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49ccから68ccに排気量を上げた。燃調、駆動系ともにセッティングを終えた。
20年落ちでボロボロだった中古スクーターのJOGアプリオだったが、出足がビュン! 最高速もグイィィーンに生まれ変わった。さてこの4.5万円で購入し(6.5万円分のカスタムパーツを組み込んだ)たJOGアプリオだが、具体的にはどれくらい速くなったのだろうか。可視化するためにシャシーダイナモに掛けてみた。
かつての馬力はたった3.0HP
中古で購入してから約1年。これまでに何度もシャシーダイナモにかけてきたJOGアプリオだが、その後輪出力の推移をおさらいしよう。
まずは購入ほやほやのオンボロ状態で3.0HP。そこからメンテナンス&新品マフラーに交換して3.5HP。CDI交換によるリミッターカット&駆動系セッティングで3.4HP。この「3.4HP」がボアアップ前の最終仕様だったわけである。
今回49ccから68ccに排気量を上げたことで、体感ではメチャ速になったわけだが、実際のエンジンパワーはどう変化したのか。シャシーダイナモ「ダイノスター」日本輸入販売元であるエムファクトリーを再び訪れ、後輪出力値を計測してもらった。
3.4HP→4.4HPに出力アップ!
前回同様に、駆動系を変速しないようにロックしてダイナモに掛ける。ボアアップ前と後でのエンジンそのもの違いを比べるためだ。
計測結果は3.4HPだった後輪出力が4.4HPとなり、29%ほど出力が増したという結果に。
グラフを見ると、ボアアップ前(赤線)の5500〜7200rpmあたりでなだらかな山のパワーカーブが、ボアアップ後(青線)は7500rpm付近を頂点とした尖った山に変化した。
これはアプリオに組み込んだKN企画製ボアアップキットの特性によるもので、排気ポートの形状が幅広で、高さも高くポートタイミングが早まっていることがグラフから読み取れる。
エンジン出力をもっと高めたい場合は、より高効率なマフラーに交換したり、シリンダーのポート形状を変更、シリンダーヘッドの燃焼室形状を変えて二次圧縮を高めるといった方法がある。エンジンの熱量が増えて耐久性が損なわれることもある。
こちらは駆動系を組み込んだ状態で計測したグラフ。破線の縦軸は後輪出力、実線の縦軸はエンジン回転数を表している。横軸は共に速度。
ボアアップ前(赤破線:最高出力3.3HP)と後(青破線:最高出力4.9HP)では、25km/hから上の速度域で約1.5HPのパワー差が常時表れている。
回転数の推移(実線)を見ると、ボアアップ前(赤実線)は50km/hで変速が終了し、そこからはエンジン回転の上昇で速度を伸ばしているのに対して、ボアアップ後(青実線)は、発進してすぐにパワーバンドの7000rpmに到達し、そこから最高速域に達するまでなだらかにエンジン回転を上げていることがわかる。
4スト109ccと比べてみた
20年以上前に設計されたスクーターと、今新車で販売されているスクーターでは、どのような違いがあるのだろうか。ホンダDio110を持ち込み、同日に計測してみた。2021年春のモデルチェンジでエンジンを一新したばかりで、空冷4スト単気筒の109cc。一方の68cc化したJOGアプリオは空冷2スト単気筒。
グラフ上では、Dio110(赤線)の最高出力が6.0HPに対して、JOGアプリオは4.9HP(青線)。パワーカーブは20km/hまではほぼ同一で、そこから上の領域ではDio110馬力が上回る。
ただし、車両重量96kgのDio110に対して、JOGアプリオは70kgと圧倒的に軽く、今回の後輪出力値から算出したパワーウエイトレシオでも、Dio110が16kg/HPに対し、JOGアプリオは14.2kg/HPと優っている。実際に走行すると20km/h +αの領域では、JOGアプリオの方が圧倒的な速さを感じた。
参考までに各車のカタログ値はDio110の最高出力は8.7PS/7500rpm。JOGアプリオ(50cc)6.3PS/7000rpmとなる。
ボアアップで燃費は上がる?
ボアアップ後の街乗りで感じたことは、スロットルを全開にする場面が少なくなったこと。ボアアップ前の50ccの頃は、青信号に変わればスロットルは全開、幹線道路でクルマの流れに付いて行くときも全開で、常にエンジンのポテンシャルを使い切っているような状態だった。一方のボアアップ後は、スロットルのチョイ開けでもそこそこ走ってくれるので、全開にするのは追い越し時や60km/h以上で走りたい時ぐらい。「これはもしかしたら燃費が上がるパターンも?」と期待したが、それぞれ300km程度走った結果(※満タン法で計測)では28.5km/Lだった燃費が19.42km/L。予想以上にダウンしていて残念。