ビギナーに人気の耐久バイクレース、Let’sレン耐!に参加してみた。【楽しかった】

グロムやエイプといった原付二種のレンタルバイクで行う参加型の耐久レース「Let’sレン耐!(以下レン耐)」。ビギナーからベテランまで楽しめる「バイクの運動会」みたいな耐久レースに、仲間と一緒に参加! その1日の流れをレポートする。
REPORT●横田和彦(YOKOTA Kazuhiko)
PHOTO●レン耐事務局/NANA-KO
Let's レン耐:http://rentai.takuma-gp.com

原付二種のレンタルバイクで楽しめる耐久レース「レン耐」に参加しないかとバイク仲間からお誘いを受けた。
筑波サーキットのコース1000で行なわれる6時間耐久だ。レース時間が長いのでメンバーを増やしたいということで僕にお声がかかったのだが、まだ足りないということでバイク大好きなデザイナー・加藤ノブキさん(Twitter・@nobtree)を誘った。

(左)加藤ノブキさんの愛車はKTM 890DUKEとファンティック・キャバレロ フラットトラック250(右)チーム・オーバーランド結成!

加藤ノブキさんはNIKEやファンティック・キャバレロなどの広告デザインを手掛けるデザイナーさん。
バイクが大好きで、バイク専門誌での色やデザインに関する連載をしたり、バイクアートレーベル『HAVE A BIKE DAY.』を主宰し、バイクにまつわるイラストやグッズなどの作品を精力的に発表している。
また現在アライヘルメットから発売されているラパイドNEO・オーバーランドのデザインを手掛けた人でもある。
個性的な帽体デザインを持つラパイドNEOにオリジナリティあふれるグラフィックデザインが施されていて人気なのだが、今回は加藤さん本人と私、そしてチームメイトの斎藤雅也さんが被って出場することに。

参加チーム名はTeam PRIDEONE(チーム・プライドワン)。多くのメンバーがエアバッグを備えたプライドワン製のレーシングスーツを愛用していることから着けられた名前だ。一応、メーカーには断っているので半公式といった感じ。最終的に6人が集まり、6時間を走り抜けることになった。

今回のLet’s レン耐!の舞台は、筑波サーキット・コース1000

レースの朝は早い。サーキットのゲートオープンは6:30。受付開始は7:45なのでその間に指定場所にチームの荷物を置いて、提出書類の仕上げをする必要がある。そこでゲートオープンと同時に入場し、ピット前にクルマを停め荷物を降ろすと駐車場に移動させる。アウトドア用のテーブルやチェア、敷物などを活用して手際よく配置。ピットでは火気厳禁なので、お湯を沸かす電気ポットやそれを稼働させる発電機なども用意。さすがレン耐参戦歴が長い人たちは抜かりない。ホスピタリティの充実はライダーの疲れを癒やしてくれる。けっこう重要なのだ。

受付終了後にレースのルール説明や各種確認事項の伝達がなされるブリーフィングが行なわれる。これには参加者は全員参加が義務付けられる。
これはどんなレースでも一緒で、一歩間違えると命の危険にさらされてしまうモータースポーツでは必須。それはミニバイクであっても変わらない。

ここでは一般的なサーキットの走り方やフラッグの種類などに加え、レン耐独自のルールの説明もある。サーキットビギナーを守り、みんなで楽しく走るため特別に定められたものである。それを違反すると周回減算や失格などの厳しいペナルティが課される。しっかりと理解しておきたい。
またブリーフィングはリモートでも視聴可能。参加手段を複数用意してくれる主催者の配慮はありがたい限りだ。


ブリーフィングが終了するといよいよフリー走行(20分)が始まる。
ここで初めて自分のチームに割り振られたマシン(ゼッケン4)に乗ることになる。

エンジンや車体、足回りなどの基本はノーマル。しかしベビーフェイス製のバックステップやマスターシリンダーガード、レース用アンダーカウルなどが装着されていて、なかなか凛々しい。
「マシンの具合はどう?」「走ってみないとわからないなー」などと話しながらフリー走行へ。

フリー走行でバイクをチェックし、ライダーもウォーミングアップ。この時間では全員は走れないので乗りなれている人にマシンのチェックをお願いし、その後はコースに慣れていない人を中心に走ることに。

グリッド上のTeam PRIDEONE。レースクイーンは初代ミニスカポリスの福山理子さん。レン耐を盛り上げてくれるメンバーのひとり。

フリー走行が終了するとスタートに向けてプログラムが進行していく。
マシンをグリッドに並べ(順番は申込み順)、そのまわりを囲んでオフィシャルのカメラマンに記念撮影してもらう。
雰囲気は和気あいあいとしているが、徐々に緊張感も高まってくる。ほぼノーマルの125ccバイクを使うとはいえ、抜きつ抜かれつするレースである。第一ライダーの目が刻々と真剣になっていく。

スタートは耐久レースではお馴染みのル・マン式。
スタートのフラッグとともにライダーがコース向こうにあるマシンに駆け寄り走り始めるのだ。これがなかなか壮観で、ミニバイクとは思えないほどの迫力がある。

スタートはル・マン式。耐久レースでは定番のスタート方式だ。ミニバイクでも迫力があるっ!
エアバッグ作動用のケーブルがコレ。またがったら補助の人がワンタッチカプラーを接続する。

我がチームはというと、実はスタートはあまり早くない。というのもライダーがまたがったあとにレーシングスーツに内蔵されているエアバッグを作動させるための「ケーブルをつなぐ」という一手間があるので、どうしても遅れ気味になってしまうのだ。
しかしこれは6時間も走る耐久レース。
最後にチェッカーを受けるときに前にいれば勝ちだ。ここで焦る必要はない。

もうひとつペースを抑える理由があった。それは燃費である。
実はレン耐ではガソリンの量が決められていて、アクセル全開だと最初から最後まで走り切れないようになっている。すなわち速いライダーだけを集めても勝つどころかゴールに辿り着くこともできないということ。どこかで必ず燃費を稼ぐ走りをしなければならないのだ。これならチーム内にレースビギナーがいても、作戦次第で上位を狙える。

ピンクビブスを着けた女性ライダーは驚かせないようストレートなどで優しく追い抜こう。

ほかにも走行中に注意するポイントがある。
ピンクビブスをつけた女性ライダーを際どい抜き方で怖がらせたり、接触・転倒などさせたら加害者がいるチームは失格になるということ。女性ライダーを守るレン耐の特別ルールのひとつだ。


万一転倒した場合、ライダーはコース外に退避し身の安全を確保。安全を確認してから再走行する。

また転倒した場合は、速やかにピットに戻って主催者のチェックを受けなければいけない。
そしてピットアウトするためにはペナルティとして5,000円を支払う必要があるのだ。これはレンタルバイクだからといって手荒に扱われるのを防ぐためでもある。
転倒は精神的、肉体的、金銭的にダメージを受け、上位入賞の可能性も大きく削られてしまうので、焦らず気持ちに余裕を持たせて走りたい。



ペースを抑えて走る、といっても気持ちは真剣そのもの。
モータースポーツは気を抜くと怪我につながる。自分が脳震盪をおこしたり骨折するにとどまらず、人を巻き込んでしまう可能性もある。安全性に対して排気量の大小は関係ない。我がチームは安全でクリーンな走行を心がけ、ペースを調整しながら淡々と周回を重ねた。

加藤ノブキさんも激走!
タコメーターを見ながらペースを調整。
ピットサインに返事。次の周にピットインだ。

そしてレース中盤、運命のペリア式ハンデが行なわれた。
前半で下位に沈んでいたチームがジャンプアップするチャンス。みんな願いを込めてサイコロを見つめる。

ペリア式半では順位が大きく入れ替わるので、みんなドキドキしながらサイコロを追う。

すると見事、我チームは順位が上がりそうな結果になった。
「これはイケるかも!」チームの士気もあがる。ここからペースアップのサインが出され、ライダーはアクセルをワイドオープン。ゴールを目指してスピードを上げた。

抜きつ抜かれつのドッグファイトがあちこちで繰り広げられる。ビギナーのみならず、ベテラン勢も真剣そのものだ。

そして地味に順位に影響してくるのが3回のピットインごとに行なわれる「お題」と呼ばれるゲーム。ケン玉や立体パズル、ルービックキューブなどのゲームをクリアしないとピットアウトできないというトラップに各チームとも四苦八苦(1分経過したら自動的にピットアウト)。簡単なゲームであってもレーシングスーツ姿だと一気に難しくなってしまう。
またそれに伴って発生するピットアウト渋滞もロスにつながる。運を味方につけるのはなかなか難しい。

レーシンググローブを着用していると動きがぎこちなくなってしまい、立体パズルの難易度も上がる。
お題の後ろに並んでしまったら、ライバルチームであっても思わず「ガンバレ〜!」と応援してしまう。

しかし最後まで何が起こるのかわからないのが耐久レースだ。
終盤、転倒車がコースに残ったことからフルコースイエローが出され、青木拓磨さんのグロムを先頭に列を作ってのスロー走行が10数分ほど続いたのだ。

ここがひとつの分かれ目だった。というのも我がチームは少し前にガソリンの残量に危険を感じ、完走するためにペナルティ覚悟で給油していたからだ。スロー走行が入るなら給油せずに持ったのでは……。
悔やまれるところだが、これもレースだ。
その後、コース上がクリアになると最後の最後までプッシュし続けた。


結果は……グロムクラスで6位/17台中(ファステストラップはクラス4位)。給油分の減算がありながら入賞できたのは、転倒や走行時のペナルティが一切無かったから。
チーム全員で勝ち取った記録である。

6時間と長いレースだったので、1〜3位までは特別製の盾が贈られる。欲しかったなぁ〜。
シャンパンファイトはできなかったけれど、トロフィーと副賞のレプソルオイルをGET!
さらにクジ引きであたった地元の新鮮な野菜(ナスとトウモロコシ)を手に記念撮影(写真の一番左手前が筆者)。よく走りましたっ!

最後に主催の青木拓磨さんと記念撮影をしてレン耐は終了。
無事に完走し入賞できた達成感と充実感、それに明日は筋肉痛になるであろう軽い疲労感とともにサーキットを後にする。
いやー、今日一日笑顔が絶えなかった。
レン耐って本当に奥が深くて楽しい。次回は初めてレースに参加する人を誘おうと考えながら帰宅の途についた。

これだけ気軽でありながら、誰もが真剣になって楽しめるモータースポーツはほかにない。興味を持った人はぜひレン耐のWebサイトにアクセスして欲しい。
そこには今まで知らなかったバイクとの付き合い方や遊び方がある。
・Let’s レン耐 http://rentai.takuma-gp.com

キーワードで検索する

著者プロフィール

横田 和彦 近影

横田 和彦

学生時代が80年代のバイクブーム全盛期だったことから16歳で原付免許を取得。そこからバイク人生が始まり…