「長距離移動でもプチツーリング程度の疲労度!?」BMW・R1250RTは、快適至極の乗車空間でした。

BMWを語る時、象徴的なDNAとして見逃せないのが、Rシリーズに搭載されるボクサーエンジンである。中でもRのRTは、高速ツアラーとしての快適性能を追求する中で、数々の新機軸を育み常に時代の最先端を歩んできた。その歴史は既に40年を超え、まさに同ブランドの“Tour”カテゴリーを代表するモデルなのである。

REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●ビー・エム・ダブリュー 株式会社

ディテール解説

フロントカウルとスクリーンはミラーも含めてウインドプロテクションに熟成が重ねられたデザインが施されている。ヘッドライト下の中央には前方の障害物を把握するレーダーが組み込まれている。

一見は普通の倒立フォークだが、テレレバーと呼ばれるBMW独自のストラット式サスペンションが採用されている。車体側からリーディングアームが伸びフォークブラケットを支持し、衝撃吸収や減衰はモノショックユニットで担う仕組み。ダブルディスクブレーキは、φ320mmのフローティングローターに対向4ピストンの油圧キャリパーがラジアルマウントされている。

左右に大きく突き出るシリンダーレイアウトが特徴の水平対向(ボクサー)ツインエンジン。写真は右側の単気筒を写している。ギヤトレーンのDOHC4バルブで、吸気側には可変カムシャフト機構のShiftCamが採用され、点火や燃料噴射も含めて統合的に電子制御されている。

写真からもわかる通り、スイングアームは左側片支持のパラレバー式。おかげで大きなステンレススチール製マフラーもホイールギリギリまで内側にレイアウト。十分に深いバンク角が確保されている。

多彩な制御機能が集中しているが、慣れると扱いやすい左側スイッチ。下の赤いのがホーン、順に上がウインカー、メニュー、ACCスイッチ。右列はウインドシールドの調節、赤いのがハザード、上はクルーズコントロール、向こう側にはディマー&パッシング。左側のリング状スイッチはメニューボタンと合わせて様々な設定ができる。
赤いのはエンジンキルスイッチ兼始動用スターター、中がECO、RAIN、ROADを切換えるモードスイッチ。上は集中ロックシステム。

フルHDの解像度を誇る10.25インチサイズのフルカラーTFTディスプレイを装備。各種詳細データの表示はいかにも高級らしく充実している。スマホの連携も可能で、例えばApple CarPlayにも対応している。

しっかりと厚みのあるクッションを持つ段付きのセパレートシート。前は5段階、後は2段階の強弱コントロールできるシートヒーターが装備されている。後席はリアキャリやーと面一で積載性にも優れている。

シートは左脇のキー操作で脱着できる。電熱ヒーター付きなので完全に取り外すにはコネクターを外す必要がある。
左右にゴムブッシュを持つシート台座は裏返す事ができる。写真はロー、ハイにするとシートは20mm高く設定できる。

パニアはメカニカルキーで蓋の施錠と脱着のロックを制御。スマートキーと集中ロックにも対応。キー部分を押すと、三角レバーがリフトし、そのレバーを上げると蓋が開く。鍵をリリース側に回し、ハンドルを引き上げるとパニアは簡単に取り外せる。

サイドパニアはヘルメットも収納可能。スマートキーはもちろんメカニカルキーによるセキュリティ確保も扱いやすい。
熟成され尽くしたデザインと使い勝手。しっかりと3点支持され脱着も容易。
好みの機能コントロールにクイックアクセスできるお気に入りボタン。1はオーディオミュート、2はグリップヒーター、3はラジオとメディアの切替、4はナビゲーションを操作できる。
対応機種のスマホなら、ここに置くだけでワイヤレスで充電できる。USBソケットも装備され、メーターディスプレイとの連携でも使いやすい。庫内温度が35°C以上になると自動で換気扇が回る。
BMW R1250RT

横一列のクリアレンズでまとめられたリア・コンビネーションランプ。堅牢なリヤキャリアはグラブバー及びトップケース搭載に対応している。

主要諸元

エンジン型式:空水冷4ストローク水平対向2気筒
動弁系:DOHC4バルブ、可変カムシャフト
ボア x ストローク(mm):102.5×76
排気量(cc):1,254
最高出力(kW/rpm):100(136PS)/ 7,750
最大トルク(Nm/rpm):143/ 6,250
圧縮比:12.5 : 1
点火 / 噴射制御:電子制御エンジンマネージメントシステム(DME)
エミッション制御:三元触媒コンバータ、排ガス基準EURO5をクリア
最高速度(km/h):225
燃料消費率(km/L)WMTCモード値:20.8

燃料タンク容量(L):約25.0(リザーブ容量約4L)
燃料種類:無鉛プレミアムガソリン
エンジンオイル容量(L):約4.0
オルタネーター(W):508
バッテリー:12V / 16Ah

クラッチ:湿式多板(アンチホッピング機能付き、油圧式)
ミッション:常時噛み合い式6速リターン
駆動方式:ドライブシャフト式
1次減速比 :1.000(60/60)×1.650(33/20) インプットギヤ
2次減速比 :2.750(33/12)×2.818(31/11)
ギヤ比:
 1速:2.438(39/16)
 2速:1.714(36/21)
 3速:1.296(35/27)
 4速:1.059(36/34)
 5速:0.943(33/35)
 6速:0.848(28/33)
         1.061(35/33)アウトプットギヤ

フレーム:トラス構造スチールパイプ製、アルミニウム製リアフレーム
サスペンション(前 / 後):テレレバー(モノショック式ストラット) / パラレバー(片支持鋳造アルミスイングアーム式)
サスペンションストローク(前 / 後mm):120 / 136

全長(mm):2,235 
全幅(mm):990 
全高(mm):1,580 
軸距(mm):1,490
シート高(mm):805-825
車両重量(kg):290(装備・燃料満タン)
トレール(mm):116
ステアリングヘッド角度:25.9°
ホイール:アルミニウムキャスト
リム(前 / 後):3.50-17 / 5.50-17
タイヤ(前 / 後):120/70 ZR-17 / 180/55 ZR-17
ブレーキ(前 / 後):φ320mmダブルディスク / φ276mmシングルディスク

試乗後の一言!

ツアラーとしての快適性は最高!贅沢な乗り味に魅力満載。

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著者プロフィール

近田 茂 近影

近田 茂

1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の…