【11】走行距離13800kmのエンジンはボロボロ? 2ストスクーターにボアアップキットを組んでみた。|楽しいアプリオ11

今回のテーマはボアアップキットの組み込みです。JOGアプリオを68ccにボアアップしてエンジンパワーを高めるのが目的ですが、チャンバーやスポーツマフラーでとにかくパワー重視!……ではなく、純正タイプマフラー&エアクリボックス付きの静かな大人仕様に仕上げます。

取材協力
●KN-YOKOHAMA (045-593-9402)

バイクの寿命は何kmか。整備や日常の使い方次第としか言えない、答えの出しづらい問いではあるが、2ストスクーターでも定期的なメンテナンスを行うことで3万km、5万km以上も走れている、という声も聞く話ではある。

私のJOGアプリオ(2001年式)の現在の走行距離は約13,800km。私の手元に来てから約半年で1000kmほど走ったことになる。

今回のボアアップに伴い、エンジンその他がどのような状態なのかも見ていくことに。

アプリオの場合、エンジンが車体に乗った状態でもシリンダーを着脱することはできなくはないが、エンジンを下ろしておいた方が作業の確実性は高く、作業スピードもほぼ同等。なので今回はエンジンを下ろすこととした。

エンジン分解・ダイジェスト解説

リヤキャリア、シート下の無着色樹脂カウル、車体両サイドの無着色樹脂カウルの順で外していく。
持ち手のカバー(左右とも)を外す。
燃料キャップを開け、シート後端(ねずみ色)のカウルを外す。
バッテリーのカプラーとスターターリレーのカプラーを外したら、シート下とボックスを取り外す。

外装外しはこれで完了!

カウル類をここまで外したら、今度は各種配線を外していく。
エアクリーナーボックス、キックペダル、Gロック(ガードロック)ワイヤー、リヤブレーキワイヤーを取り外す。
キャブレターのチョークのカプラーとスロットルワイヤーを外したら、次にエンジンからキャブレター本体も取り外す。
空冷ファンの樹脂カバーを取り外す。オイルポンプ、ジェネレーター、セルモーターのカプラーも外す。
2ストオイルホースをエンジン側から抜き、オイルが漏れないように栓をする。燃料ホースも同様に抜き栓をする。
リヤショックを取り外す。
エンジンマウントのシャフトを緩め、抜き取る。
これでエンジンと車体が分割されるのだが、この際、支えを失った車体が倒れないように注意。二人で作業すると安心。

これでエンジンが降りた!

カウルと配線類一式を外して、エンジンが下りた状態に。細かな砂のような汚れが目立つ。
マフラー側。マフラー自体は半年前に新品を取り付けたばかりだが、耐熱ブラック塗装は雨に弱く、どうしてもサビが出てきてしまう。

シリンダーのサビよりも気になるへドロドロ!

シリンダーのカバーを外した状態。シリンダー周りのサビが目立つが、そもそもシリンダーは鉄製なので錆びるもの。それほど気にする必要はない。それよりもオイルポンプ周りの汚れがとにかくひどい。本来のシリンダー交換時には不要な作業だが、洗浄することに。
マフラー、空冷ファンの順で外す。
専用工具でアウターローターを取り外す。今回はホンダDioのクランクを割るための工具を用いた。
ステータコイル一式と、その下の紙ガスケットを外す。
今までノーメンテだったと思われる、オイルポンプ周りに固着した2ストオイル。オイルと埃と毛?が入り混じった状態。パーツクリーナーをかけ、ヘラで削ぎ落とす。15分ほどの洗浄でようやくきれいになってきた。
スパークプラグとスタットボルト部のナットを緩めて、シリンダーヘッドを外す。
クランクケースからシリンダーを引き抜く。
サークリップ、ピストンピンの順で外す。これでクランクシャフトからピストンが外れる。小端部のベアリングも消耗部品なので外して新品に交換する。

Pointその1!

シリンダーヘッドのナットを緩める際、スタットボルトも一緒に緩んでしまうことがある。念のためにダブルナットで締めこんでおくのがベター。

何が違う? 新・旧シリンダー

左がKN企画製シリンダー、右が純正シリンダー。KN企画製はアルミ製で560g。純正はスチール製で1489g。ボアアップするだけで900gの軽量化を果たせる。
今回の68cc化の主役、KN企画製ボアアップキット。空冷フィンに白いコーティングが施されたアルミ製シリンダーは、排気ポートの開口面積が広い3ポートで、ポートタイミングもノーマルより早い。シリンダー内壁には耐久性を高めるためにメッキ処理が施されている。
純正の排気ポートが1ポートなのに対し、KN企画製シリンダーは写真の通り3ポートを採用。エキマニ側の出口もKN企画製の方が大きく、排気効率に優れる。
左がKN企画製シリンダーヘッド(348g)、右が純正シリンダーヘッド(382g)。純正とKN企画製では燃焼室の形状もスキッシュエリアの形状も全く異なる。
KN企画製ピストン(左)はφ47mm、90g。純正ピストン(右)はφ40mm、59g。KN企画製ピストンはスカート部分にモリブデンコートが施されており、初期馴染みに優れる。
13800km走行したと思われる純正ピストン。ヘッド周りにカーボンが見られる他は、スカート周りに薄〜い縦筋がある程度で問題無し。ピストンリングの張力もまだ十分残っていた。

キャブレターも大口径化

キャブレターはJOGアプリオ純正(手前)からグランドアクシス100純正(奥)に交換。吸気口はいずれも楕円形状で、グランドアクシス100純正の方が開口面積が広い。
ボアアップで熱量が上がったエンジンに対して、スパークプラグの熱価もBPR7HS(左)からBPR8HS(右)に上げた。
1万km以上走行した小端ベアリング(右)は熱が入り茶色くなっていた。これも新品(左)に交換。

順番に組み込もう!

ピストンを組む。ピストンピンを挿入した後、Cクリップでピストンを固定する。
シリンダー内にエンジンオイルを塗布する。
ピストンリングを縮めながら、シリンダーを組む。
ヘッドガスケット、シリンダーヘッドを組み、ナットで固定する。
新品のスパークプラグを組む。
ローター周りの洗浄時に外したオイルポンプ、ステータコイル、アウターローター、空冷ファンも元どおりに組んでおく。
空冷ファンカバーとエンジン側の樹脂カバーを取り付ける。
エンジンハンガーにシャフトを通し、車体にエンジンを載せる。下ろす時と同様に、二人で作業すると楽。
車体にリヤショックを取り付ける。
オイルポンプやセルモーター、ジェネレータ、バッテリーそれぞれのカプラーを繋ぐ
キャブレターを取り付ける。スロットルワイヤーとオートチョークのカプラーも組み込む。
マフラーを取り付ける。
Gロック、リヤブレーキワイヤー、キックペダルを組む。

ここでエンジンを試動!

ひとまずエンジンを掛けてみる。エアクリーナーボックスをつけていない、いわゆる直キャブ状態でも問題なく掛かり、アイドリングも安定している。慣らし運転として、このまま30分ほど放置した。
エアクリーナーボックスもこれを機に交換。KN企画製(左)は純正(右)よりも吸入口が大きく設計されている。
エアクリーナーボックスを取り付ける。フィルターは目の荒いタイプ(KN 企画製)に交換済み。

外装一式を取り付ける

あとは、カウル類一式、シートボックスなどを元どおりに組んでいく。これで組み付け作業は完成。

Pointその2!

KN 企画製エアクリーナーボックスのインテークパイプが純正よりも太いため、Gロックのワイヤーの通り道が変わってしまった。駆動系の樹脂カバーと干渉するため少しカットして回避した。
次回は駆動系&キャブセッティング! そして待望の試乗です。

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著者プロフィール

山田 俊輔 近影

山田 俊輔

Motor-Fan BIKES 編集長1981年生まれ。身長180cm(モジャモジャを足すと185cm)。初めて…