールGP3位
2013中上貴晶Moto2第9戦インディアナポリスGP2位
2013中上貴晶Moto2第10戦チェコGP2位
2013中上貴晶Moto2第11戦イギリスGP2位
2013中上貴晶Moto2第12戦サンマリノGP2位
2015中上貴晶Moto2第13戦サンマリノGP3位
2016中上貴晶Moto2第7戦カタルーニャGP3位
2016中上貴晶Moto2第8戦オランダGP優勝
2016中上貴晶Moto2第12戦イギリスGP3位
2016中上貴晶Moto2第13戦サンマリノGP3位
2017中上貴晶Moto2第1戦カタールGP3位
2017中上貴晶Moto2第3戦アメリカズGP3位
2017中上貴晶Moto2第8戦オランダGP3位
2017中上貴晶Moto2第12戦イギリスGP優勝
2019鈴木竜生Moto3第4戦スペインGP2位
2019鈴木竜生Moto3第13戦サンマリノGP優勝
2019鳥羽海渡Moto3第1戦カタールGP優勝
2019小椋藍Moto3第15戦アラゴンGP2位
2020長島哲太Moto2第1戦カタールGP優勝
2020長島哲太Moto2第2戦スペインGP2位
2020小椋藍Moto3第1戦カタールGP3位
2020小椋藍Moto3第2戦スペインGP2位
2020小椋藍Moto3第4戦チェコGP3位
2020小椋藍Moto3第6戦スティリアGP3位
2020小椋藍Moto3第7戦サンマリノGP2位
2020小椋藍Moto3第8戦エミリア・ロマーニャGP3位
2020小椋藍Moto3第13戦ヨーロッパGP3位
2020鈴木竜生Moto3第3戦アンダルシアGP優勝
2020鈴木竜生Moto3第7戦サンマリノGP3位
2020佐々木歩夢Moto3第12戦テルエルGP2位
2020鳥羽海渡Moto3第12戦テルエルGP3位
2021小椋藍Moto2第11戦オーストリアGP2位
2021佐々木歩夢Moto3第13戦アラゴンGP3位
2021鳥羽海渡Moto3第8戦ドイツGP2位
2022小椋藍Moto2第3戦アルゼンチンGP3位
2022小椋藍Moto2第4戦アメリカズGP2位
2022小椋藍Moto2第6戦スペインGP優勝
2022小椋藍Moto2第8戦イタリアGP3位
2022小椋藍Moto2第11戦オランダGP2位
2022小椋藍Moto2第13戦オーストリアGP優勝
2022小椋藍Moto2第16戦日本GP優勝
2022小椋藍Moto2年間ランキング2位
2022鈴木竜生Moto3第8戦イタリアGP3位
2022鈴木竜生Moto3第9戦カタルーニャGP3位
2022鈴木竜生Moto3第13戦オーストリアGP2位
2022佐々木歩夢Moto3第3戦アルゼンチンGP3位
2022佐々木歩夢Moto3第5戦ポルトガルGP3位
2022佐々木歩夢Moto3第7戦フランスGP2位
2022佐々木歩夢Moto3第11戦オランダGP優勝
2022佐々木歩夢Moto3第13戦オーストリアGP優勝
2022佐々木歩夢Moto3第15戦アラゴンGP2位
2022佐々木歩夢Moto3第16戦日本GP3位
2022佐々木歩夢Moto3第17戦タイGP2位
2022佐々木歩夢Moto3第19戦マレーシアGP2位
2022鳥羽海渡Moto3第1戦カタールGP3位
2023鈴木竜生Moto3第2戦アルゼンチンGP優勝
2023佐々木歩夢Moto3第5戦フランスGP2位
2023佐々木歩夢Moto3第6戦イタリアGP3位
2023佐々木歩夢Moto3第7戦ドイツGP2位
2023佐々木歩夢Moto3第8戦オランダGP2位
2023佐々木歩夢Moto3第9戦イギリスGP2位
2023佐々木歩夢Moto3第10戦オーストリアGP3位
2023佐々木歩夢Moto3第13戦インドGP3位
2023佐々木歩夢Moto3第14戦日本GP2位
2023佐々木歩夢Moto3第16戦オーストラリアGP2位
2023佐々木歩夢Moto3第18戦マレーシアGP2位
2023佐々木歩夢Moto3第20戦バレンシアGP優勝
2023佐々木歩夢Moto3年間ランキング2位
2023古里太陽Moto3第17戦タイGP2位
2023鳥羽海渡Moto3第13戦インドGP2位
2024山中琉聖Moto3第6戦イタリアGP3位
2024小椋藍Moto2第5戦フランスGP2位
2024小椋藍Moto2第6戦カタルーニャGP優勝
2024小椋藍Moto2第8戦オランダGP優勝
2024小椋藍Moto2第9戦ドイツGP3位
2024小椋藍Moto2第14戦サンマリノGP優勝
2024小椋藍Moto2第16戦インドネシアGP2位
2024小椋藍Moto2第17戦日本GP2位
2024小椋藍Moto2第19戦タイGP2位
2024小椋藍Moto2年間ランキング世界チャンピオン
2024古里太陽Moto3第1戦カタールGP3位
2024古里太陽Moto3第9戦ドイツGP2位
2024古里太陽Moto3第19戦マレーシアGP2位
2025山中琉聖Moto3第4戦カタールGP3位
2025山中琉聖Moto3第13戦オーストリアGP2位
2025古里太陽Moto3第4戦カタールGP2位
2025古里太陽Moto3第15戦カタルーニャGP3位
2025古里太陽Moto3第20戦マレーシアGP優勝
2025古里太陽Moto3第21戦ポルトガルGP3位
2025古里太陽Moto3第22戦バレンシアGP3位

富沢祥也がMoto2初代ウイナーとして名を刻み、中上貴晶や長島哲太もMoto2で優勝を飾るなど活躍。そして小椋藍は、ついにMoto2世界王者へ到達した。

Moto3でも、鈴木竜生や鳥羽海渡が優勝を記録。佐々木歩夢はタイトル争いを演じ、近年は山中琉聖や古里太陽ら若手勢も表彰台争いへ加わるなど、日本人ライダーは再び世界GPの上位争いで存在感を強め始めている。

“タイヤを使わない”小椋らしいレース運び

小椋の強さは、ただ速いだけではない。

Moto2時代から高く評価されてきたのが、タイヤを消耗させない滑らかなライディングだ。序盤から無理に攻め続けるのではなく、レース全体を組み立てながら終盤に強さを見せるスタイルは、今回のフランスGPでも際立っていた。

ブレーキングの安定感、終盤まで落ちないレースペース、そして冷静な状況判断。MotoGPマシンへ乗り換わっても、その武器はしっかり通用している。

今回の3位は、決して偶然ではない。

そう感じさせるだけの内容だった。

次は「優勝」が見えてきた

今回の3位で、小椋藍は“速い日本人ライダー”から、“MotoGP優勝候補になれる存在”へ一気にステージを引き上げた。

しかもまだシーズン序盤。コース適性や予選次第では、今季中の優勝争い、そして初優勝も現実味を帯びてくる。

日本人ライダーが世界の頂点争いへ戻ってきた。

そう感じさせるには十分すぎる、歴史的なフランスGPだった。


【モトチャンプ】